ふんさいっ! Konara Angle 9/20 15:37
誤字脱字等有りましたら指摘お願いします。
「それよりも――」
気がつくと私の体は揺れていました。体に力が入らないので動くことができません。朝、起きなくてはいけないのに起きれない、頭が回らない、そんな感じでした。
私はどこにいるのでしょうか? 誰が喋っているのでしょうか?
ぼやけ、寝ぼけたような、そんな、思考がはっきりとしていない頭を回転させ、今どこで何をしていたのか考えます。
「おい、鬼灯。その子、起きたようだぞ」
目を開けると、ぼやけた景色、建っている家が後ろへと流れていきます。どうやら鬼灯さんにおぶってもらっているみたいです。
ああ、私は、魔女になった、豹変した鞠藻に殺されかけたんだ。そうだ。そうなんだ。
「鞠藻……」
どうして、あんなことになったのか考えても、考えても、検討もつきません。私は間違ったことをしたのでしょうか。やっぱり、現実はセオリー通りにはならないのでしょうか。きれい事では駄目なのでしょうか。
じゃあ、どうしたらよかったのか、それは、わかりませんでした。
鬼灯さんは立ち止まります。横には男の人が立っていました。さっき鬼灯さんと会話していた時に出た、伊達さんと呼ばれる、鬼灯さんの捕獲員としての先輩に当たる人ではないかと思われます。。
「立てるか?」と鬼灯さんが訊きました。
「……はい、多分」と思ったよりも、か細い声で応えました。
「やっぱり、まだ気分が悪そうだから、その子の家まで送ってやれ。あー、病院の方が先か」
そう伊達さんが提案しましたが、私は、大丈夫です、そこまでしなくてもいいですからと、謙遜して、鬼灯さんの背中から降りました。地面に立った瞬間、目眩のようにクラっと視界が揺れ、足がおぼつき、倒れそうになり、鬼灯さんに支えてもらいました。
「家に帰ってから、大事をとって病院いって診てもらえな。何かあってからじゃ遅いから」と伊達さんと言いました。
一応、私の家まで、また何かあるといけないので、鬼灯さんがついて行くよう、伊達さんは鬼灯さんに私の付き添いを命じました。
「あと、俺は警察署の方に向かうから、そこで合流だ。そう光にも伝えてあるから」
そういい、伊達さんはすたすたと行ってしまいました。その後ろ姿は、どことなく、悲しそうでした。
「じゃあ、行くか」
「はい」
私は、鬼灯さんに家の場所を教えて、二人、歩いて向かいました。
その間、私は、鞠藻がああなってしまったことを考えて続けましたが、納得のいく答えは出ませんでした。
†
「ここまでで、いいですよ」
私の家の前までついて、私は鬼灯さんに向かってそういいます。
「親御さんに、今日あったことを話しておいた方が――」
「いいですよ。変な心配されそうですし。それに今、家に誰もいないみたいですし」
家の中からは一人も鼓動の音が聞こえません。車はありますが、椎やお母さん、お父さんは歩いてどこかにいってしまったようです。
きっと、この事件の野次馬として、鞠藻の家に向かったのでしょう。
「そう、ならいいが……。絶対に病院で診察してもらえよ。それから何かあったら、今から言う番号に電話しろな」と電話番号いい、あとで警察かがくるかもしれないが、その時も慌てずに、捕獲員の伊達と俺にあったって言えな、と言って、それ以上は追求もせず、鬼灯さんは、伊達さんが待っているといった、警察署の方へと向かっていきました。
鬼灯さんの姿が見えなくなるまで、私はそこで立ち尽くしました。
まだ、警察と救急車が入り交じったサイレンが鳴り響いています。どことなく、騒がしい、不謹慎に言えばお祭りのような感じでした。
私はどうすればよかったのでしょうか。その自問自答の繰り返しの中をさまよい、幾つもの傷つく答えをかき分け、誰も傷つかない、幸せな答えを探して、見つけられず、自分が傷つきながら、それでも探し続けているのです。
本当はそんな答えなんて見つからないって分かっているのに。
見つかったとしても、もう自分自身が傷ついているから、その答えも無駄になってしまうことを知ってるくせに。
終わらない迷路の中を探し続けているのです。
クシュッ、とくしゃみをしました。傘も差さずに歩いていたせいか、体が冷えたみたいです。ここで立って考えても、風邪を引くだけだ、家に入って、シャワーでも浴びて、ベッドの中に盛り込んで、うんうん考えてようと、メッキが剥がれ錆びた、お粗末な小さな門をあけて通り、家の扉を開けました。
「ただいま」
誰もいないのに、そう、反射的に言ってしまいました。
「おかえりなさい」
「……へ?」
家の中から“誰か”が返していました。
誰か、人の生きている音が聞こえないのに、誰かが返してきました。
前方に、誰――。
「うん。あんたが魔女を捜せる能力者か〜。相手の心臓の音を聞ける能力だなんて、なんてロマンチックなんだろうね」
何かむせかえるような生臭い臭い、これを私は知っていました。
今日、知りました。
最愛の友人の家で。
「あ、待っているのが、あまりにも暇だったからさぁ〜」
その誰は、黒と肌色でできた物をボールを投げるように三つ私の足下に投げました。
ごろごろと私の足下で止まって、合計、六つの目と視線が合いました。それはずっと昔から、生まれたとき、もう物心が付く前、もう忘れたころからから、知っていた――
「あ、あ、あ、あ?」
その誰かの後ろには肉片が、これも今日見た、知っている、その元の姿がなんなのか、どんな状態になっているかを知っていました。
私は、逃げようとしました。現実から、絡み着いてくる全てから、逃げようとしました。慈しみとか、激怒とか、そんな感情は一切ありませんでした。理不尽な暴力に対する、嘆きもありませんでした。
あるのは圧倒的な、恐怖だけ。
その恐怖という蛇は私の体に巻き付き動けないように締め上げ、ぱっくりと口を開けて、今に飲み込もうとしています。
足がガクガクふるえ、怖くて、視界が涙で、ぼやけて滲み始めました。
「ぶっ殺しちゃった♪ えへっ」
赤い髪をした高校生くらいの女の人は、両手と服を真っ赤に染めながら笑顔で可愛らしく言いました。
私の家族は目の前にいる、魔女と呼ばれる、人に、皆殺しにされ――
「次はあんたね♪」
次に、私も殺される、ようでした。
私の世界は壊されました。
世界は悪い方向に、音も立てず、壊れる瞬間を見せてはくれず、一瞬で壊れ果てた残骸だけを残して、ただ、ゴミの山のように積み上げられているのでした。