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まじょがりっ!  作者: ハクアキ
第一章 Shall We Dance With Cannibalism?
3/121

あんぐらっ! Masaki Angle 9/18 10:29

誤字脱字などありましたら指摘お願いします。

 ここで唐突だが魔女の説明をしよう。 


 魔女。

 病名、心欠落障害。

 サバドと名乗る、正体不明の何者かに心臓を奪われてしまった少女たちのことを差す。

 心臓が奪われたからといっても、死ぬわけではなく、どうしてか心臓が欠落したままで、生命を維持することでき、平然と生きていられる、それが、魔女。

 心臓を奪われた代償としてなのか、回復能力が高く、腕を切り落とされても、頭を吹き飛ばされても再生し、一般的な人間が一撃で死ぬ外傷でも、すぐに生き返ることもできるらしい。

 だが、ここまでだったら、ただの怪奇超上現象として受け止められ、哀れみの対象か、もしくは羨ましがられる存在に成り得ただろう。

 だが、神様は試練を与えるというのだろうか。とある罰を与えた。

 心臓が無いのに生きていられる対価に、魔女は生きていた物を食べなければ生きていけない。

 生きていた物、つまり、生物の生肉だ。

 魔女はそのままの調理されなてない、魚類、両性類、爬虫類、鳥類、哺乳類の生肉しか、体が受け付けなくなる。それ以外は食べてもすぐに戻してしまう体質に作り替えられてしまうそうだ。

 魔女が空腹になると、命ある物と同じ摂理で、当たり前に死んでしまう。だが、ある一定の時間、食べない期間が続くと、飢えによって理性を失い、見境無く生きている物を襲って食べようとする。獲物が見つかるまで、もしくは自分の命がつきるまで徘徊するのだ。


 対外、腐るほど、そこら中にいる人間という生き物が襲われてしまうのだが。

 

 それだけでは魔女とは呼ばれることはない。それだけならもっと他の代名詞、ゾンビとか呼ばれたはずだ。

 この人喰いが魔女と呼ばれる由縁は、文字通り、魔法――超能力が使えるようになるからだ。

 政府機関である、心欠落障害捜査機関の捕獲員のような先天的な能力者も実際にいる。国、世界でも、超能力を持つ人間がいることを公式に認めため、にわかに信じ難いが、そういうあり得もしないことをやれてしまう、起こせてしまう者がこの世界にいるのだ。

 それなら捕獲員などの能力者と魔女は本質的には、ほとんど同じで、捕獲員がただ政府公認というラベルが張られているだけであり、魔女には牛や豚、鳥のような不要になった家畜を食わせて飼い慣らせば、捕獲員とほとんど変わりなく、物騒で揶揄的な名称をつけなくてもいいじゃないか? と思うところだが、捕獲員、先天性の能力者のほとんどの能力は、治癒や回復、捜索――大ざっぱに言えば攻撃系ではない能力、要するに、非攻撃型の能力を持つ能力者しか確認されていない。それに対して、魔女が持つ能力は、攻撃特化の、殺傷能力特大の桁外れの能力を持つのだ。

 ゆえに魔女。

 時に鬼とも言われるのだが、こちらの名称はあまり使われていない。たぶん差別的に聞こえるからなのだろうか。どちらにせよ変わりないように聞こえるのだが。

 研究者の推論では、先天性の能力者の能力が治癒系が多いのは、単に己を守るためで特化したのであると言われ、魔女が物騒な能力を持つのは、楽に獲物である生物を狩れるために進化したようなもので、いわば蛇や蜘蛛や蠍が毒を持つのと同じ理由だといわれている。


 そういわれ続けているのにも関わらず、魔女=キチガイのレッテルは張られたままで、それが剥がされたことはない。兵器や武器が自分たちを守るべき道具ではなく、人を殺すための道具でしかないと、忌み嫌われているように、世間一般では、魔女は人を殺す超能力が使える人喰いの狂った少女と思われて恐れられている。

