あんぐらっ! Hunters Angle 9/18 12:54
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「そっちはどうだ?」
『全然駄目ね。牛肉とか魚とか沢山買おうとしている買い物客がいるか見張っていたのだけれど、今は一人もいないわ。やっぱり、手帳を見せて魔女の餌は内臓系がいいって鎌かけているのが間違いなのかしら』
「……」
『最初に話しかけた高校生くらいの年の男の子はね、手帳を見せたら顔色変わったから、この子は魔女を匿っているみたいだと思って、鎌かけたみたら、案の定、思いっきり動揺して、私の前から逃げるように立ち去ったのよ。これはこの子で決定だな~、でも一応、他の人にも試してみようって、確認のために他の人にも手帳を見せたら、その男の子と同じような反応したのよ~。繰り返している内に、誰が魔女が匿っているの!? まさか全員!? って混乱しちゃったのよ~。鬼灯君、私、どうしたらいいと思う?』
「……あのな、誰だってなぁ、世間一般で魔女と同じくらい忌避されている捕獲員に疑われていると感じたら、顔色ぐらい変えると思うぞ。あと最後の鎌かけが最悪だな。そんなことを自分を疑っている素振りをしている捕獲員に言われたら、俺だって、何かしてくる前に逃げる。そんなことよりも、よく店から追い出されなかったな? そんな営業妨害して」
『今さっき、店から追い出されたわよ。捕獲員じゃなかったら、警察呼ばれていたわね』
「……三年くらい一緒に仕事してきたけれど、あんたが賢いのか馬鹿なのか本格的に分からなくなってきた……」
『それは、女の子の気持ちに鈍感な鬼灯君には絶対に分からないことね』
「余計なお世話だ」
『ところで、こならちゃんの情報収集はうまくいってるの?』
「ああ、こならの情報収集によるとだな、最近学校に急に来なくなった女子生徒が一人いるらしい。そいつが魔女かもしれないから、今から家に押し掛けるとこ、だな」
『ふ~ん、それは大変ね。じゃあ私は警察署でも行って、死体の身元と検視結果が出てないか確認してくるわね』
「最初からそこに行けよ。つーか、警察署はマスコミとか多いから入れるかどうかわからないじゃないか? あー情報規制してるから集まらないか」
『そこはコネ使うから大丈夫。色々とあるのよ。鬼灯君が知らないあ~んな事や、こ~んな事が「あっそ」
鬼灯は電話を切った。こうやって切らないと百合子は永遠と喋り続ける。
「百合子さんの方はうまくいってましたか?」
丁度よく、こならが若者向けの服屋から戻って来た。
ここ周辺の学校は休校になっている為なのか、暇を持て余した命知らずの若者たちがこいうショップに屯しているのだ。
鬼灯とこならは若者向けの(特に女子が好きそう、或いはその類のショップ)を周り、最近急に休んでいる子がいないか情報収集する。
身内が魔女を匿う場合、外に出て誰かを襲ってしまうのと、周りに魔女だと悟られるのを防ぐためか、魔女を外に一切出さずに、学校には病気であると長期欠席の連絡することが多い。
だから、その手の微妙な空気に敏感で、話題や刺激に飢えている中高校生の女子に聞いて回るのが手っとり早い。
前は(今もだが)情報収集は百合子がやっていたので、あんまり(下手すれば全然)あてにできなかったが、こならが入ってきたからは鬼灯は任せっきりになっていた。その任せる理由が、俺が女子向けの店に入ると怪しまれるし、声かけるとナンパと勘違いされるからだ。と本人は言い張っている。
「全然駄目だったそうだ。本当にあいつは仕事しているのか?」
「今回は魔女が多いかもしれないから、二手に分かれましょうって百合子さんから言い出したのですから、たぶん仕事してますよ……、たぶん」
こならは素直に言った。
「おまえにまで言われるとは、あいつ……、本当に駄目だな。見た目は真面目で何でもできそうな雰囲気なのに。ところで、おまえが持っているのは袋は何だ? さっきホームセンターで買ったヤツじゃなさそうだし、ここで気に入ったの服でも買ってきたか?」
鬼灯はこならが持っていた服屋のロゴが入った紙袋を見て訊いた。
こならは少し狼狽えたながらも答えた。
「これですか。えーと、これは、その不登校の女の子が通っている学校の制服ですよ。さっき情報提供してくれた人と同じ学校の人がいて、制服もってたんで借りたんですよ。サイズもあってましたし」
「ああ、なるほど。それ着て乗り込むってわけか。乗り込む時、今の格好よりは怪しまれないもんな」
「そうです。そうですよ! それより先輩、わたしの制服姿、見たいですか?」
こならは楽しそうに訊いてきた。
「見たい。……って素直に返せばいいのか? なんかそれだと変態っぽくて、言われた相手も素直に喜べない気がすると俺は思うんだが」
こならはあからさまに不満な表情をする。
「……はあ。せめて見てみたいな~、程度の反応だったら、私も頑張りがいがあるし、嬉しかったんでですけどね。あと、そこまで気が回るんだったら、わたしが見たいですかと訊いた時点で、こいつ、見せたいんだな~、ぐらい考えてくださいよ」
「そうも考えたが、昔そう返して……、うん。ひどい目にあったんだ……」
鬼灯は遠くの方を見て言った。
きっとその向こうには、とある女性がうふふ、と微笑んでいるのだろう。
悪魔のように。
「……そのお相手が、わたしの目にも浮かぶのは、どうしてなんでしょうか?」
「本当に女って分からないな……」
「いや、あの人が別格で凄すぎるだけだと思いますよ? たぶん」
そんな他愛もない会話を終わらせ、鬼灯はこならが借りてきたと言った制服をバイクの収納のところに入れさせた。
そして、先ほど百合子との電話の話題で出た、急に不登校になった女子生徒の自宅付近で、こならが制服に着替えるための場所を携帯の地図機能で探す。
「それと、百合子さんは次はどこへ向かうって言ってましたか?」
「警察署だとさ。検視結果が出てないかと、死体の身元確認して、その遺族に年頃の娘がいないか確かめるんだと」
「こちらにもその情報を回して欲しいですね」
「回してくるに決まってる。百合子は一人では捕まえられないからな」
鬼灯は携帯しまい、こならにヘルメットを渡す。二人ともヘルメットを被ってバイクに跨る。目的地はと、鬼灯は脳内でさっき見た地図を思い浮かべて、その場所を目指してバイクを走らせた。