表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
まじょがりっ!  作者: ハクアキ
第二章 Mywonderworld Breaker
60/121

うそつきっ! Konara Angle 9/19 17:50

誤字脱等ありましたら指摘お願いします。

「おかえりんこ〜」

「たっだいま〜」

「………おい、こなら、ちゃんと乗ってこいよ」

「そっちこそ、家に帰ってきたばかりの妹にセクハラしてんのよ」

 家に帰り、居間に入るとすぐに寝転がってPSPをやっている暢気な兄の(しい)にセクハラを受けました。こんなの日常茶飯事なので、特に腹を立てたり、変なリアクションしたりしません。マンガやドラマやエトセトラのようにいちいちやっていたら気が持ちません。ふつうに何事もないように受け流します。

「あら、お帰りなさい。今日は部活休みだから早く帰ってくるんじゃなかったの?」

 白いエプロンを着て夕飯の支度中のお母さんが台所から出できました。

「鞠藻と愚痴ってたら遅くなったの。今日のご飯は?」

「酢豚よ」

「………後生ですから、パイナップルは入れないでくだせい」

 私はあれをおかずとは断じて認めていません。ふつうにデザートとして食べるものだと、私の薄っぺらい辞書に書いてあります。

「え〜。毎回毎回うるさいわよ? 何でも食べないから、色々と小さい―――」「それをいうなっ!」最近、気にしてるのにっ!

「わたしはパイナップルはデザートとして、たべたいのっ!」

「あ、パイナップル入れると豚肉がやわらかくなるってどこかで聞いたわよ」

「うそだっ! 缶詰めのパイナップルにはタンパク質を壊す酵素は、加熱処理されることによって、破壊されるから、入れても何にも効果がないんだよっ! ていうか、加熱調理する時点でその酵素が破壊されるから缶詰めじゃなくても、いれる意味なしっ! よって入れなくてもいいっ! アンダースタンドっ!?」

 これだから“科学的”と言えば科学的根拠もへったぐれもないのに信じちゃうお母さんは駄目だなぁと思いました。

「確か、酢豚にパイナップルの代わりに、リンゴやサクランボいれるパターンもあるらしいぜ」

 椎がなんかお母さんに助言しやがりました。無駄口たたいてないでPSPやってろよ。そして、ギア○スごときにやられてしまえ。

「それはフツーに食材として入れているってことね。ならパイナップルも入れてもオッケー」

 どうしてお母さんはわかってくれないのでしょうか。ここで何かいっても、アップルパイだって加熱してるじゃないの、それと同じよ。と言い訳するに決まってます。ていうか、アップルパイはデザートの部類でおかずにはいりませんって。

「……普通に食べようよ。デザートとして……」

 今日も我が家は平和でした。


 †


 パイナップル討論の後、できあがった夕食の酢豚(パイナップル入り)を仕事で帰りが遅いお父さんを除く、家族三人で食べました。パイナップル以外はおいしかったです。

 居間に戻って、「ふう、食った、食った」と椎がオヤジ臭く言って、スリープモードだったPSP再びやり始めたのを、ジト目で見ながら、コタツ(佐藤家ではもう出しています)の上に筆記用具と、小学生の時に買った原稿用紙を広げて、突発的な宿題の反省文を早く終わらせようと、原稿用紙に差し障りもない反省の文章を書き書きしはじめます。原稿用紙二枚くらい渡してくれたっていいじゃないかと思いました。たかがそれだけの為に原稿用紙数十枚セットを買うなんて馬鹿げていると思いませんか? 

「何やってんの」椎がPSPをやりながらという、ひじょーにムカつく状態で訊いてきます。

「反省文書かされてんの」

「窓ガラスとか割ったのか?」

「いいや、とばっちり受けたんだよね」

 私は椎に今日何があったのか簡単に説明しました。

「それは気の毒だな」

 率直な感想でした。

「しぃーはそんなことあった?」

 あ、私、この兄のことを“兄”とは呼びません。“しぃー”と呼んでいます。恥ずかしいからとか、そう言う問題ではありません。ただこの兄に敬う気持ちが芽生えても、一向に育たないからです。きっと自らの行動が、知らず知らずその芽を刈り取っているのでしょうね。

「うーん。特になかったかな」

「いいなー」

「あ、でも、怒られる内が花って強調してたなぁ。社会人になってそういうことしたら、怒られるんじゃなくて、切り捨てられるんだぞって重々しく言ってた」

「何それ? 怒られる時点で何もかも終わってるのに」

 問題発言一回したら、何度もニュースで繰り返し蒸しかえ流されて、フルボッコにした後に、視聴者が飽きてくる頃になったら、切り捨てる癖に。あー嫌だねー。ああいう職業には絶対なりたくない。だって、何言っても全部否定されそうだし。

「それは同感」

 椎は会話している私にわき目もせずにPSPをやっています。まあ私も、原稿用紙に書き書きしているので、見ていませんが。

 こんな高校二年の兄を見て、以外と高校生活って先生方が熱弁するほど忙しくなく気楽なんだなーと実物を見てひしひしと伝わってきます。こんなのになる前段階として、来年には、私もとうとう受験生という立場になり、毎日、受験勉強とストレスに戦い明け暮れる日々に、半ば強性的になるのです。そう思うとその後の高校生活よりも、そっちの方が忙しそうで、なんだか憂鬱になってきます。

