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まじょがりっ!  作者: ハクアキ
第二章 Mywonderworld Breaker
74/121

おうのうっ! Friends Angle 9/20 13:19

誤字脱字等ありましたら指摘お願いします。

「ねぇ? ぽぽ」

「なぁに、なな?」

 目の前に呆然と立って戦意喪失している捕獲員を指さしながら蒲公英はその能力者を食べるのか七竈に尋ねた後、急に七竈は蒲公英が確認を取るように言った。

 そして、七竈はくすくす笑いながら言った。

「あたし、あんなのは食べないよ」

「……えっ!?」

 その返答が意外だったので、蒲公英は大げさともいえるくらい大きな声で驚いた。

「もしかして、これ食べちゃったから、ななはお腹いっぱいなの?」

 七竈が引きずっている、もう食べ終わった能力者を指さし訊く。七竈はつまらなそうに返答した。

「いやいや。あの捕獲員の能力が欲しくないだけ」

「ふ〜ん。そうなんだ。どんな能力なの?」

「触った相手の記憶を盗み見る能力だよ。そんな能力、あたしは欲しくない」

「へー、そうなんだ」

 蒲公英は能力に対しては別に興味がないので空返事で答えた。

「そんな能力あったら気が狂っちゃうよ。知りたくもないことを知れるなんてさ」

 そういいながら七竈は手に持って引きずっていた食べ残しの捕獲員を、喰わず嫌いした捕獲員に向かって投げた。食べ残しは雨で濡れたアスファルトの上を一回だけバウンドし、水滴と血を辺りに飛び散らしならが転がって、恐怖で竦んでいる捕獲員の前で止まった。

「片づけするのめんどくさいから、お願いね。行こ、ぽぽ」

「うん」

 後かたづけは立ち尽くしている捕獲員に任せ、蒲公英と七竈はその捕獲員の横を堂々と通り過ぎて行く。

 捕獲員から少し離れたところで蒲公英が「ねえ、相手の記憶を見るってどういうことなのかな?」とふと何気なく自分の中にあった疑問を七竈に訊いた。七竈は少し呆れながら「わからないの?」と、言う。

「考えはつくんだけど、わたし一人の考えだけじゃ、自己チューでダメじゃないかな〜と思うんだ」

「なるほどなるほど」

「だから、ななの考えを聞きたいの。ななはどう考えている?」

「まず、ぽぽから話してよ。それから話すから」

 そう言われ、蒲公英は素直に話す。

「うん。分かった。相手の記憶を見る、読む能力があった方が良いと思んだ。だって、相手の記憶を読めるっていうことは、誰にでも適切に優しくできるし、相手にしないでくれって思っている人にも余計なお節介をかけずに済むし」

「うんうん」

「上手く言葉にできない人の気持ちも、すぐに分かってあげられるから、いいと思うんだ」

 蒲公英の意見を最後まで聞いた七竈は言う。

「ぽぽ。確かにいいこともあるよ。話は飛ぶけど、ぽぽって、小説とか読む?」

「全く読まない。一緒にいるんだから、わたしが読まないって知ってるじゃん」

「確認のため。あたしはね、人の人生は小説みたいなものなんだって思うんだ。一人ひとり、一冊の小説の主人公でさ、恋愛とか、友情とか、いろいろなジャンルの主人公なんだと思う」

「そうかも。でも、それが相手の記憶を読むことに繋がるの?」

「この広い世界の中に腐るほどの人という人生の物語が六十億冊以上ある。その中であたしたちが、読もうとして最後まで、読めるのはたった数十冊だけ。でも、記憶を読める能力者は次元が違う。読もうと思ってなくても、耳や目で勝手に受け取っちゃうように、触れたら、勝手に読んじゃう」

「……うん」

「聴きたくないのに、見たくないのに、勝手に見えちゃうんだよ。その人の物語が」

「でも、それなら、物語で小説みたいって言うなら、飽きないんじゃない? 本を沢山読む人だっているんだから」

「それは、自分で面白そうなのを選んで読んでいるから、沢山読めるんでしょ? でも、この能力の場合は、読みたくなくても触れてしまったら自動的に全部読んじゃう。途中であきて読まないって選択肢はない。しかもその物語が面白く書かれてなんていないんだよ。支離滅裂で、きちんと整備されていないからつまらないこともあるだろうし、逆に、不幸なことが沢山あって、救われない話も沢山ある。それを読むのはとっても苦痛なんだよ」

「……確かにそうだね」

「だから、人通りが多いとことか、いけなくなる。そんなところいったら、触れたくなくても必ず触れられてしまうしね。何百人の人生を見続けるなんて自殺行為に等しいよ。それに恋人すらできないんじゃない?」

「? どうして恋人ができないの?」

「それくらい考えられるでしょ。彼女となんやかんやで触れあったときに、もし相手が昔の男の事を思っている記憶とか、ヤっちゃってる記憶とか、自分を憎んでいるとか、本当はお金とか愛でもなんでもないって思っているなんて見えたら、それはとっても苦しいでしょ? それが怖くて、もう誰とも付き合えなくなるじゃない」

「……うん、そうだね」

 蒲公英は振り返り、あの七竈が見逃した記憶を読む能力を持つ捕獲員方を見ようとした。捕獲員に背を向けて話ながら歩いていたから、捕獲員が逃げたのか、単に遠くに行き過ぎて見えなくなったのか、見ていなかったので分からないが、蒲公英が見ようとしていた物の姿はなかった。

「どうしたの?」

 七竈が急に振り返った蒲公英を不審に思い、訊いた。

「あの捕獲員の人、ずっと、可哀想な人生を送ってきたんだね」

「きっと、そうだね」

「だから、ななは、可哀想だから食べなかったんでしょ」

「……半分、かな」

「そう」

 蒲公英と七竈は弱くなった雨にポツポツと弱く撃たれながら、捕獲員の事を憂う。

 その捕獲員の同僚を喰い殺したにも関わらず、そう宣っていた。

 それは、牛や豚、鶏、魚は殺して食べても文句は言わないくせに犬や猫、鯨を殺して食べるのには、文句を言っているようにも聞こえた。


 だが、よくよく考えてみれば、どちらもあまり大差はない問題でもあるのだが。

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