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まじょがりっ!  作者: ハクアキ
第二章 Mywonderworld Breaker
59/121

うそつきっ! Striga Angle 9/19 17:22

誤字脱字等ありましたら指摘お願いします。

 日が傾き始めた頃、魔女草ストライガのリーダーこと、淡いピンクのワンピースに白いフリルのついたブラウスを羽織り、長い茶色の髪をなびかせている、花木鈴はなきりんと、副リーダー、セミロングの黒髪、上は白のTシャツに男物の黒のジャケット、下はデニムを着た、つり眼の南宇美紫苑みなみうみしおんが国道をとぼとぼと歩いている。身長は二人とも160センチくらいで大差はそんなになく、紫苑の方が数センチ高い。体つきは紫苑の方が細く、その代りなのか、鈴は胸が大きい。どちらも顔は恐ろしく整っていて、美人、と分類される人種だった。

 もちろん、二人とも人喰いの魔女なのだが。

 鈴が言った。

「紫苑ちゃん。やっぱり車は必要だと思うんだよね。歩いて帰るのはこんなにも時間がかかるし」

 いっつも捕獲員たちより出遅れているからさと言う。

 紫苑が訊いた。

「でも、そんなのどこから持ってくるんですか? まさか盗むんじゃないですよね? というか運転できるんですか?」

 鈴はブーブー拗ねながら言った。

「そんなことないですー。ちゃんと、わたしの未来の夫に頼むんですー」

「………あんまり東城(とうじょう)さんにねだらない方がいいですよ? あの人、機関の方の会計の仕事について、忙殺されているんですから」

「そんなことは、わかっているもんね。これでも同棲してるんだから」

「それは知ってますって。ていうか、私も一緒に一つ屋根の下に住んでいるんですから周知ですって」

 紫苑は毎度の鈴の相手に呆れながらもちゃんと答えていく、そんな律儀な性格だった。

「これで三回連続で捕獲員たちに先越されてますね」と紫苑が言う。

「基本的にわたしたちの根城の近くじゃないと、駆けつけるのに時間が掛かり過ぎるからね。それはどう頑張ってもどうしようもないもん。それにわたしたち、魔女だから、一般の交通機関は使うなって言われているし」バレたら大変なことになるからと東城さんから、釘刺されているしと鈴が言う。

「せめてサバドの行き先が分かれば、早く駆けつけることができるんじゃにでしょうか?」

「そんなこと言うなら、わたしの能力使って探索系の捕獲員の子一人、連れて帰る?」

「能力は使うなって“あれ”から言われているじゃないですか」

「バレなきゃいいんだよ」

「いや、バレますって。捕獲員から引っこ抜くのは」

「はあ、本当に探索系の能力を持った魔女っていないのかなぁ」

「そんな都合良い能力を持った魔女なんていませんって。そもそも魔女と言うものは、生き物を簡単に狩れるための能力しか持ってなんですから」と紫苑がはあと、ため息をついた。


「やあ、そこのお二人さん」


 歩いていた鈴と紫苑は、横から急に声をかけられた。女の子の少し低い声だった。その声がした方向にはもうすぐ全体の葉が茶色に色づきそうになっている桜の木があり、その一本横に生えた大きな枝に、フードを被った高校生くらいの女の子が座っていた。服装は、緑色のパーカーにブルージーンズ、白いスニーカーで、二人が視線を向けるとそのフードを取った。髪は茶髪で無造作ヘアーだった。

 その子に鈴が尋ねる。

「何か、わたしたちにようがあるの?」

 その女の子は桜から飛び降りて、二人を確認するよう見て、近づいていく。

「あんたら、もしかして魔女草ストライガの魔女?」

「ええ、そうですけど」と紫苑が隠すこともせず答えた。その理由としては、その組織名を訊いてきた時点で、この女の子がただ者でない、だから、隠しても、無駄。それ以前に、この二人にとって、魔女草ストライガの魔女ということは隠すほどのことではないからだった。

