ひとくいっ! Masaki Angle 9/18 17:42
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「あああああああああああああああああああああああっ!!」
あれ、何で僕は走っているんだっけ?
ああ、そうか、百合子さん燃やしたんだ。この悲鳴は百合子さんのか。あんなに強気だったのに案外、簡単に燃える物なんだな。
じゃあ、僕が抱きしめているものは?
首から下はないけど、確かに僕の愛した人だ。
僕は立ち止まった。ここまで来れば百合子さんは追いかけてこれはしない。追ってきたとしても、その前に燃え尽きる。
僕は優しく持っていたもの、愛した人の一部で、すべてが詰まっている部分を持ち上げ、僕と目線を合わせた。愛する人は百合子さんの魔女の能力によって、まだ意識があり、まだ死んでいない。だって、ほら涙を流している。
喉はあるのだか、発声するための多くの部分から切り離されてしまっていて、僕に必死に伝えようと話そうとしているのだが、声にならない。
だ、い、す、き、あ、い、し、て、い、る。
それをひたすら繰り返す。口の動きだけで伝えようと必死に動かす。
「珠奈、僕も大好きだよ」
僕は告白した。とても、卑怯な告白だった。
すると愛する人は笑って、
ご、め、ん、ね、あ、り、が、と、う。
「珠奈のおかげで、僕は、なんか……救われたよ」
ば、に、ら、さ、ん、を、ま、も、て、あ、げ、て、ね、わ、た、し、か、ら、の、お、ね、が、い。
ゆっくりと紡いだ、その耳に入ることはなかった言葉を頭の中、脳細胞に刻み込む。
そして、僕からキスをした。
長い、永遠に続いて欲しい、別れのキスだった。
すべてが終わってしまったとき、僕は彼女を胸に抱き、泣いた。
わんわんとみっともなく泣いた。
ここまで誰かを想って泣くなんて久しぶりだった。
姉を燃やしたときは自己嫌悪のようなものだったから、悔しがることも悲しいと思うこともなかった。
なんでこう、すれ違ったのか。
すべては僕のせいなのか。
自暴自棄になりそうだ。
でも、
でも最後に許してくれたのだ。
こんな僕を、
最低な僕を、
全てを知っても、
好きと言ってくれた。
なら、今度は僕の番だ。
彼女の最後の願いを叶えよう。
彼女にとって最後の願いは、自分の罪を償う為であるのだろう。
だから叶えてあげよう。
叶えられない彼女のために。
償えない僕の彼女のために。
そして僕が死んだあとに、また出会って、叶えたよって。
「お互いに恐れてたんだよ。きっと」
一つの悔いを残して、僕は、また懲りずに、償って、生きて、逝く。