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まじょがりっ!  作者: ハクアキ
第一章 Shall We Dance With Cannibalism?
43/121

ひとくいっ! Tamana Angle 9/18 17:37

誤字脱字などありましたら指摘お願いします。

 目の前で愚かな私に、百合子という、私の心臓を騙し取った魔女が、彼の過去をつらづらと、面白おかしく暴露していきます。

 私は耳を塞いでできるだけ聞かない用に善処しましたが、完全には防げず、指の間から呪怨の様に頭の中に入ってきます。彼は発狂し、頭をかきむしったり、頭をそこら中に打ちつけたりしているため、傷ついたおでこの皮膚から血が流れ、苦悶の表情をした顔に流れて、赤く染めていきました。

 彼の全貌を語り終えた魔女は彼に訊きました。

「実の姉とセックスしたときはどうだったの? 気持ちよかったの?」

 彼は唸りうずくまっていました。私はそんな地獄の真ん中をさまよっている彼を見ていることはできず、目を背けて泣いていました。

「懲りずにまた魔女を連れ込むなんて、どんだけ魔女フェチなのよ? あなた、×××は冷たい方がそそるの? ああ、そういうことね。あなたは死姦が好きなのよね? だから魔女でヤりたいわけね」

 彼は自分の首を絞め始めました。死にたい。死にたい。と叫びながら。

「しかも、こんな変態のあなたの為に、体を捧げてまで、尽くしてくれる彼女まで居るのに、一時の快楽に走るなんて、本当にゴミ屑よね? 彼女にヤりたいって言えば、生で中出しでも、どんな変態プレイでも、何でもしてくれたんじゃないの?」

 死にたい。死にたい。死にたい。と彼は連呼しています。本当に死んでしまいそうでした。

 私は彼をぎゅっと抱きしめ、首を絞めるのを止めさせました。

「だーから、イチャついてんじゃないわよ? そこの死体。それともダッチワイフの方が良いかしら? 彼好みのお人形さんになれたんだから、それだけで満足しなさいよねぇ」

 私は彼に言いました。

 お願いだから、死なないで、と涙声で言いました。

 私が彼の過去を知って嫌いになるはずはないと思っていました。でも、現実はもっと重圧で、それこそ頭をがんがん地面にぶつけていた彼のように、ものすごい衝撃な内容でした。嘘だと思いたかったのですが、彼の尋常じゃない反応からして本当にあったんだと思わされ、一瞬引いてしまったところもありました。

 でも逆に話してくれなかった理由も分かりました。こんな話、自分のことだと思ったら、絶対に誰にも話したくないし、分かり合って欲しくない。それに自分が犯した罪なんだから償わなければならない。背負わなければならない。そう思うに違いありません。

 腹を割ってこの話をして、万が一それで縁を切られたなら、それはそれで自分に対してのつらい罰になるでしょう。でも、それは辛すぎるから、誰にも話さずに抱え込んで隠して、一人で悩んで悔やんで、やっぱり教えない方が良いと損得勘定で彼は決めたのです。そうやって平凡でぬくい日常を守りたかったのでしょう。守るためなら、全部壊れるよりは、ちょっとだけ疑われても仕方がないと、本当を知られたくないと怯えながら彼は生きていたのです。

 彼は私との関係の為に言わなかった。それはどんなに大切にされていたか、十分に分かるものでした。

 でも私には、死なないで、以外何も言えません。言える口ではないのです。彼が魔女と寝たと勘違いして嫉妬して、騙されて心臓を奪われた愚かな私が彼に対して言える言葉なんて残っていません。

 すべて、自分の欲によって引き起こされた自分への罰。

 愛する人を救えない。資格がない。

 それが私から私への罰なのです。

「そこのダッチワイフは本当に邪魔ね。そろそろ魔法が解ける頃よ? さっさと死になさい」

 私は死ぬんだとあっさりと悟りました。

 漠然と黒い世界を想像しました。

 そこは暖かさも、冷たさも、明るいも、暗いも、寂しいも、幸福も、何も感じない世界であるんだろうなと妄想します。

 そして、彼に出逢うことも、考えることも、想うことも、できない世界に放りこまれるのでしょう。

 あたし、死ぬんだって。これは、罰なんだよね。きっと。そう呟きました。

 いまさら何をほざいているだろう。勝手に嫉妬して、あまつさえ天罰を受けたというのに、彼にすがりついて助けと言わんばかりに甘えているのです。そんな自分がクズみたいで、マンガとかでよく見る主人公とヒロインを仲を引き立てる為に、書かれた嫌な女みたいじゃないか、なんて嫌だと思っていても、離れたくない、ずっと私を掴んでいて欲しいと、頭の隅で騒ぎ、駄々捏ねている自分もいます。どんだけ傲慢な人間なんだろう、救いようがない、見捨てられても仕方がない、そんなゴミみたいだと思えてきました。

「二人とも死んでもらわないと、私が魔女だってバレちゃうのよ。困ったものね。ねえ、雅樹君。あなたが魔女に触れると、触られた魔女は燃えて死んじゃうのよねぇ? ならどうやって殺しましょうか? 発狂させて自殺に追い込むつもりだったんだけど、そこのダッチワイフが立ち治らせちゃったみたいだから」

 魔女は私たちに近づきながら、懐から黒光りの鉄の塊、思っていたよりも小さい拳銃を取り出しました。

 この魔女は、一応、これでも捕獲員なのだから、銃を持っていても何もおかしくはありません。

「これなら、あなたに触れられずに殺せるわ」

 小さな銃の銃口を彼の頭に向けます。後は引き金を引けば彼の生命活動は急停止します。

 私は震えながらその銃口の前に立ちました。こんなゴミでも壁くらいにはなるのです。

「邪魔よ」

 私は、ここで、そんなの撃って、殺したら、それこそ、あなたがしたってバレるんじゃないですか、と声が震えながら脅しました。

 魔女はせせら笑いながらいいました。

「うふふふふ。死体から銃で撃たれた跡が見つかってしまうなんて、そんなヘマはしないわ。だって私は強奪の魔女だもの。その跡の周りを切り取って奪えば気づかれないわ。残った死体は微塵切りにすればいいし、厄介な銃声は威嚇射撃だったって言うことにしましょう。なんせ私は魔女だと思われていないから、強奪の魔女が出たと言えば、信じてもらえるわね。だって現時点で本当にこうやって、実際にいるのだから。まあ、あとは信用の問題かしら。これでも無駄に媚び売っているわけじゃないわよ」

 退きなさい。と、私の額に銃口を当てました。

 私は震えていました。その震えは、この死に底ないが、何に怯えているんだか。最後の最後に命をかけて、愛する彼を守ってみせてみろと、自分自身に奮い立たされているように感じました。

 きっとそれは嘘でしょう。

 本当に怖いです。

 でも、そう思えて、守れるなら、私の本望なのかもしれません。

 言葉で伝えられないなら、命を張って伝えるくらいしか、私には残されいないのですから。

 それが私の彼に対する『愛』なのですから。

 

 私は、二発、撃つのはさすがに威嚇射撃にはならないですよね、と挑発しました。

 歯噛みして悔しがるかと思いました。

 でも、魔女は微笑みました。それはそれは楽しそうに――



「確かにそうかもしれないわ。でも、私が、何時、死に底ないの人形を撃ち殺す、って言ったの?」



 私の首が切り取られ、落ちました。



「あなたにはいくらでも触れられるのよ」



 盾にすらなれませんでした。

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