 紫苑がそういうとその女の子は、ニヤリと笑った。そして、弾むような声で言う。

「へえ! そうなんだ! なら―――」

 瞬時に紫苑の前へとかけ、

「すんご〜く、強いんだよね?」

 紫苑の顎めがけて、アッパーカットをくり出した。

「っ!?」

 紫苑は体の反り返らせてアッパーを避ける。少し拳が顎に掠った。後ろに下がり、急に殴り掛かってきた女の子から十分な間合いをとる。

「大丈夫っ!? 紫苑ちゃん!?」

「ええ大丈夫ですよ。掠っただけです」

 隣にいた鈴は、すぐに、巻き添えを食らわないように二人から離れてた所に移動し、心配そうなそぶりで紫苑を見つめていた。

 その姿を見た女の子は、何故かがっかりとした様子だった。

「何だ、そっちのあんたが、花木鈴なのか。あの最強の魔女がそんなほわほわとしているやつだとは、思わなかったよ。なんか、がっかり。うん」

「あなたは何者ですか? まず名前を名乗りなさい」と強めの口調で紫苑が訊いた。

「名前? あたしの名前は栗山葉々子(くりやまははこ)、魔女での名前は暴力の魔女だ」胸を張りながらその暴力の魔女、葉々子は言った。

「呼び名があるってことは、一回以上機関に追われたみたいですね」

「ちゃんと言ったんだから、お前の魔女として名前も教えろよ? お前だけは、あいつから教えてもらってないからさ」

 葉々子が紫苑に魔女としての名前を訊こうとしたが、鈴が急に口を挟んだ。

「ねえ、紫苑ちゃん。ここはわたしがやった方が早く終わりそうだよ?」

「いいえ、これくらい大丈夫ですよ。鈴さん」

 余裕しゃきしゃきの魔女草ストライガの二人の態度に、怒りを覚えた葉々子は紫苑に向かって言い放った。

「嘗めてんじゃないねーよっ!」

 葉々子は紫苑との距離を詰めようと、人とは思えない早さで近づいて来きた。

「こんな奴。一発で終わりますから」

 紫苑は右手で銃の形を作り、そのお粗末な銃の標準を葉々子の左腕に向けた。

「パン」



 ブチュッ。



「ほえ?」

 葉々子の左腕、上腕二頭筋のあたりが、肉と血の飛沫を上げて爆発するようにはぜ、辺りに血と肉片をまき散らした。返り血と破片が葉々子の顔と着ていた服の右側にべちゃりとくっついて、赤く染めた。骨は損傷していないため、腕は骨だけで繋がったままの状態になり、もちろん神経なんてものは、どこかへと弾け飛んだので、だらんと動かない邪魔な物体となり果てた。

 葉々子はなにが起きたか理解できなかった。骨一本だけでつながっている左腕を見てもわからなかった。頭が物事を処理できていないかったからだった。

 そして、遅れてきた痛みによって、実感した。

「ああああああああああああああああああああああっ!?」

 紫苑はゆっくりと葉々子に近づく。

「嗚呼、私の魔女の名前はまだ言ってませんでしたね?」ともったいぶりながら紫苑が言った。

 


「私は血煙(ちけむり)の魔女と呼ばれています。俗に警察潰しハンターキラーと呼ばれた時もありましたね。まあ遠い昔の話です」

 紫苑は微笑みながら、再び右手のお粗末で、高い攻撃力誇る銃を葉々子の頭に向けた。

「ひぃっ」葉々子の頭の中では自分の頭がさっきの自分の左腕のように弾け飛ぶ幻想が見えているに違いない。

 紫苑はゆっくりと葉々子近づく。

魔女草ストライガの魔女を舐めない方がいいですよ? 私からはこれくらいですね。鈴さんから何かありますか?」

「うーん。特になし、だね。どうせ、私の本名を、誰から教えてもらったのか、なんて言わないと思うし」襲ってくるくらいだから、魔女草ストライガに入りたいなんて思わないだろうねと呟いた。

「そうですか。なら、あなたには用はありません。さっさと死んでください」

 そして、葉々子の額に銃口――紫苑の指先が触れた。

「うあああああああ」

 葉々子は紫苑の前から脱兎の勢いで逃げ出した。

 紫苑は、一応、姿が見えなくなるまでその銃を向け続けていた。

「はあ、なんでこうも血の気が多い子が多いかなぁ。魔女草ストライガのリーダーとして言うけど、そういうのはよくないと思うよ?」

「え、私に言っているんですか? それ?」

「だって、わたしなら怪我させずとも、あの子を魔女草ストライガに引き入れられたし」

「………だから、それ使ったら、こちらの首が飛びますよ?」

「飛ぶ前に、止めさせられるもんね」

 紫苑はまあそれはそうですね、と投げやりに述べて終わらせ、これからどうするか訊いた。

「あの子が何でわたしの名前を知っていたのか疑問だよね。わたしも昔、そうとう派手なことやったけど、情報規制されてたはずだから、名前は流れていないはずだし」

「誰かから教えられたのでしょうね。機関の誰かからとか」

「もしくは、あの男の子から、かな?」

 魔女草ストライガの二人は家に戻らずにしばらく周辺にいることにした。

 鈴が言っていた子がいると言うことは、それは、高確率でこの周辺で魔女が生まれることを意味するからだ。


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