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まじょがりっ!  作者: ハクアキ
第一章 Shall We Dance With Cannibalism?
5/121

あんぐらっ! Hunters Angle 9/18 10:33

誤字脱字などありましたら指摘お願いします。


 400ccの大型バイクに若い男女が乗り、四車線の国道を走っている。平日であるからなのか、それとも人喰いの魔女がいるからなのか、それほど混んでいない。時折、運搬用のトラックを追い越しながら、若い男女を乗せた大型バイクは目的地のホームセンターに向かって走っていく。

 その大型バイクの運転者の後部に座って、振り落とされないように運転者の腹部に細い腕を回して抱きつき乗っている少女は国道に隣接する店をきょろきょろと眺めていた。

 白いヘルメット被っているため、顔は見えないが、淡い青色でストライプ柄のチュニックシャツ、黒のチノパンという格好の小柄な少女――鳥兜とりかぶとこならは甘ったるい声色で言った。媚びているわけではなくこれが地声らしい。

「先輩、あと何分くらいで着きますか?」

 先輩といわれた運転者の黒いヘルメットを被った若い男性――六乃鬼灯むのほうずきは答える。服装は灰色のジャケットに黒のところどころ縫った跡があるカーゴパンツを穿いている。こちらは普通の低い男性の声で、聞き取り安い口調で喋った。

「んー、もう少しだと思う。俺の記憶が正しければの話だけどな」

「……先輩。さっきの信号、やっぱり左折だったんじゃないですか?」

「いいや、このまま直進で合ってるみたいだぞ。ほら」

 左前方からホームセンターの看板が見えてきた。そこで先に現地入りしている百合子ゆりこと待ち合わせ、兼、こならの武器調達の為、一旦、ここを目指して走ってきた。

 左折してやたら広く閑散とした駐車上に入り、バイクを止める駐輪場を見つけ、そこにバイクを停めた。

 先にこならがバイクから降り、白いヘルメットを外す。その下に隠れていた素顔を晒らされる。小柄で顔立ちは幼いが、これでもれっきとした十七歳である。髪は肩に掛からないくらいの長さ、癖っ毛で全体的にウェーブがかかっている。

 隣でバイクの施錠を終え黒いヘルメットを外し、こちらも隠れていた素顔が見えた。精悍な顔立ちで、年は二十二歳、髪は耳にかかるくらいのばしているが、手入れとかは特に気にしていないらしく、少しボサボサだった。鬼灯はこならが被っていたヘルメットを受け取る。

 こならが言う。

「じゃあ買い物に行ってきますね。ついでに買ってきて欲しいものとかありますか?」

「コーヒーでも買ってきてくれ。あと百合子を見つけたらメールするから」

「あいあいさ~」

 そう言ってこならは、パタパタとホームセンターの中に入って行った。ガラス越しから見た店内には客らしき人はおらず、こちらも閑散としていた。残された鬼灯は、ホームセンターで待ち合わせをしている同僚の百合子がいないか、きょろきょろと辺りを見渡して探す。だが、そのような容姿の女性は見たらない。

「まだ着いていないのか」

 約束の時間よりも早く着いたのか、それとも外で待つのは暇だからホームセンターの中に入って、商品でも見て暇つぶしでもしているのか。鬼灯は携帯を取り出し時間とメールが来ていないか確認しようとした時、後ろから声をかけられた。

「私なら、もうとっくに着いているわよ?」

 鬼灯は声が聞こえた方に振り返る。そこには売り出されているログチェアに座っている見慣れた女性が座っていた。

 長いストレートの漆黒の髪、恐ろしく整った美顔、灰色のワンピースに黒のレギンスを着こなし、膝の上に落ち着いた色の手提げのバック、そいて、優雅に微笑んでいる有佐百合子ありさゆりこ(御年、二十四歳)が存在していた。

