おしまいっ! Plunderwitch Angle 9/18 18:23
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「はぁ、はぁ、はぁ」
百合子は素っ裸で電柱に寄りかかっている。生えていた体毛はすべて焼けてなくなり、再生に伴い体のあちこちから無理矢理補ったせいで、余分すらないガリガリになった体が悲鳴をあげ、早く何かを食べなければ、即、理性を失い、近くにいる生き物、人を探して食べるかもしれない、そんな瀬戸際にいた。
「不覚だったわ」
あの時、苛ついて、後先考えずに首を切ってしまったのが間違いだった。まさか、前のめりに倒れてくるとは思いもしなかったのだ。百合子は倒れくる首を落とした死体を体で受け止めてしまい、思いもしなかったせいか慌てて、身動きが取れない内に雅樹に触れられて、燃やされた。
どうして燃えたはずの百合子が生き残っているのかというと、百合子の魔女の能力、切り取りで、燃えている全身の皮膚をかろうじて回復できる程度残して、うまく薄く、全身の皮膚を切り取って火ごと捨てたのだ。今その切り取った皮膚は燃え尽きて灰になっているだろう。そうやって一回死に、限界まで再生してできた新しい皮膚で、魔女としての命をつないでいる。折角手に入れた魔女にとっては必要ない心臓も、皮膚の再生の為、分解吸収され使われてしまった。
そのあと、近くに落ちてあった首なしの食べ物を一心不乱に食べたので、ある程度は回復出来たが、熱によるダメージが意外大きくかったせいか、食べ尽くしても、回復しきれない箇所もあり、無理矢理補おうと体は勝手にするため、このような骨と皮の体型になってしまったのだ。
「……本当に運が悪いわね」
すべての意味で呟いた。
すると前からつい先ほど、二時間前くらいに出合った二人組がやってきた。
「道化の魔女には、流石のお前も一杯食わされたな?」
「…………掘り返さないでよ。あんなに熱弁したのに全部、的外れって……。幻覚を見せられていたからって、あれはショックというか相当恥ずかしいんだから」
百合子は顔を地面から正面にあげた。そこには能力者の葛と政府の魔女のふきがいた。
「お子さまに、若い女の裸は目に毒だぞ?」
けらけらとふきが今がチャンスと精神的に弱っている葛をからかい、日頃のストレス発散をする。
「興味ないね。少なくとも今は」
葛は不機嫌に答え、そうかい、とふきはつまらないそうにした。
葛はニヤリと見下しながら、百合子に向かい合う。
「やあ、また会ったね?」
「…………」
「君、ここで死にたい?」
「…………いいえ」
百合子はキッパリと言った。
「なら僕の仕事を手伝って欲しいんだけど、無理かな? 手伝ってくれるなら、君が捕獲員なのに魔女っていうのは上に伏せて置いてあげるし、捕まえもしない。もちろん、永久にね」
「…………断ったらどうなるのかしら?」
「死ぬことはないけど、記憶を消されて、魔女収容所に永遠に入れられることは、確かだね」
葛は笑って言った。
「そう、なら手伝ってあげるわ。あんなとこに入れられるなんて冗談じゃない」
葛はむっとした。魔女収容所のことを、あんなところと罵られたからではない。
「なんだよ。もうちょっと渋ってよ。それじゃあ、呆気なさ過ぎてつまらないじゃないか」
百合子が仕返しとばかりにニヤリと笑い言った。
「何言っているのかしら? 世の中は、大抵、つまらないことだらけなのよ」
葛は確かにそうだねと言って笑みを浮かべた。百合子は苦しそうにうふふふと笑った。
「椿といい、杏といい、おかしな連中ばかり集まるんだ……?」
ため息をつきながら、ふきは、さっき買ってきた煙草を一本取り出して、不気味に微笑みあっている二人を横目に、いやいやそうな顔しながら吸うのだった。
人喰いたちは今日も踊る。
その終わりなき命が果てるまで。