ひとくいっ! Masaki Angle 9/18 17:28
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僕は後ろから突然やってきた、珠奈の心臓を騙し取った百合子さんに向かって言った。
「なんで珠奈、彼女を騙したんですか?」
僕は、魔女になったはずの珠奈が、僕の能力で燃えない理由が分かった。
珠奈は魔女ではない。
心臓がなくても、魔女でなければ、ただの人であり、僕の能力では燃えることはない。
何かしらの能力で、心臓がなくても、その命を繋いでいるのだ。
そう、捕獲員の――僕と同じ、能力者として。
「あら、彼女が魔女になりたいと、私に頼んできたから、私の出きる限りを尽くしてしてあげた。それだけよ?」
百合子さんは微笑みながらいい、僕は怒りを露わにしながら言った。
「そもそも捕獲員は、人を殺す能力は持ってないはずだったんじゃないですか?」
百合子はせせら笑いながら言う。
「あなたみたいな異端者は別として、捕獲員、すべての先天性の能力者は、人を殺す能力は持つことはないとされているわ。そうなると、私みたいに殺せる能力を持った――殺さずに心臓を奪うも一応殺せる能力よね? そのような先天性の能力者というのはおかしい。まあ、あなたみたいなのもいるから、一概に決めつけられないだけれども、私の場合は、そういうことではなくて、ちゃんと理にかなっているのよ」
「それはなんですか? 人を殺せない能力でも、使い方次第では殺せるけど、自分が人を殺せないと思っているからできないという自己暗示ですか?」
「確かにそれもそうね。能力の応用しだいでは人をも殺せる、だけど知らず知らずのうちに自らの力をセーブいるため、相手を殺せない、てこともあるわ。私の知り合いにもそういう能力者の子がいるから、着目点としては良いと思うけど、私の場合は残念ながらそうじゃなのよ? もっとシンプルなものなの」
「じゃあ、なんですか?」
もったいぶるように百合子はうふふふと笑みを浮かべながら発した。
「私は捕獲員、兼、魔女なの。機関からは強奪の魔女と呼ばれているわ」
「…………え?」
捕獲員、兼、魔女?
「嘘じゃないわよ? それに魔女なら人を殺す能力を持っていても全然おかしくないでしょ? 捕獲員でも、元はただの人間なのよ。警察官も自衛隊も総理大臣も俳優も、役職を捨てれば、元は同じ人間のようにね。人で女の子なら、誰だって魔女にされてしまう資格があるの。私はそんな貧乏くじを引いちゃったんだけど。あと彼女の心臓を奪ったのは、私が人間として偽装するため。この前まで他の人の心臓を奪って私の中に移植して、今までなんとか騙してたんだけど、最近になって心臓が駄目になりそうだったから、新しい心臓が欲しくてねぇ。丁度よく魔女になりたいって、子供のように泣き喚いている彼女がいたから、有り難くもらったのよ。どうせ魔女になりたいなら、心臓なんて、一番いらないものでしょ?」
百合子は珠奈を憎しみを持った冷酷な目で睨みつける。
「それに自ら魔女になりたいと言っている人って、どうも好きになれないというのか、はっきりいって、大っ嫌いなのよね。私は好きで魔女になったわけじゃないし、こう魔女だってばれてしまわないように怯えながら生きているっていうのに、そんな軽率に、たかが、男に好かれたいと言う下らない理由で、魔女になりたいと懇願している日和見の女のことなんて、気持ちを共有できないし、分かりたくもないわ。まだ間に合う、考えられる時間も、選択権もいくらでもあるくせに、成りたがるところに怒りを覚えるわね。もういっそ、殺してしまいたいくらい」
「それなら諭すことだって、できるんじゃないかっ!? 魔女になっらこんなに辛いって、自体験を語ることだって」
怒りに任せて、僕は怒鳴って反論してしまった。
百合子さんは無言で僕を見ていた。
完璧に怒りに満ちて今にも喰い殺そうとしている魔女の視線だった。
「…………流石に今のは頭に来たわね。諭すくらいでどうにかなるなら、この世界はもっと平和で、戦争も詐欺も偽りも嘘もなんてありもしない、優しい世界になっているでしょうね? そんなの有り得ないでしょ? それに彼女みたいな奴はね、言うだけじゃあ何も変わらないのよ。怪我したり、傷ついたり、失ったり、痛い目みない限りは絶対に気づかないのよ。あなただってそうだったでしょ? それにあなたがその台詞を言ったとしても、説得力が全くないわ。そもそも、彼女がそうなってしまったのは、あなたのせいでしょ? あなた自身が、直接彼女にいってあげなければいけないのに、私まで巻き込むのはやめてほしいわ。彼女が魔女になりたいと言わなければ、私は何もしなかったのだから」
「……嘘だ」
「嘘じゃない。生きている人から心臓を奪うのも大変なのよ? 本当は他の魔女の食べ残しから心臓を奪おうと思っていたのよ」
百合子さんは怒気をはらませながら強い口調で僕に言った。
「雅樹君の台詞に頭にきたから、ちょっと腹いせしないと気が済まないわねぇ?」
楽しそうに不気味に笑い、言った。
「大好きなお姉ちゃんと何やったんだっけ?」
「っ!?」
シラレテイル。
アノカコヲ。
ケッシテシラレタクナイ、アノクロレキシヲ。
「知らないとでも思った? 私はあの場所に実際に居たのよ? その場には他に、相手の記憶を読める能力を持った捕獲員も居たの。だから、あなたから事情を聞かなかったのは、単にそっとしてあげようと気を使ったわけでもなく、聞かなくても正確な状況を知れた、ということなのよ。でも、大丈夫安心して、その場にいた捕獲員と機関の上部しか知らないから、漏れる心配はないわ」
ダメダッテ。
「うふふ、じゃあ、あなたの必死に守ってきた過去を暴露して虐めてあげる」
ヤメテクダサイオネガイシマスソレイガイノコドタッタラナンダッテシマスダカラソレヲタマナノマエデイウノハヤメテクダサイックツダッテナメマスカワリニシンゾウダッテアゲマスオモシロオカシクシニマスコレイガイノハズカシメナラナンダッテイイデスカラコレハホントウニヤメテエクダサイイヤダダメオネガイシマスカラホントウニヤメテホントホントウニナンデモココデセップクダッテシマスカラソノハラノナカニウデツッコンデナイゾウヒキズリダシテワラッテミセマスカラソノアトイキタママボクノナイゾウタベテモイイデスカラソレダケハヤメテクダサイカノジョニキカセナイデクダサイオネガイシマスヤメテクダサイヤメテイヤダホントニホントウニ
お願いだから、やめてください。
「全部聞いてくれたら許してあげるわ。ちゃんと聞いていなさいね? そこの彼女も、この男がした愚かな過去を」
そうして、僕は狂って、僕の過去を大切な人に聞かれた。
うん。死のう。