 

 そんな魔女たちは、ほとんどが十代の青春のど真ん中を生きる生き物だ。異性と恋したり、友情を確かめ合ったり、夢を叶えるために努力したり、世界を知ったりする。そんな人間形成と社会を生き抜くための大切な期間を生きている女の子たちだ。

 そして、魔女にされた彼女たちは、人生の中でも重要な大部分の青春を謳歌できずに、社会のルール、秩序の為に食い殺されてしまう、か弱い存在でもあったのだった。


[9月18日 10時29分]


雅樹まさきっ! 聞いたっ!? ここら辺で魔女がまた出て、人を襲って食べたんだってっ! これで五人目だよっ!」

 僕が戸を開けると、青い空と七階から一望できる街並をバックに、幼なじみの熊崎珠奈くまざきたまながいた。服装は平日にも関わらず、いつもの制服ではなく、チェックのチュニックに赤いカーディガン、ブラウンのショートパンツの下に黒いタイツを御召しになっていやがる。肩からは最近買ったと言っていた灰色のショルダーバッグがあった。それに対して、僕は長袖の黒のTシャツにジーパンというラフな格好だった。そして開けるや否や、今日のトップニュースを知っているのか訊いてきた。

「ああ、聞いた聞いた。昨日、帰ってきてからすぐに回覧版回っていたし」

 僕は素っ気なく答える。

 人が殺されたっていうのに、こうも流行の推理小説や、昨日放送していた連続ドラマを見たか? みたいに言って、うんうん、みたみた、おもしろかった、つまんなかったとか、声を弾ませて返すのはおかしいじゃないかと思う。

 確かに、人との会話で、相手の話に乗って会話を弾ませることは重要だと日々の日常で痛感するが、このような暗い、しかもノンフィクションの話題で、ブラックジョークのように盛り上がるのは、なんだか、死んだ人を見せ物にして楽しんでいるみたいで、どうも僕はそういう野次馬気分にはなれない。なりたいとは一切思わないが。

「ていうか珠奈、今日は魔女がこの近くいるからって流石に生徒の安全のために自宅学習になってたんじゃなかったっけ?」

 僕と珠奈が通っている高校は、今日は生徒の安全のため臨時休校になっている。この周辺の小中高校も臨時休校に同じ理由でなってるはずだ。本当の理由は、魔女になった子に関しての個人情報はすべて規制されているはずにも関わらず、視聴率稼ぎのネタを探し回っているマスコミ関係が虱潰しに、この周辺の学校に押し寄せ、引きこもっているような生徒がいないか直接聞いたり、学校周辺に居座り、直接生徒から情報を引き出して手に入れようとする、モラルに欠けた(実際はそういう手のネタにしか興味のない視聴者だと僕は思うのだが)記者への対応に、学校職員全員が忙殺されるからだ。

「うん。そうだよ」

 珠奈は笑顔で返事を返した。知っていて家までくるのか、こいつは。

 せっかくの宿題のない休みがあるんだから、真面目に自宅学習しろよ。試験まで一ヶ月くらいあるけど、お前はいつも赤点ギリギリなんだから、早めに対策しろっていっつも言っているじゃないか。

 まあ、心の叫びはここまでとして、僕は頭を抱えそうになった。

「……何で、僕の家に来たの?」たぶん暇だからという理由で来たと思うのだが一応聞いてみた。

「おとーさんは会社、おかーさんはパートに、いつも通り働きに行って家にいないから、暇だから来ちゃいました」

 珠奈は追撃するようにいった。当たったよ、と相対するように僕はあきれかえった。

 ここ周辺には食事を終えた魔女が彷徨いていて、それを政府機関(詳しい名称は忘れた)の捕獲員やらその魔女を捕らえるべく、この街に集まってくる。つまり、世界で一番平和とうたわれているこの国の中で、この街が一番危険な場所になるということだ。

