おうのうっ! Hunters Angle 9/20 12:25
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降りやまない雨の中、鬼灯と光は、あさがおが地図に記した付近の場所に着き、暴力の魔女がいないか周辺を探していたのだが、一向に見つからず、時間ばかりが過ぎていった。
あまりにも魔女が見つからないので、痺れを切らした光が、女性で若そうであれば、手当たり次第、襲いそうになっているのを、必死に鬼灯が押さえていたのだった。
これでは埒があかない、というよりは、鬼灯が光の対処に疲れてきたので、鬼灯と光は近くにあったバス停で雨宿りして、これからどうするかを話すことにしたのだが。
「本当にやめてくださいよ……、いきなり、女の子の手を掴むなんて……。謝るのが大変なんですから……」
光が魔女かどうか確かめるため、強引に手を触れた女子高生相手に謝罪を繰り返し、精神的にぐったりしてる鬼灯が、隣で我関せず、意気揚々と魔女を探している戦闘狂の光にもうしないでくれと哀願する。
「何言ってんだ? これが一番手っとり早い方法なんだぜ?」
確かに魔女か普通の人かを見た目だけで判断するのは難しい。心臓がないから、一般的な人より血色が悪く、肌が青白いと言っても、普通の人でも、具合が悪ければ顔が青白い人だって沢山いる。
「それが駄目なんですよ。何度、セクハラで訴えるって言われたか……」
魔女か魔女でないかの見分け方としては、捕獲員の探索系の能力者を使う方法と、一般的に体温があるかどうか触って確かめる方法が用いられている。
だが、この触って確かめる方法は、捕獲員を装って、女の子に触る痴漢被害が多発したので、捕獲員でも御法度なった。そういうことを踏まえて近年では、駅や空港、大都市には至る所に各自治体が自己で(一応、何割か国が負担してくれる)サーモグラフィが導入されて、いわばオービスのように魔女がいないかどうかを監視している。
一方、捕獲員には、サーモグラフィは支給されていない。使いたいならば、各自自腹で買わなければならないのだ。魔女被害の保証と研究、魔女収容所の維持費で、機関の財政はきびしく、それに捕獲員には探索系の能力者がいれば済む話で、そんな大層で予算カットできる物は捕獲員に支給されるわけないのだ。
「別に手ぐらいいーだろ? 姉貴なんて、胸に手突っ込んで心臓がないか確かめてたぞ?」
「どっちも駄目です」国家機関の捕獲員でも、ちゃんとセクハラやパワハラで法の裁きを受けます。と付け足した。
「わかったよ。もうしないければいいんだろ?」
「……三回目ですよ? それ?」
懲りもしない光に、鬼灯はうなだれた。
取りあえず、ここ周辺には魔女らしき人物が見あたらないので、鬼灯はあさがおから借りた地図を開いて見て、近くの交番を探し、そこに向かうことにした。住民から寄せられた魔女に関する情報は、まず先に近隣の交番に集まるから、そこで情報集めるためと、交番を回っている伊達とあさがおと合流するためである。あさがおがいれば、暴力の魔女の位置はすぐに特定できる。
「光さん。一旦、交番に行って情報を集めましょう。できれば、伊達さんたちと合流して――――」
鬼灯が地図から顔を上げながら、これからの事を説明しようとした人は、
「………………光さん?」
もういなかった。
きっと、あの戦闘狂は一人で魔女を捜しに行ったのだろう。ついでに傘までなくなっている。
「………………」
一人、寂しく取り残された鬼灯は、自分の仕事を真面目に遂行することにし、戦闘狂の事は、早々に諦めることにした。あの人の事で、気に病んでても無駄なことだと、鬼灯は骨に染み込む程実感してしてる。
「取りあえず、交番に向かうか」
そう決め、バス停からでて傘を差し、交番へ向かい歩き出した。
「なんで俺が光さんの相手をしなければ……」
ぶつぶつ不満や愚痴を呟きながら、住宅地を歩って交番を目指していると、ある家の前に傘を差した人々の群が出来ているのに気づいた。よくもこんな雨の中、野次馬しようと思うのかと、鬼灯は呆れ半分、一応、魔女が関係しているかもしれないと、近くで様子を見ることにした。
その家に近づくにつれて、家の窓ガラスはすべて割られているのが鬼灯の目に飛び込んだ。野次馬になるくらいだから当然かと、鬼灯は耳をそばだてて周りの音、野次馬たちの世間話を聴いていた。
(この家の中学生の女の子が、バット振り回して家中の物を壊したらしいわよ?)
(最近の若い子って、切れると怖いわね)
(中に様子を見に入った人の話だと、隣に住んでいる須藤さんの死体があったんだって。しかも、お風呂場にはそのこの両親がバラバラになっていたんだってさ)
(しかも、その子、ゴルフクラブと血まみれの凹んだ金属バットもって、どっか行っちゃったところを、私、見たのよ。すごく怖かったわ)
(どうして、誰も跡を追わなかったの?)
(その場にいた人の話では、誰も動くことができなかったらしい。金縛りみたいだったそうだ)
(何それ? 超能力? 超能力で周りの人を動けなくしたの?)
(その子は、中学生で女の子だろ? なら、ほら、あれ。今世間を騒がせている、“魔女”になったんじゃないか?)
(とういことは、その両親は、魔女になった自分の子に殺されて、食べられたってこと?)
(匿っていたのかしら?)
(いいや、違うだろ。そういうことを狙った模倣犯かもしれない。そういう魔女を語った未成年の少女が犯人の殺人事件が今、多いからな)
(じゃあ、みんな動けなかったのはどう説明するんだよ)
(そんなことより、警察は何しているのかしらね)
(いや、ここはあのなんちゃら機関の捕獲員の出番になるはずだ)
(国も、よく国民から集めた税金で無駄なことするわよね? 警察や自衛隊で十分じゃない。警察も自衛隊もそういうことのためにあるんだから)
(その警察と自衛隊が魔女に潰されかけたから、政府は魔女専門の機関を造ったんじゃないか)
(そんなことより、早く捕まえてほしいわね。これじゃあ、犬の散歩すらできない)
(そういえば、昨日、昔に逃げて女の子を足を噛んだ犬いたじゃない?その犬が――――)
「これは、ビンゴだな」
中の様子も確認しておこうと鬼灯は、その野次馬をかき分けて中に入ろうとした。
ふと後ろに何か気配を感じ、振り返る。
レインコートを着た、中学生くらい女の子が買い物の白いビニール袋を持ちながらあわてて走ってくる姿が見えた。そして、野次馬たちの前で立ち尽くした。その表情はこの状況が理解できず愕然としている顔だった。
「どうし、て?」
女の子はそう呟いた。
鬼灯はきっとこの家の子の友達、そして関係者だろうと直感でそう思い、躊躇せずに声をかけた。
「おい、そこの――――」