うそつきっ! Hunters Angle 9/19 17:34
誤字脱字等ありましたら指摘お願いします。
夕暮れの高速道を黒いミニバンが走っている。週末であるがそれほど混んでいる様子はなく、時々高速バスや大型トラックを避けるべく、追い越し車線を走ったり戻ったりして、順調に走っていた。
その黒いミニバンには、運転手と助手席に二人、後部座席に二人、計男四人で乗っていた。年は皆若く、一番下は高校生か中学生くらいで、あとは二十代前半くらいだった。車内には交通情報やニュースなどが流れるラジオがBGMのようにかかっていた。どうやら、話している内容からして、この四人は何かの仕事の帰りらしい。
「今回の魔女は、なんか、呆気なかったすね」
助手席に座る|二十代前半の短髪で、長身で細身。某スポーツメーカの黒いジャージを着ている詩髪光が言った。
「……おまえはいっつも戦いたがるよな。後始末をする回収班のことも考えろよ」
あきれ口調で運転している、年は光よりも少し上くらい、薄緑の長袖シャツ、青のジーンズ、ガッチリとした体型、短髪陸前伊達が言った。
「まあ、何でもいいじゃないですか。早く終われば」
後部座席、運転手の後ろに座っている、薄紫のトレーナーに黒のカーゴパンツ、十五歳くらいの童顔の少年、夜歌あさがおが素っ気なく言った。
その隣、ぼーと流れる景色を見ている、灰色のジャケットの下にトレーナー、黒のジーンズ、二十歳前後で、髪は無造作ヘアー、精悍な顔立ちの男、六乃鬼灯がいたが、疲れているのか会話に参加する気はないらしい。
「あの魔女簡単に捕まりやがって、オレが行くまでもなかったじゃないすか」と伊達に向かって光が愚痴いう。
「馬鹿。おまえがいないと誰が魔女草の魔女どもを蹴散らすんだよ? 俺は無理だからな。あんな奴らと戦うのは」と伊達が文句を言った。
「オレ以外に、鬼灯がいるじゃないすか? なあ?」と振られた鬼灯はええと、空返事で答える。隣にいるあさがおが鬼灯に大丈夫か訊いた。
「元気無いですね。どうしたんですか? 鬼灯さん?」
「いや、ちょっと疲れただけだ」
鬼灯はそう言い、再び流れていく景色を見ていた。
「なんか、鬼灯さんがブルーっぽいですよ? 何かしたんですか? 光さん?」
隣に居るのにも関わらず、あさがおは気にかけることなく光に訊いた。いつも、鬼灯が落ち込んでいる原因はこの人にあることが多いからだ。光は今回の仕事の内容を頭の中で振り返ったが、
「特に何もしてないぞ」と、いつも通り忘れていた。
「いつも通り、光が忘れてるだけだろ」
鬼灯も大変だなと、伊達は鬼灯を哀れんだ。
あさがおが話を逸らすように言う。
「それにしても、杏さんはどこに行ったんでしょうね? あの方がいないと捕獲員の全体の戦力はがた落ちですよ?」
光がめんどくさそうに答えた。
「さあ、弟のオレにもサッパリわかんねーよ。アネキの考えることは。それに減った分は新しい奴が入ってくるんじゃねえの?」
あさがおが話し続ける。
「確かに、そろそろ新人が入ってきてもいい頃ですよね?」
伊達が思い出したように言った。
「そういえば、捕獲員養成所で、強いっていうのか、高い能力を持った二人組がいるってきいたな。その能力ってのが、他の奴らよりも、飛び抜けているらしいぞ」
「どんな能力なんすか?」とあさがお。
「小耳に挟んだくらいだから詳しくは知らんが、一人は女子、攻撃系で水を操る能力。杏さんと同じ系統の能力だな。もう一人が男子で攻撃、探索系の両方の能力だそうだ。こっちは詳しい能力は訊いてないから知らん」
あさがおが顔をしかめる。
「うげっ、その男の子のせいで、僕の存在意味がなくなりそうなんですが」
「大丈夫だ。探索系のおまえなら、俺や光、鬼灯よりも必要とされるさ。探索系でもない俺らは、年食ったら魔女収容所の監視員になるだけさ」と伊達が言った。
「えー。男子禁制の食虫植物園に伊達さんは入れないでしょ?」
同感と光がいい、隣にいたので伊達に小突かれた。被害がなかったあさがおは一人笑っていたが、何かを感じ取ったのか、急に表情が険しくなる。
「ん? 近くに魔女がいますね。これは暴力の魔女、あと、魔女草の魔女二人、正偽の魔女と血煙の魔女、計三人がいますね。それにしても、こんなところに魔女草のリーダーと副リーダーがいるなんてねぇ。今回もあいつらは出遅れたようですね」
「――残業決定だな」と伊達が言った。
「そうですね」と声を弾ませて光が言った。
鬼灯は落ちていく夕日を横目に見ながら「はい」と言った。
「次のインターで降りるぞ。それから機関の方に連絡するか」
そう伊達がいい、黒いミニバンは差し掛かったインターチェンジに向かって走っていった。