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まじょがりっ!  作者: ハクアキ
第二章 Mywonderworld Breaker
80/121

ふんさいっ! Violencewitch Angle 9/20 14:27

誤字脱字等ありましたら指摘お願いします。

 葉々子は、さっきのガキが落としたビニール袋を持って逃げていた。このビニール袋の中からでる匂いから鳥の生肉が入っていると思われる。だからわざわざ拾った。腹が減って理性を失ったとしても、少しくらいのことなら融通は効くのだ。わざわざ捕獲員の近くで、人を襲って食うよりは、すぐに、しかも、安全に食える方を選んで、とんずらした方が良いに決まっている。

 葉々子は、雨風しのぐことが出来る場所を探し、丁度良い空き屋を見つけ、戸を蹴り倒して中に入り、さっき拾ったビニール袋から肉を取り出し、貪った。これだけでは満腹とまではいかないが、理性は飛ぶ程のことはなくなった。

「ちくしょう」

 着ている服をめくり、ハンマーで殴られた右わき腹を確認する。皮膚はぼこっと腫れ、内出血を起し、紫色に染まっていた。まだ熱をもってるように熱く痛い。やられてからそんなに時間はたってないが、いつもならこれくらいなら、すぐに治るはずなのに、治癒が遅く、まだ治っていない。血煙の魔女にやられ、はぜた右腕の治癒の方も、時間とその部分――はぜた右腕分の材料、肉を食わなければならない。まだ治りきっていない欠損部分のせいで、他の怪我の回復も遅れているらしい。

「早くしないと、あたしがやられちまう」

 葉々子はボロボロになった体を叩いて、餌となる人間を探しに行こうとする。この際、襲えと命令された奴らを食うのではなく、そこら中、腐るほどいる人間を食ってしまおう。片手一本では、捕獲員一人すら、殺すことが出来ないしな、と言い訳がましく、自分に言い聞かせ実行しようと立ち上がろうとした。

 ガタッ。

 座っていた葉々子が立ち上がろうとした時に、この無人の家に誰かが入ってきた物音がした。その音に葉々子はじっと身を潜めて、その進入者が何者かを確認することにした。

 こんなところに、のこのこ入って来る、ただの人間なんて早々いない。つまり、入って来るのは捕獲員か、もしくは魔女だ。

 家の中を歩く足音が葉々子に近づいてくる。家の中の構造は凝ったものではない。しかも葉々子が居るのは家に入ってからすぐの居間だ。ただ、外から奥が見えないように、襖を閉めてるだけ。だから簡単に見つかった。

 襖が開いた。

 その進入者は茶色のロングコートを着て、右目には眼帯、恐ろしく顔の形が整った男だった。その眼帯の男は座り込んでいる魔女を冷たく見下ろしている。

 眼帯の男を見た葉々子は震えながら苦笑した。笑うしかなかった。

「おい、何の冗談だよ? なんで、あんたが、首切り飛蝗(バッタ)がいるんだよ?」

 首切り飛蝗と呼ばれた眼帯の男は表情も変えずに言った。

「その名前で呼ぶな。黒宮か椿と呼べ」これも全部、あの光のせいだ、と呟く。

「はっ、どうせ、あんたに会ったんだから、もう呼ぶことなんて出来ないさ」とあきらめ半分で葉々子は言った。

「その可能性はあるかもな」と椿はいい、一拍置いて「暴力の魔女。単刀直入にお前に訊きたいことがある」と訊いた。

「なんだ?」

「お前は、誰の命令でここにいるんだ?」

 そう訊かれ葉々子はおかしくて大声で笑った。

「ははははは、首切り飛蝗がそんなことを訊くのか。そんなこと訊かなくても、あんたらに楯突く相手くらい、簡単に検討は付くだろ?」

 その言い回しから、椿はあいつが絡んでいるということを確認した。これで葛から任された椿の仕事の一つが終わった。

「そうか。ならもういい」と椿は葉々子と距離を詰めようと、近づいてきた。

「おとなしく、捕獲員に捕まれ」

「そんなの願い下げだよっ!」

 葉々子はそういいながら、椿の両足を右足で蹴り飛ばそうと動かした。葉々子は椿を倒そうだなんてことを考えている訳ではない。ただこの場から一刻も早く逃げ出すために椿を転ばして、隙を作り、脱兎の勢いで逃げだそうと思っているのだ。

 葉々子の魔女としての能力は、筋力強化。体制の悪い蹴りだろうが力負けすることは早々にない。しかも相手は棒のように細い足だ。当たれば、確実に片足はへし折れる。

 葉々子の勢いの付いた右足の蹴りが椿の左足に当たった。


「甘いな」


 椿に触れた部位――葉々子の右足首がレーザーに当たって切断されたように、触れた場所からスパッと滑らかに切られた。

「へ?」

 切断され右足は勢いが付いていたため、少量の血をまき散らしながら靴飛ばしのように家の中を飛び、壁にぶつかって落ちた。

「え、え、え?」

 葉々子は自分が何をされたのかわからなかった。右足を切断され、もう立って逃げることが出来なくなったこともわからなかった。

「面倒だ。殺そう」

 何の変哲もなく立っている椿は、混乱している葉々子に近づき、右手で頭を掴んだ。

 

 そして、持ち上げた。


 葉々子の首から下は、細切れのミンチを通り越してペースト状になり、血なのか肉なのか骨なの区別が付かない程、ドロドロになった。それはミキサーで果物や野菜をゴナゴナにして作るミックスジュースのようだった。ねっとりとしたそのドロドロは、重力に負け、椿の足下にべちゃ〜と広がって、床を染めていく。それと同時に生臭い血と肉の臭いも部屋中に広がっていく。

 

 魔女の死は、体の大部分の機能が失われ、自力で回復もできなくなった時。


 つまり、


「まあ、あの世で頑張れ」


 暴力の魔女、葉々子は死んだ。


 椿の足下に広がったドロドロの上に、ビチャビチャと落ちていった。

 

 †


「うえっ!? 椿、何やってんのさ!?」

 あとから来た葛が椿のやったことに対して言った。

「ん? どうせ捕まっても、こいつは死刑だろ? だからやった」としれっと悪びれもせずに椿は言う。

「すごく簡単に言うね……。後始末が大変なんだからさぁ、そういうことはやらないでよね……」また鈴に頼まないといけなくなるしとぼやく。

「ああ。了解。ところで、お前の方の件は片づいたのか?」

「うん。なんとか無事に母さんに会えたよ」

「お前の姉について、なんか言っていたか?」

「いや、母さんも会ってないってさ。……それよりも、こんな得体の知れない物になっちゃってる魔女の前で、立ち話しないでさ、外でしない? 生臭いし」

「分かった」とペースト状の上を、滑らないよう慎重に歩きながら「これからどうするんだ?」と訊いた。

 葛はその躊躇いもしない椿の行動に、若干引き、足跡残るからちゃんと足拭いてよ、と突っ込みながら「椿が追ってもらっている二人を捕まえにいくよ。彼女たちが向かう場所も分かったし」と応える。

「そうか。どうして急にわかったんだ?」

「捕獲員の一人が殺されたんだよ。それで大体の行動は読めてきた」

「なら急ごう。その方が最小限の被害が少なくて済む」

「あ。そうそう」

 思い出したように葛が言った。

「何だ?」

「その二人のうち、一人は絶対に(・・・・・・)殺さないといけない(・・・・・・・・・)から、よろしく」

 その命令を聞いた椿は言った。

「了解」

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