 実際、魔女は食事を終えたばかり(便乗した模倣犯の可能性はないらしい)。だからすぐには人を襲わない可能性が高いので、今は安全なのかもしれない。だが、捕獲員の魔女捕獲のとばっちりを食らう可能性も少なからずある。警察も魔女捕獲のために拳銃を発砲して(そうしないと戦えない)対応するのだ。

 前に、警察が今にも人を襲いそうな魔女に向けて発砲(威嚇射撃は魔女に対して全く効果はないため)して、見事に襲われそうになった人に当たった(しかも、当たってしまった人は残念ながら魔女に連れ去られ、のちに無惨な姿で発見された)こともあったり、自衛隊を出陣させたが、たった一人の魔女に壊滅させられるという、お国にとってとても痛い事件もあったりと、魔女に対しての黒歴史がたくさんある。

 そんな何が起こるか分からない、何が起こってもおかしくない状態である。だから、今が絶対に安全とは言い切れない。

 この状態での一番の安全策は、家に引きこもっていることで、少なくとも、外にいるよりは魔女に襲われす確率は少ない。それは、魔女が家の中に入ってまで襲って来た事例は少ないからだ。

 その理由としては、腹が減っている魔女は、基本理性を失っているため、家の中に生き物がいるという考えが思いつかず、自然に家の中にいる人という生き物より、外にいる生き物の方が圧倒的に多く目に付きやすいのと捕まえやすいため、野生動物、外にいる飼い犬猫を食べらるからだ。魔女が出た地域では、まず先に飼い犬や猫、カラスの野生動物が食い殺されることがよくある。田舎だと熊、猪、鹿、狸などの大型の野生動物が多いから、そちらが先に食べられる為なのか、人への被害は少ないらしい。

 それでも襲われるの人は、逆に立ち向かう人(捕獲員、警察、自衛隊)と、魔女がここ周辺にいるにも関わらずにこうやって人の家に遊びに来るような、己の安全管理に無頓着な奴だ。ちなみに被害者で一番多いのは魔女の身内だ。理由は匿う際に近くにいるから。

 そんな身の安全よりも暇をつぶすことを最優先する命知らずは僕の目の前でへらへらと笑っていた。

「と、言うわけで、雅樹のお宅拝見と行きますか?」

「どう言うわけだよ。そもそも何回も来てるだろ」

 僕は闖入者、もといい、命知らず――じゃなかった、珠奈の進入を拒んだ。

「むむ、さては、朝からえっちな本 or AVでお楽しみ中で、まだ片づけていないのかな? ………………っ!? そそそそそそそれ、じゃあ、雅樹の、このっ、このっ、の手は、雅樹のアアア、アアア、レを、もしや、せ―――汚ないっ! 触らないでよっ! この変態っ!」

「………………」

 バタンッ。ガチャッ。

「うあぁっ! ジョークだってばぁっ! 拗ねないでよぉっ! 閉め出さないでぇっ! お願いだからぁっ!」

 そんな思春期真っ最中、脳内桃色の女子高生の声に耳を傾けることなく、僕はいそいそと、部屋に向かい、テレビの下の棚の上においてある写真を絶対に見つからないところに隠した。断じて、その手の写真ではない。

 見せたくない物を隠したところで、問題の女子高生をどうにかしなければならない。部屋の前で朝から騒がれていても困る。隣近所に変な誤解をされたくないからだ。仕方がなく玄関の方へと向かった。僕だって女の子を閉め出すほど鬼畜では――

「………………まさか……、本当に……、やってたの……? あ。あたし、ちょっと用事を思い出したから――」

 よし、さっさと部屋の中に入れよう。

 珠奈は、変な臭いがするところには入りたくないと、騒ぎ、駄々こねて逃げようとしていたが、僕は、無理矢理、自分の無実を証明するために、珠奈を部屋の中に連れ込んだのだった。

 本当に、隣近所に誤解されそう……。

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