ひとくいっ! Hunters Angle 9/18 17:15
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「いい加減に、くたばれ」
鬼灯はばにらの至近距離まで瞬時につめ、右手に持った金槌をばにらの左肩めがけ、振り下ろした。
「嫌ダワ、痛ソウダシ」
ばにらは振り下ろされた右手首の掴んで止めて、
「ソレニ美味シソウ」
掴んだ右腕に噛みついた。
「くっ、」
噛みつかれた鬼灯の腕の肉は、ばにらの歯がどんどんめり込んで、肉を裂き、血がにじみ出てきた。
ばにらは、嬉しそうに肉から染み出た鬼灯の血液を堪能する。骨を噛み砕き、肉ごと引きちぎろうか、そのまま神経がつながっているこの状態で咀嚼しようか、楽しそうに迷い、そして動きを止めた瞬間に、ゴツッ、と首に重い衝撃が走った。
鬼灯が残った左手にある金槌を、ばにらの首、体からの神経が集中している所、めがけて振り下ろし、首の骨を粉砕したのだ。
驚いたばにらは噛みついていた鬼灯の腕から口が離れ、砕け散った首の骨が脊髄を切断したために、脳からの信号断たれた体は、自ら立つことができず、重力に従い、その場に倒れ、受け身もとれない為、顔面からアスファルトにぶつかった。
倒れ込んだばにらの頭を鬼灯がおもいっきり蹴り飛ばす。簡単にばにらの首がおかしな方向に曲がった。
ばにらはうつ伏せの状態で鬼灯を見上げていた。
その状態でニヤリと不気味に笑みを浮かべた。
「アリガトウ。オカゲデ一回死ネタワ」
「っ!?」
ばにらの首が元の位置に一瞬で戻り、回復した。
魔女は、自分の体が何らか怪我により、損傷し、生命活動を行えなくなった場合、自分の体の中に存在する物質をうまく利用して、再生と回復を行う。そして何事もなかったように体全体を怪我を一瞬で治ってしまうのだ。
途轍もなく便利な能力だが、それには欠点があり、体の中の物質が足りなくなれば回復できなくなってしまう。例えば、腕一本切り落とされて死んだとしても、残った体から腕一本分の材料がなければ、生き返る際に腕は生えてこない。バラバラに吹き飛たり、燃やされ続けたりしても回復が出来ない。すなわち、回復が追いつかない事になったら、つまりそれが魔女の死、である。
鬼灯の両足首が両手で掴まれ、ばにらはその足を勢いをつけて自分の方へと引っ張った。
「ぐっ!!」
鬼灯はバランスを崩して尻餅をつくように倒れ、痛みに顔をしかめる。
「アハッ」
ばにらは笑って、すぐに足から手を離し、鬼灯に馬乗りになり、首を絞めようと両手を首にかけて、首を折るように締めた。ぎりぎりと首を絞める音がする。
鬼灯は振り払うように左手に持った金槌をばにらの右頬に振った。ぶつかったばにらの右頬はめり込み、陥没。口から溢れた血と何本かの根本から折れた奥歯が左方向に飛び散る。原型を止めないばにらの顔の口からは、血と唾液が混ざった混合液が溢れて、鬼灯の服にジュースをこぼしたように服を赤黒く汚した。ばにらに今衝撃によって隙ができる。さらに鬼灯は金槌を振りあげ追撃した。金槌でのアッパーは、ばにらの顎を砕き、輪郭をつぶした。さらに上下の前歯が歯茎にめり込みさらに出血せ、上空に血と折れた前歯が勢いよく舞う。勢いがついて、ばにらは後ろ向きに倒れていった。
舞った血が辺りに大粒で少量の液体とカルシウムで出来た小石を降らし、斑に赤く汚す。
「はぁ、はぁ、ざまぁみろ」
鬼灯が上半身だけ起き上がり、生き絶え絶えに罵った。
「二回目。ダカラ、ソウイウ物理的攻撃ハ効キヅライッテ、分カッテイルワヨネ?」
回復したばにらは、右足を鬼灯の首にかけ、あとはアスファルトの硬い道路に頭をたたきつけた。
鬼灯は叩きつけられた瞬間に、ガッと、うめき声を上げて、痙攣し、動かなくなった。叩きつけられた箇所から血がでて、髪を赤くぬめらせる。
「大丈夫ヨ? チョットダケ脳震盪デ、眠ッテテモラウカラ」