「なんだよ。いるなら早く声かけろよ」

 鬼灯は不機嫌そうに言った。

「邪魔しちゃったら悪いと思ってね。それよりあなた、いつの間にそんな大型バイクなんて買ったのよ?」

「ん? つい最近だけど」

「あなた、免許取ってからそんなに経ったのかしら? 確か、大型二輪って免許取得三年以上じゃないと、高速で二人乗りできないはずよねえ?」

「そうだが、こならが乗せろ乗せろ、騒ぐから乗せてやったんだよ。それと運転テクは大丈夫だ。大型の免許取ったのは一年前だが、前から乗り回してたからな」

 無免許でなと、さらっと言う。

「……ほんと、この男は鈍感ね」

 百合子は小さな声で呟いたが鬼灯には聞き取れなかったようだ。

「なんか言ったか? その前に、いつの間にそこにいた?」

 こならと話していた時はそのログチェアに誰も座ってなかったはず、と鬼灯は記憶を掘り返すが、絶対にいなかったと思う。いたらこならが真っ先に気づくはずだ。

 訊かれた百合子は笑った。

「気づかないならそれでいいわ。それよりも、どうせなら買うなら車の方を買いなさいよ。それなら私も乗れるじゃない?」

「嫌だね」

 車は走っている気がしないから嫌いだと鬼灯と口を尖らせる。

「うふふ、まあいいわ。こならちゃんの為にもねぇ?」

「こならの為って、なんだ?」

「別に。うふふ」

 鬼灯は百合子を訝しげに睨んでいたが、理解できそうもないし時間も食うから、早々に分からない、知らんと結論づけ本題へと移る。

「で、今回の魔女の情報はあるのか? どうせ早めに着て情報収集してたんだろ?」

 鬼灯の表情が変わる。百合子はめんどくさそうに、つらつらと機械的に述べていく。

「ええそうよ。今回、襲われて殺されたと思われる被害者は計十五人。すべて二週間以内に起こったそうよ。一昨日、見つかった方もいるそうよ。検死の結果はまだ出てないから、この中で何人が、どんな魔女に襲われたのかは特定できないけど、二週間で十五人は流石に多いし、今月に入って捕まった魔女はまだ一人だから、最高、三から四人くらいはいると覚悟した方がいいわね。私的にはそんなにいるとは考えられないけど、複数はいると思うわ」

「四人もいたら面倒だな。二週間で十五人も襲われるって、模倣の魔女の仕業も考えられないか? あの魔女なら、それくらい平気でやりかねないと思うんだが。ほら、ひかりさんとやり合った時の怪我を治すために襲ったとか」

「模倣の魔女と光がやり合ったのは三日前よ? その前に襲われた人もいるし、模倣の魔女が三日前に光と戦った場所から、ここまで歩きでくるのは、無理ではないけど、相当な時間がかかるわ。ここに来てから襲うのは時間的にも辻褄が合わない。それに、襲うくらいなら近場で済ませない?」

「うーん、じゃあ、魔女草ストライガだっけ? あいつらがやったんじゃないか?」

「その可能性は否めない。けど、あの魔女組織にいる魔女は、人を食べないって、あの魔女が断言しているから、これは普通の名無しの魔女がやったと考えた方がいいわね。それに、魔女草ストライガの魔女たちは、後から組織勧誘にくるのは毎回だし、もしかしたら、もう来てるかもしれないわ。さっさと終わらせないと長引くはいつも通りだけど」

 本当、たった一人で、自衛隊を壊滅させたの戦歴は伊達ではないわねと百合子が自虐的に言う。

「で、そいつらの能力は?」

「全員不明よ。そもそも魔女の数も分かってないのに、そんなことわかると思う?」

「それもそうだな。他の捕獲員は増援にくるのか? 魔女四人をこのメンツで捕獲するとか、魔女草ストライガの連中とやり合うのはキツいぞ?」

「今の時点では、まだ来ない事になっているわ。榊君も、いちりちゃんも、他のメンバーもこないわね。それにあのウザったい光は入院中で、何があろうがこないのよ! 私的に光が絶対に来ないのが心の底から嬉しくて、もう感極まっている状態なのよっ! もう一曲歌っちゃいそうなくらい」

「……光さん、誰も見舞いに来ないって怒ってたな……。その他は何かあるのか?」

「上からは特になし。さすがに魔女の数が多ければ、いつも通り増援が来るし、まだ捕まってない、名のある魔女や、サバドがでてきたなら、機関、全員で狩りに行く。まあ、いつも通りやれってことよ」

 大体の話を聞いた鬼灯は、こならに百合子に会った、さっき分かれた場所にいるとメールする。

 十数分後、こならが片手にレジ袋を持ちながらホームセンターから出て、鬼灯と百合子の元へと向かって来た。

「おまたせしました。え~と、あった。はい、先輩。ブラックで良かったですか?」

 こならはレジ袋から缶コーヒーを出して、鬼灯に渡す。鬼灯はありがとなといい、缶コーヒーを受け取った。

 その光景を見ていた百合子が感想を述べる。

「こならちゃんは、いつ見ても、ほんわりしていて、愛くるしいわね。見ていてとっても癒されるわ~」

「ありがとうございます。褒められると照れちゃいます……。えっと、百合子さんはお茶ですよね?」

 こならは再びレジ袋を漁り、ペットボトルのお茶を取り出して、百合子に渡した。

「ありがとう。こういう気遣いが、どこかの無愛想な誰かさんとは、本当に違うわよね? そう思わない? ねぇ?」

 百合子は鬼灯に嫌な視線を向け、同意を催促していたが、鬼灯はその視線に我関せず、缶コーヒーのプルトックを開けて飲んでいた。

 百合子がこならに今回の仕事の内容説明をし終えたところで、鬼灯が言った。

「どれ、気合い入れて仕事しますか」


 鬼灯、百合子、こなら。


 この三人は、政府機関、心欠落傷害捜査機関に属する心欠落傷害の少女を捕獲し、保護する捕獲員である。 

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