ふんさいっ! Friends Angle 9/20 13:47
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「ねぇ? ぽぽ」
「なぁに、なな?」
「今、幸せ?」
「急にどうしたの? なな大丈夫? 熱でもあるの?」
誤魔化すように蒲公英が七竈の雨で濡れた前髪を避け、額に手を置いて熱があるか確かめた。もちろん、熱も体温もない。七竈がそんなことしたって意味ないってと体を後ろに下がって手を離れさせて、恥ずかしがった。その反応に蒲公英が笑う。
「もう、誤魔化さないでちゃんと答えてよね」
そういわれた蒲公英はどこか暗い表情になって応える。
「……うん、幸せ」
七竈は訝しがる。
「本当に?」
一拍置いて蒲公英は言った。
「……本当に幸せか、自分でもよく分からないの」
七竈は「あたしはね。幸せだよ。ぽぽが居てくれるから」と落ち込んでいる蒲公英を励ますように言った。
そうあっけからんことを言ってのけた七竈に対して蒲公英は微笑む。
「……うん、そうだよね。わたしもななが居てくれるから、幸せ」
そういわれた七竈は嬉しそうに笑った。
「えへへへ。ねぇ、どうして、幸せかどうか分からなくなったの?」
「だって、わたしよりも幸せの人なんて、たくさんいるし。それにたくさんわたしよりも幸せじゃない人もいるし。そう考えるとわたしの幸せが霞んでちっぽけで、こんなの幸せなのかなって思っちゃったりするんだよね」
「だめだよ。幸せはね、量で考えちゃいけないだよ。スイッチがオンかオフかみたいに、あるかないかで考えるものなの。だから、ぽぽは、あたしと居て幸せって感じているなら、幸せでいいんだよ」
「そうだね。うん、これからはそうする」
捕獲員と一悶着あった後、蒲公英と七竈は、雨に打たれながら、ぶらぶらともう一人の探索系の能力者の元へと向かっていた。その能力者は昨日生まれたばかりの魔女に接近したり、離れてじっとしていたと思ったら、また魔女が居た場所へと向かったり、そこで捕獲員と思われる能力者に見つかったのか、今捕獲員と一緒にいる。そんなおかしな行動をしていた。なぜか生まれたばかりの魔女は、さっきまで能力者がじっとしていたところに行って、何も居なかったからか、来た道を戻ってる。
捕獲員と一緒にいる、探索系の能力者を、蒲公英と二人係で能力を使わずに襲うとなると、とっても面倒だし、かといって、蒲公英の能力を使えばすぐに蹴りが付いてしまって面白くもない、でも、下手したら最悪、捕獲されてしまう、と七竈は悩む。
「う〜ん」
「どうしたの? 魔女が逃げた?」
「いや、どうやって、魔女を見つける能力を持った人を襲おうかなって。どうしてだか捕獲員が近くにいるし」
「わたしが能力使う? 二人とも一発でやれるよ?」
「それはいいや。簡単に終わって、つまんないから。あ、そうだ、あたしが能力者を襲っている間に、ぽぽは、明日以降のご飯、盗ってきてよ」
「ん? さっき通り過ぎた、あの肉屋さんから盗ってくるの?」
七竈が探索系の能力者を能力で探していたら、じっとしていた場所(多分そこがその能力者の自宅)からに急に動き出し、ある場所で止まったのを感知し、そこに急いで二人は向かっていった。だが、向かっている途中で、その能力者は、また魔女が居た場所に向かっていってしまった。入れ違いになってしまったらしい。その能力者が止まった場所は、肉屋だった。二人はこの能力者が魔女を匿っているんだなと思った。
「うん。能力者と魔女を食べ終わったら、すぐに違うところに行って、ここから離れなきゃいけないからね。捕獲員の一人食べちゃったから、あのなんちゃら機関からたくさん捕獲員が集まってくると思うし」
「それはそうだけど、別におなかが減ったら、その時その時で、近くにいる男を殺して食べればいいじゃん」と狂ったことをいつも通り言う。
そう言われ、七竈はため息を付いた。
「それだと足が付いちゃうでしょ? あたしの能力があっても、すぐに捕獲員に追いつかれて、見つかっちゃうよ。だから、男を食べないように持ち運べる肉を非常食として持っていきたいの」
「ふ〜ん。わかった。そうなると、二手に分かれるの? 一人で捕獲員と戦うのは大変じゃない?」
「いや、その能力者の家で待ち伏せする。それに、捕獲員も集まってきちゃうから、さっさと終わらせたいし、時間短縮のためにね。じゃあ、今言ったのところで、あたしは待っているから、肉を盗ってきたら、そこに来てね」
「ななは待ち伏せするの? その魔女を見つけられる能力を持っている能力者が来るまで?」
「うん。面倒な捕獲員もいるけど、わざわざ家の中まで、付いてくる理由もないだろうし」
「そうだね。それがいいと思うよ。待ち伏せの方が楽ちんだもんね」
「そして合流してから、魔女をやろうね。流石に魔女は、あたし一人じゃあ、無理っぽいから」
「わかった。じゃあわたしは非常食を盗ってくるよ。道を忘れそうだから、先に行くね」
蒲公英はくるっと身を翻し、来た道を戻って肉屋に肉を強奪に走っていった。七竈は走ると滑って転ぶよーと叫び、大丈夫ーと返ってきた。
七竈の目には肉屋に向かう蒲公英の背中が、曲がり角を右に曲がため、見えなくなった。
「嘘付いて、ごめんね。ぽぽ」
そして、一人、七竈が探索系の能力者を待ち伏せするべく向かう。
「こうしないと、ダメなんだよ」
噛みしめるように、刻み込むようにつぶやく。
「ダメなんだよ……。あたしたちが、幸せになるために」
雨はまだ、止む気配はしない。
その雨が傘を差していない二人を躊躇いなく、当然のように、濡らしていく。