ばにらはゆっくりと上半身を上げて、頭から血を流している鬼灯の姿をどこから食べようか見回し、自分の血と涎が混じった液を口から垂らしながら、先に鬼灯の中につまっているものを食べようと手を伸ばした。まず、いろいろと剥がさないと中は食べれない。服とか、皮膚とか、肋骨とか。
だが、それぐらいでは鬼灯の意識は落ちてはくれなかった。
「……生憎、俺は、能力せいでな、意識は、飛んでもすぐ戻るんだよ……くそっ」
鬼灯の能力は、回復速度が異常なまでに早いというものだ。その能力は魔女の回復能力に似ているが、実際は違うものである。鬼灯の場合、魔女と違って一撃で死ぬくらいの大きな怪我をしたら、普通の人と同じで死ぬのだが、切り傷、打撲、捻挫、ここでは関係の無いものだが、風邪もインフルエンザも驚くべき早さで治ってしまうのだ。さっきばにらに噛まれ、くっきりと噛み痕が残っていた右腕も、すでに治りきっている。そして気を失ってもすぐに回復し、意識を取り戻すことができたのだ。
「ここで死ねれば、良かったかもしれないな」
アスファルトに叩きつけ、とどめ刺せたと油断したばにらの両目、めがけ、鬼灯の左手の人差し指と中指が迫った。
ばにらは、本能的に攻撃を避けることしなくても、受けた怪我はすぐに回復するからなのか、二回生き返ったので判断能力が落ちているせいなのか、見当も付かないが、反射的に瞼を閉じるだけのもっとも自然で、本能的な防御だった。
鬼灯の指は、軽々とばにらの瞼の間から進入し、眼球を貫いた。
「アァァァァァァァァァァッ!?」
鬼灯は指を一気に引き抜く。粒状で透明な物が一緒にこぼれ落ちた。さらにつぶれた眼球から血と透明のゼリー状透明な液体がドロッと吐き出てくる。ばにらは顔面を手で覆い、激痛に悶え苦しんだ。これだけでは魔女の体は死ねない。
鬼灯は左足の裏で、まだのっかっているばにらの腹部を蹴飛ばした。蹴飛ばされたばにらは転がり、鬼灯から二~三メートルくらい離れた地面に這い蹲りながら、目と腹部の痛みに悶えている。
「……畜生、嫌なこと思い出させやがって」
鬼灯はゆっくりと立ち上がり、落とした金槌を探し、見つけ、ゆっくり歩きながら、金槌を拾う。
「なあ、なんで頭、狙わなかった知っているか? 殺すには確実な体の部位なのに」
鬼灯はゆっくりと、まだ両目が治らないばにらの元へと歩いていく。さすがの魔女でも死なない限りすぐには治らない。
「それはなあ、魔女は死んだら、怪我した箇所は治すため、足りない物を他の部位から補って治すだろ?」
ばにらは自分の首の半分を片腕でちぎろうと力を加える。そうしなければ死ねず、早くしなければ鬼灯に殺されてしまう。
「その際、その部位を形作る細胞を新しく作って再生するらしいんだ。頭割られて脳味噌吹き出して死んだら、そのなくなった脳細胞が新しく出来て再生するそうだ」
ついに、ちぎれた。ばにらは、また死んだ。そして、待ちに待った、なくなった部分、目とちぎった首が再生、修復されていく。
「そうすると吹き飛んだ脳細胞に保存されていた記憶がなくなる。そりゃあ当たり前だけどな。一応、魔女にも、元は人だったんだから人権はある。だから記憶を無くすことは死と同じだ。法でも魔女の死はそう定義され、同時に頭への攻撃はタブーになっている。捕獲員が魔女を狩るときに首切り落とすのは、一番ベターかつ安全な方法だからだ。そうすれば首がなくなった魔女は復活できないし、人を襲うことなく簡単に運搬できる。あとで首と体をくっつければ、ちゃんと元通り生き返る。記憶もそのままな」
ばにらの新しい、内出血して赤く染まった目が鬼灯を探した。
見つけた。
「俺は機関に仕えているから、反することはできないし、破れば法律によって裁かれる。だけど、それでも、反しても、破っても――――」
鬼灯は金槌を高く振り上げていた、姿を。
「許したくないものが俺にはあるんだよ」
鬼灯がばにらの頭に向かって下した鉄槌は、ばにらの目でとらえることができた。
だが、ばにらは、もう逃げられない、と悟った。
ゴスッ。
陥没した。