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まじょがりっ!  作者: ハクアキ
第二章 Mywonderworld Breaker
77/121

ふんさいっ! Striga Angle 9/20 13:00

誤字脱字等ありましたら指摘お願いします。

 魔女草ストライガの二人は、葛の後を着いて行き、その途中で椿が車を止めて待ってくれていたので、有り難くそれに乗って、今日泊まるであろう宿まで問題なく移動した。宿で二人は、暖かく柔らかいベッドとシャワーにありつけ、さらに椿から差し入れのご飯|(生肉。しかも牛)まで頂いたのだった。

 そして、夜が明け、翌朝――ではなく、太陽が上りきった昼。

 葛と椿は用事があると、二人(鈴は爆睡していたので紫苑)に地図を渡して、先に宿をから出ていった。その二時間後に鈴が起き、二人は支度をして魔女を捜しに宿を出た。

「ふぁ〜」

 宿の前で、鈴が起きる前に、紫苑が雨が降っているから傘が必要になると思い気を利かせて近くのコンビニで買った透明な傘を差して、鈴がまだ寝足りないのか一回あくびをし、閉じそうになる目を擦っていた。

「あんなに寝たのに、まだ寝たりないんですか?」

 隣で首と肩の間で傘の柄を挟みながら、葛から貰った地図を広げて見てる紫苑は言った。鈴はうんと返した。

 この地図には朝、葛が感知した魔女の居場所が記されてある。匿われている場合はその場から動かない事が多いから、それは別として、魔女もずっとじっと同じ場所に身を潜めてはいないし、何かを求め常に徘徊する者の場合も、可能性としては否めない。そういうことから目印は大体の目安として使うことになる。

「暴力の魔女か、それとも、生まれたばかりの魔女、どっちを先に勧誘しますか?」

「生まれたばかりの魔女にしよう。暴力の魔女はほっといてもあっちから来てくれそうだし」

「確かにそうですね。そうしますか」

 紫苑は生まれたばかりの魔女がいると書かれている場所から、この宿の道のりを暗記して、雨に濡れないように、地図を畳み仕舞う。

「では、行きましょうか」

「うん。そこまで大体何キロくらい?」

「七キロから八キロくらいでしょうか? まあ歩いていれば、いずれ着きますって」

「……なんで椿さんは、わたしたちを置いて行っちゃうのかなぁ」

 鈴は車だったらすぐに着くのに、と七、八キロの道のりを歩かないといけないのかとため息をした。隣の紫苑がそう言った鈴を睨む。

「誰かが駄々こねたせいですけどね。それに、あの人はあのマセガキと一緒にどっか行ってしまったんですから」いったい、何悪巧みしているのでしょうかね、と嫌みったらしく言う。

「どうせ同じ方向なんだから、途中まで乗せてくれたっていいじゃないっ」と置いて行った葛と椿に対して頬を膨らませながら怒っていた。

「鈴さんがさっさと起きてくれれば、よかったんですけどね」

 鈴に対して、めいいっぱいの皮肉を込め、唸るように言った。

 今朝、実は椿がどうせ同じ方向なんだから乗せていこうかと提案してくれていたのだが、鈴が、まだ寝たいと駄々こね、深い二度寝に落ち、紫苑は置いて行くこともできずに、鈴が二度寝から起きるまで待っていたのだ。

 それを聞いた鈴は言ってはいけない事を言う。

「え。わたしのせい?」

「………」

 こうして、背中から何か、怒りのオーラが赤い煙のように見える、文字通りの血煙の魔女と、その魔女の逆鱗を触れるどころか、知らずに引っこ抜いてしまった命知らずの正偽の魔女の二人は、地図に書いてあった生まれたばかりの魔女が潜伏している場所まで、徒歩で向かうのではなく、傘を差しながら、鬼ごっこをするように、走って向かうことになった。お互い、魔女なので息は切れることはないので、全力疾走で、向かっていく。


 †


「ねぇ!? 紫苑ちゃんっ!?」

 全力疾走で逃げている鈴は、後ろの向いて、豹変した紫苑に許しを乞おうと思った。

「なんですか? 鈴さん?」

 全力疾走で追いかけている紫苑は、表情を一切変えずに能面のような顔で振り返った鈴を睨み、鷹揚のない口調で返答した。鈴は紫苑ちゃんがめっちゃくっちゃ怒っているっ! と内心泣きそうになっていた。

