ばらばらっ! Hunters Angle 9/20 16:03
誤字脱等ありましたら指摘お願いします。
『あさがおが魔女に殺された』
鬼灯の頭の中では、こならの友人――魔女から逃げる途中で、伊達から聞かされた言葉が、現実が耳の奥底で反響し、何度も何度も、重なるように絶えることなく、ずっと鳴り響いている。
『どうして殺されたんですかっ!?』
鬼灯が吼えた。伊達がその時の状況を話し始める。
『おまえ等と分かれた後、近くの交番に魔女がいるからって警告を流してくれと頼みに行く途中で、暴力の魔女に出くわしてだな』
暴力の魔女と聞いた瞬間、鬼灯は逃げていった片腕の魔女を思い返した。
『そいつに殺れたんですかっ!?』
『いいや、その魔女から逃げる間に、べつの魔女たちに殺されたんだよ』
『別の……』
『そう。別の二人組の魔女。トチ狂った魔女だった。何人も人を殺して、人殺しになれた感じではない。あれは、人なんて、生きていようが死んでいようが、どうでもいいって感じだ。よくいう、人を虫けらのように扱う感じ。無邪気に殺すんじゃない。邪魔だからとか、居ない方が有益になるから、殺す、損得であっさりと決めている――そんな気迫だった』
『……あさがおは今どこに?』
『あさがおは、回収班に頼んで、運んでもらったよ。騒ぎになると面倒なことになるからな』
捕獲員が殺された、ということを民間人に悟られてはいけない。何故なら、捕獲員が殺される程、強い魔女が現れたという、と思われてしまうからだった。魔女捕獲の生業とする捕獲員が魔女に殺された、つまりその魔女は、捕獲員より強いという誤解を招く恐れがあるのだ。それは、民間人にとって、警察や捕獲員すら捕まえる事ができない、殺人鬼がうろついているということになり、触らぬ神に祟りなし、というわけにも行かず、襲われず、自分の身を守るため、この周辺から、遠方、県外まで、我先に逃げ出す人々が多くなる。三年前の正偽の魔女、血煙の魔女が生まれた時、その生まれた場所が都心に近く、捕獲しようとした警察が木っ端微塵に吹き飛ばされ、一般市民を守る自衛隊の基地が潰され、混乱しているとニュースで流れた際、多くの人々が二人の魔女から逃げるように離れていき、人が消え、都市機能が数日ストップ、大打撃を受けたことがあった。皆、自家用車で逃げようとする人が多く、交通機関は麻痺し、その時に無人の店やコンビニを狙って、空き巣、物取りの犯行が多発するなのど、混乱も多くあった。魔女から逃げるための混乱を防ぐために、そのような不穏な情報は、魔女を捕獲するまで流さないという決まりになっている。
「あさがおが殺された……」
鬼灯は一人、そう呟き、伊達がいっていた警察署へ向かいながら、何故、あさがおだけが殺されたのかを考えていた。
『どうして、伊達さんは襲われなかったんですか?』
鬼灯は一応、伊達に訊いた。こんなことを訊くのは気が引けるが、そのくらいの程度で、気を使っている場合ではない。
『その魔女、二人組の内の一人の赤髪方がな、相手の能力が分かる能力を持っていた。そして、これは憶測なんだが、食った相手の能力を自分の能力にする、能力、いわば、コピー能力だな。それを持っていたるだと思う。探索系の能力を持ったあさがおが襲われた』
『コピー能力ですか……。それは厄介ですね。でも、伊達さんだって能力者ですよね? 襲われなかった理由にはならないじゃ……』
『そんな嫌な能力はいらないから食べないって、その赤髪が言ったんだ。俺も、それには流石に納得したよ』
『…………』
伊達の能力は、触れた相手の記憶を見るというもの――自動的な能力なのだ。その能力をコピーしたとしても、誰かと触れた時点で、自動で使ってしまうし、なんせ、攻撃的でも、魔女を捜せるといった能力でも何でもない。
魔女にとっては、邪魔な能力でしかないのだ。
『それに、その二人組は、別の魔女を捜せる能力を持ったやつを探しにいくといって、どっかに行ってしまった』
鬼灯、光、伊達、そして、殺されたあさがお以外に、この周辺には、捕獲員は来ていない。その別の魔女を捜せる能力を持った能力者は、
一般人となる。
あさがおを喰い殺した二人組が、次に狙うのは、捕獲員でも何でもない、ただの探索系の能力者だ。
「そんなやつ、知る分けないだろ……」
その魔女みたいに能力を感知できる能力を、鬼灯は持っていない。虱潰しに探すしか方法がないのである。だが、それでは膨大な時間がかかり、確実に先を越されてしまう。いや、最悪、もう越されているかもしれない。
鬼灯は急いで 警察署に向かうことにした。警察署で、そのような能力を持った人が居ないか呼びかけてもらい、一刻も早く保護するためだった。それしか、鬼灯にはできることはなかった。
(それにしても、なんだか、こう……)
鬼灯の胸には、何か突っかかるような物があった。飲み込んでもいけない。吐き出して、確認しなければ、大変なことになる、何かが――
(そういえば、あの、こならっていう、女の子――)
色々あって、流してしまっていた事を思い返した。
さっき、そのこならが、魔女が近づいてくるの知っていた、というよるは、感じていたのを。
「なんで、魔女が近づいてくる、って分かったんだ?」
鬼灯は警察署に向かう体を、くるっと反転させ、差していた傘を捨て、こならの家へと全速力で向かった。間に合え、と思いながら。
もちろん、間に合わなかったのは、言うまでもない。