ばらばらっ! Konara Angle 9/20 15:47
誤字脱字有りましたら指摘お願いします。
「どうやって、食べようかな〜。殺してから食べるか、それとも、食べながら殺すか……」
私の目の前で、赤く髪を染めた魔女が私をどう殺そうか、悩んでいるようでした。私としてはそんなことは止めてとでも喚き散らしたいのですが、首を絞められたように声がでず、ただ、ゆっくりと近づいてくる魔女から後ずさりして逃げよう足が勝手に動こうとしています。とんっ、とついに背中がドアに当たり、もう後ずさりして赤い髪の魔女から遠ざかるスペースはなくなりました。開いて逃げればいいのですが、そんな行動を出来る程、素早く動くことは出来ません。ドアノブに手を触れた瞬間にすぐ襲われるくらい近いのです。もう逃げ場はなくなりました。足下を見ると、転がった三つのいびつで毛が生えたボールに成り果てた、お父さんとお母さんと椎が転がって、口をぱっくり開けて、舌をだらんと出し、虚ろな目で、どこか遠くを見ていました。
私もこんなふうになっちゃうの?
嫌だ。
声にならない言葉が、頭の中で叫び、どんどんと強くなっていきました。
「ど、どうし、て」
「ん?」
やっとでた声、振り絞った声で、意味があるかも知れない、時間稼ぎをしました。どうして、このままでは殺されてしまうのだから、助かるかも知れないのなら、意味がありそうなことをやりました。赤い髪の魔女は、きょとんとして、立ち止まり、近づくのをやめました。
「わ、わたしの能力が」
私の相手の心臓の鼓動の音が分かるという能力は、魔女の場合、砂嵐のようなノイズの音が耳に聞こえるはずなのに、目の前にいる魔女からはそのようなノイズも何も聞こえません。無音でした。
赤い髪の魔女は早合点して、得意げに話し始めます。
「あ〜、それね。あたしの能力で、そういう、相手の居場所を分かる〜みたいな能力者の能力は、効かなくなるっていうか、発見されなくなるんだよね。ステルス能力みたいなのだと思ってくれたらいいよ。しかもこの能力は、あたしの近くにいる能力者や魔女も発見できなくなるんだよ〜。つまり、あたしは誰にも見つけられないので〜す。分かった? 質問は以上ですか?」
逆に訊かれて、私はたじろぎましたが、さらに訊いていきます。
「え、じゃ、あ、どうして、わ、わたしを襲うんですか?」
「それは、あんたが魔女を捜せる能力を持っているからだよ。あたし、食べた相手の能力をコピーするって能力もあるんだ。だから、強い能力や使える能力を持った人を片っ端から食べて、能力を自分の物にするんだ〜。強くならきゃ、生きていけないからねぇ〜。最近の捕獲員は強くなるって聞いたし」
「そっ、それだけのためだけに?」
「そう、それだけのためだけに♪」
赤い髪の魔女はケラケラと笑いました。
「さぁ、久しぶりに女の子を頂いちゃいますか」
赤い髪の魔女はうきうきした様子で、自分の唇を舌で一舐めして、止めていた足を動かして、私に再び近づいてきました。
ようするに、時間稼ぎも無意味な物に変わり、私の短い人生が終わってしまうまで、あと何分かを切ったようです。
「やっぱり、踊り喰いだよね〜。噛みつけば血が肉汁のように溢れてくるし、女の子だから柔らかいし〜」
涎を垂らしながらの両肩を掴みました。
「うんうん。抵抗しないなんて良い子だね〜」
抵抗しないじゃありません。しても意味ないのです。
さっさと殺して。
そう、呟いてしまいました。
「そうだよねっ! 痛いのはヤだよねっ! じゃあ――」
頂きます。
最後にみたのは、口を喉の奥、私の欠片が通っていく奥まで開いた、魔女の顔でした。その大きな口と歯で、私の首の肉を引きちぎろうとしている姿でした。私は手をぎゅっと握り、痛みをこらえる準備をしていいました。死ぬまできっと、時間がかかると思ったからでしょうか、わかりません。怖くて、無意識にやっていたのでしょう。爪が手のひらに食い込む痛さが、まだ、生きていることを知らせてくれているようでした。
まだ、生きなくてはいけないと体はいっているようでした。
そして、その魔女の歯が右側の首の皮膚に触れました。
「ねえ、なな?」
どこからか、目の前にいる魔女と同性で同じくらいの年の若い声が聞こえました。
ぞっと、するくらい、冷たく、憎悪を含んだ、恐ろしい声でした。
それを聞いた赤い髪の魔女はすぐにその声の主の方へと振り返ります。
「……ぽぽっ!?」
それまでお父さん、お母さん、椎の体で出来た小さな山しかなかった、場所に一人、赤い髪と魔女と同じくらいの年の女の人が立っています。髪は金色で、赤い髪の魔女と同じ格好で、顔はここからではよく見えませんでした。
でも、確か、さっきまでは、そこには誰もいなかったのに――
その金髪のぽぽと呼ばれた女の人は、ななと呼ばれた赤い髪の魔女に対して、訊きました。
「なな、何をしているの?」
「ぽぽっ!? なんでいるの!? いつから居たの!?」
「最初から全部、見てたよ」
ななと呼ばれた魔女の顔から、さっきまでの喜びに満ち溢れていた表情は消えてなくなり、慌てふためいて、取り繕っているような、とにかく嘘ついて、ばれてしまって、言い訳をしようとしている人がする、焦っている表情になっていました。
「えっと、これは、そう! 脅してやったんだよ! 脅して、一口だけかじって―――」
「じゃあ、この人の性別は何?」
そのぽぽと呼ばれた女の子の右手には、さっきまで、玄関にお父さんと椎の首といっしょに転がっていたお母さんの首がありました。下を見るといつのまか首はお父さんと椎の、二つになっていました。いったい、どうやっていつのまに移動したのでしょうか?
「――っ!」
どんどんななと呼ばれている赤い髪の魔女が、何故か追いつめられていきます。どうしてなのか、理由は全くわかりません。
「でも、でも、でも……」
「ねえ、なな?」
ぽぽと呼ばれた金髪の女の子は確認するようにいいました。
「女の子、女の人を食べたら、絶交だって、わたし、言ったよね?」
ななは俯いたまま、何も答えませんでした。
ぽぽは言いました。
「絶交。ななは、もう、あんたなんか、友達でも何でもない」
そう、はっきりと言い放ちました。