 楽して生きたいのか、それとも、単なる失敗が怖いのか。たぶん前者の割合が大きいのでしょうね。

「はあ」

「どした?」

「血の繋がった人生の先輩に質問。人生で一番重要になってくるのはなんだと思いますか? お金以外でお答えください」

 急に何言い出すんだ? と訝しげにPSPをスリープモードにして私の方を向きました。私が何でもいいから応えてよ、暇なの、と言うと椎は少し考えはじめます。

「うーん。人間関係じゃないか?」

「その心は?」

「人ひとりでは生きていけないから」

「うわー。つまんねーこといいやがるよ。このしぃーは」

「黙っとれ。以外と深いんだぞ? この言葉は」

「言葉なんて全部深いだよ。ただみんな、めんどくさがって下に掘らないだけ」

「お前のも深いな………」

「おほめにあずかりこうえーのいたりです。でどんな風に深いの?」

「それはな、確かに人間は一人では、生きてはいけなくはないんだ。でもそれは自然界の話であって、おれらが生きている社会での話ではない。だから、さっき言った言葉を的確に言い換え、分かりやすくすると、人ひとりで社会には生かしてもらえない、が正しい意味になってくるんだよ。自分勝手生きる人には、人が作った罰によって死刑にされちゃうし、社会で活躍しなければ、生きる為のお金すらもらえない」

「うんうん」

「じゃあ、どうやってこんな息苦しい社会を楽に生きていくか? それはもちろん、助け合って生きることになってくる。そんなの違う、一人でも大丈夫、ていう人もいるとは思うけど、そう言う人は自分が海で溺れた時に、一人で何とかしようとしているのと同じだ。助かるわけないだろ? だから、一人よりも、みんなで知恵を出し合ったり、力をあわせたり、それぞれ役割を分散して、最後に一つにしたりした方が絶対に良くて、楽に決まっているんだ。そして、その土台となってくるのは、人間関係であるわけ」

「ほうほう」

「学校だって、友達がいないと、宿題忘れた時とか、試験の前とか、休んだときとか、色々と困ることが多いだろ? 人生に人間関係は必要になってくるんだ。だからおれはこうやって、友達との話題合わせのためにゲームしているんだよ。小難しい古い小説、太宰治とか、夏目漱石とか森鴎外とか、勉強になりそうな物を読んだとしても、今時の高校生の中でそれらの本について面白いよね〜って、話し合わせられる人なんて数少ない。読めって押す方の大人にだって、少ないってわかっているんだから。なら数が多いゲームやアニメ、マンガなどのサブカルチャーの方から話す方が、友達との話題が作りやすいに決まっている。それに、その手の話題は尽きないし、何しろおもしろいからな。苦にならないこともいいことだと思う」

「ふーん。わかった。で、その元ネタは?」

「最近ハマったマンガで、主人公に対して、その主人公の学校の担任がいってた」

「やっぱりそうか」

 椎がそんな仰々しいことを考えられる程のキャラではないことくらいわかっています。

「でも、共感できるところ多くない? 読んでてなるほどなーと感じたんだけど」

 共感できる部分が多い、のではなく、ただの当たり前ことを述べているだけなのだと思います。当たり前であって、その通りにできなくて、気づかないフリをして、知らなかったフリをして、嘘ついて、余裕のある誰かが手を差し伸べてくれるのを待っているのです。無知は罪だとか昔の偉い人が言っていますが、そんなの今の時代では通用しないことが多いのです。いわゆる、ジェネレーションギャップというヤツですね。今時代では、無知よりも、教えなかった方が叩かれ、賠償金を取れる、そんな手厳しい時代なんですよ。

 私は差し障りなく、反応薄めに返します

「そうだね。でも、うまくできないんだよね。卓上論と同じで」

 友達を作るのも、先生に好かれるのも、学力をあげるのも、全部いっぺんにやるだなんて、それはそれは難しいのです。数値化すれば、私の期末のテストの結果みたいに凸凹の値になるのでしょう。全体的にそれぞれの差がなく、高い値にするなんて勉強より難しいに決まってます。勉強と違って、やればあがる、で、即上がるのではなく、やり込んで相当長い時間をかけて、一から人物形成しなければ無理な話なのです。

 私は兄の長ったらしい人生論(参考文献はマンガ)を聞き流しながら反省文を適当に無難に書き終えたので、自分の部屋に戻って、音楽を聞きながら雑誌を読むことにしました。別に居間で読んでもいいのですが、その内、後かたづけを終えたお母さんがテレビを見始めて、うるさくなるので、避難します。

 二階ある自分の部屋に行き、ベッドにボフッとダイブ。近くに置いてあるIPodシャッフルを手繰り、イヤフォンを両耳に入れて、瞼を閉じてポチッと再生。洋楽の某有名のバンドの曲が流れてきます。詳しくはいえません。

 前に鞠藻に、邦楽ばかり聴いてないで、洋楽も聴いてみなさいと、何故か命令口調で言われて、聴いてみようかなあと思ってのだけれども、何から聴けばいいのかわからず、取りあえず、目に付きやすい所にあったのを適当に借りました。最近はこのアルバムばっかり好んで聞いています

 好きな理由としては、歌詞が良いから好き、ではなく、まあ邦楽でノリが良い曲が一時的に売れるみたいな感じで、今のところ気に入って聴いています。音楽家の家系に育った訳でも、帰国子女でもなんでもない一般的な中学二年に、音楽的な感性での感想や、英語のリスニングは無理ですって。

 気に入ってから、歌詞を知りたくなって(カラオケで歌ってみたくなったから)ネットで歌詞を調べてみました。和訳された歌詞を読んで、いい歌詞だな〜と、まだ発展途中の幼稚な感性でそう感じました。


「こんなんじゃ、駄目だよね」

 そう一人、呟きました。


 こんな私の世界が嫌いです。

 何にも良い方向には起こらないようで、踏み外すと、すぐに手のひらを返したように悪い方向へと簡単に突き落とす、世界が。


 誰か、壊して、新しくして、くれないのでしょうか?

 

 誰か、こんな、私の世界から、私を救ってくれないでしょうか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