うたかたっ! Masaki Angle 9/18 16:28
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やっと僕の目の前には、愛しのマンションがまるで僕を迎えるようにそびえ立っている。ようやく僕はここまで戻ってくることができた。
そういえば携帯電話という、かなり便利な機械があるのだから、それを使えばよかったじゃないかと、彷徨っている内に大通りにたどり着いてから気づいたのだった。さっそく携帯を出し、電源を入れようとしたが、残念なことに電池が切れていた。日頃から携帯なんて使わないのが今ここで仇となった。どうせ大通りに出れたから必要なかったんだけどね。
そうして、ここまで着いたのだった。
早く自分の部屋の中の現状を確認しなければと、僕は車が何台か停めてある駐車場を抜け、正面の玄関へと向かう。ここからは七階の自分の部屋の戸が見えるのだが、その手前には流石に珠奈はいなかった。部屋の中で待っているのだろう。
そう言えば、僕は珠奈の前から逃げたんだ……。トラウマだから仕方がないんだ、なんて言えるわけない。珠奈になんていったら良いのかわからなかった。もういい。悩んでても仕方がない。この際、僕の過去を言ってしまおう。そして、告白もしよう。それでも嫌といわれるならしかたがない。ただ、誤解だけを解くことができれば――なんて考えていた矢先に。
ガサッ。
マンションの周りに植えられている木の茂みの陰から何か物音がした。きっと犬か猫だろうと、いつもなら思っただろう。
その茂みから、二人分の足が見えた。合計四本。片方は靴を履いていて、もう片方は靴を履いていない。裸足だ。
ここまでだったら、本当にここまでだったら、僕は、何も、それ以上見ずに、そそくさと何もなかったように目を反らして、立ち去っただろう。人の振り見て我が振り直せ。というか、これ見る随分前に反省どころか、罪悪感によって自殺しかけたけど。
僕は気になった部分があった。だって、そこは僕の部屋の真下じゃないか。何かしら僕に関係しているじゃないかと不安になる。
イチャついているくらいだったらまだマシだ。
くちゃ。くちゃ。くちゃ。
うわ、淫猥な音がする。やっぱり、イチャついているだけ………………。
だけど、僕は気になった。嫌な予感しかしなかった。
くちゃ。くちゃ。くちゃ。くちゃ。くちゃ。くちゃ。くちゃ。くちゃ。くちゃ。くちゃ。くちゃ。くちゃ。くちゃ。くちゃ。くちゃ。くちゃ。くちゃ。くちゃ。くちゃ。くちゃ。くちゃ。くちゃ。くちゃ。くちゃ。くちゃ。
僕は、意を決して、気の茂みに隠れその行為を行っている二人組を見た。
「ねぇ、ばにらさん。そこで、何しているの?」
ごっくん。
僕はさっきまで何かを咀嚼し、呑み込んだ、口元を真っ赤に染めた彼女――魔女に声をかけた。なぜか首には針金で作られた首輪をしている。
「ン?」
背を向けていた彼女は僕の方に振り返ってとぼけるように、僕をおいしそうに見つめてた。その視線は冷たく、人としてみていない、寧ろ食べ物がのこのことやってきたように見ているようだった。
「……」
彼女はもう一度、今まで食べていた物を見た。そして、嘆息。
「また、やっちゃった……」
食べていた物、まだ中学生か高校生くらい年で、くせっ毛の幼い顔立ち女の子だった。表情は瞼をぎゅっとつぶって痛みに耐えて絶命したせいか苦しそうなのまま固まり、目の回りは涙の跡が残って、口はあーんと開いていた。きっと叫ばなれないように口に手を突っ込まれていたのだろう。その女の子は上半身は服を破られて、その服の下に隠されている女性特有のふくよかな胸がある一帯の皮膚は、全て梱包を剥がすように剥がされ、次に存在する、肺や心臓を守る肋骨は、食べやすいようにへし折られ、そこら辺に無造作に転がっていた。そこに詰まっているはずの肺、気管、心臓、食道、胃、あとは黒ずんでいて分からないが、普通の人間にとって大事な部分はなくなって空っぽになり、その器を注いだように血のダムが出来ている。その下の腸など器官は、これから食べようとしていたため、手を着けておらず、そのダムに濃いトマトスープ浮かぶの具のように浸かっていた。
なくなった部分は、
「……けぷっ」
彼女が全部、美味しく、頂いちゃいました。
僕は血塗れのばにらさんを部屋に連れ戻さずに、その場からばにらさんと共に逃げることにした。
もうどこに逃げる場所なんて在りもしないのに。