「ちゃんと謝るから許してよっ!?」

「嫌です」

「即否定っ!? どうして許してくれないのっ!?」

「もう我慢の限界です。いい加減、一回その腕を飛ばしてやらないと、わからないみたいですね?」

「なんか怖いこと言ってるーっ!?」

「魔女なんですから、大丈夫ですって。すぐに治りますって」

「治ればいいって、問題じゃないよっ!?」

「ああ、そうか。頭飛ばせば人格が変わるかも……」

「ぎゃあーっ!」

 鈴は命の危機を感じ悲鳴をあげた。


 ドスッ。


「きゃっ」

 前を見ずに走っていた鈴が前から向かって歩いていた男性にぶつかり、傘を落として尻餅をついた。その鈴にぶつかられた男性は特に何事なかったかのようにブレもせずに立っている。後ろを追っていた紫苑はすいませんと鈴がぶつかった男性に謝って、傘を拾い、尻餅をついた鈴を起こして、拾った傘を渡した。鈴はおしりが〜と尻餅を着いて濡れてしまったのを嘆いていた。

 はっと気づいたように「本当にごめんなさい。前向いていなくて」と鈴が男性に謝る。

「いや、いいんだ」

 といい、その男性は、急に傘を持っていない方の鈴の手を掴んだ。

「「っ!?」」

 その奇妙な行動に、鈴はその男性に掴まれた手を引っ込め、はらった。紫苑は鈴を引っ張り、この男性から少し距離を置こうとする。

「へえ」

 その男性の目の色が変わった。それは獲物見つけた猛獣のようなギラギラとした目。

 男性は舌なめずりをして、二人を見回す。

「さすがに冷え性だとしても、死体みたいに、そこまで冷たくはねえよなぁ」

 いとも簡単に、魔女だとばれてしまった。しかもこの反応からして魔女相手に対し、手慣れている捕獲員に違いない。

「そっちの奴も魔女か?」その捕獲員が紫苑に尋ねた。

「ええ。そうですよ」紫苑が応える義務も何もないが、どうせ正当方でも何が何でも確認しようとしてくるに違いないから、ここは無駄な戦いはせずに、そう簡潔に答えた。

 そう聞くと捕獲員はニヤリと笑みを浮かべる。戦う気まんまんらしい。

 鈴がうーんと考え、

「紫苑ちゃん、ここはわたしが相手した方がいいよね? 能力使ってもいいって許可取ったし」と紫苑に提案した。

「そうですね。私がやると目立ちますし、ただの人間相手にやるものではないですからね。ではよろしくお願いします」

「作戦会議は終わったな。なら存分に楽しませてくれよ?」

 捕獲員が戦闘態勢に入ろうと動き出そうと、袖から何かを出そうとした時、鈴が能力を使った(・・・・・・)

「そんなの嫌ですよ。そう思いませんか?」

 鈴がその捕獲員に訊いた。その今にも魔女二人相手に戦おうとしていた捕獲員はゆっくりと返答した。

そう思います(・・・・・・)

「じゃあ、戦わないってことで」

はい(・・)

 鈴の能力によって捕獲員は牙を抜かれて、調教されたライオンのように、戦いを好まない、そんな別人になっていた。

「あなたは捕獲員なんでしょ? そうなら、何のためにここにいるの?」

「ここ周辺に暴力の魔女がいると、探索系の能力を持った同僚が感知したので、暴力の魔女を捕獲する為にここにいます」

「ふ〜ん。ということ、はまだ捕まえてないんだ」

「はい」

「ここにいる他の捕獲員は何人?」

「おれを含めて四人です」

「増援は?」

「今のところ、なしです」

「そう。紫苑ちゃん。他に訊きたいことある?」

「来ている捕獲員の名前と能力が知りたいです。あと、その人の名前も聞き出しとかないと」

「ああそうだね。今来ている捕獲員の名前と能力を教えてね? もちろんあなたもね」

「はい。陸前伊達と六乃鬼灯、夜歌あさがお、そして、おれ。詩髪光です」

 詩髪と聞き紫苑が反応した。

「詩髪って、お前、きょうの弟か? いるとは知ってたけど、初めて見たな」

「はい。で能力は――」

「能力は別にいいや。能力を知っている奴らばかりだったし」

 そう紫苑がいうと鈴は言った。

「もういいね。じゃあここでおしまい。情報ありがとね。六百まで数えたら、わたしたちと会ったことも、色々質問された事も忘れて、わたしが能力使う前の元の人格に戻ってね」

「はい、分かりました」

 捕獲員の光は素直に一から六百まで丁寧に数えはじめた。その間に魔女草ストライガの二人はそそくさとその場から退散した。


 花木鈴の能力は、洗脳。

 相手の記憶、人格、思考――脳で処理するモノ、すべてを操り、自分の思うままに、書き換える能力だ。しかも、その能力は鈴自身が関与しないかぎり、一回使われれば、切れることなく、記憶、思考、人格として定着し、永続する。

 この能力で鈴は、自衛隊基地にいる、すべての自衛隊員を人格と思考を書き換え、そして全員に脱退願いを出させ、基地の機能を内部から潰し、国の防衛に大ダメージを与えたことから、魔女の中では最強と謡われ、そして、唯一、魔女でありながらも、捕獲員の捕獲対象から外せと、国から直々指示される程、恐れられている存在だった。

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