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まじょがりっ!  作者: ハクアキ
第一章 Shall We Dance With Cannibalism?
17/121

まじないっ! Hunters Angle 9/18 14:13

誤字脱字などありましたら指摘お願いします。

 こならは、最近不登校になった女の子の家のインターフォンの呼び鈴を押した。ピンポーンと当たり前に電子音が鳴る。その近くにレンズは見あたらず、別アングルで見られている可能性もあるなと考えたが、流石に鬼灯までは映らないか、と思いこむことにした。

 しばらくして、インターフォンから女性の声がした。きっと不登校になった女の子の母親だろう。

「はい、どちら様でしょうか?」

「わたし、楓さんと同じクラスで近くに住んでいるの三谷と言います。楓さんの具合を伺いに来たのと、学校で配布されたプリント類を渡しに来たのですが、楓さんはいらっしゃいますか?」

 こならは差し障りのないような口調で話す。

「わざわざこんな時に来るなんて、先生に早く渡すように頼まれたの?」

 人喰いの魔女がまだ彷徨いてるのに、一人で来るのはおかしいと思っているだろう。こならとしては、昨日もプリントを渡しに寄ってくれた子がいるんだけどや、いつもプリントを持ってきてくれる子と違うなどの矛盾が生じないか緊張していたのだが、それはなかったので心の中でほっと胸をなで下ろしながら話し続ける。

「ええ。家も近いので、プリントや宿題等をほとぼりが冷めてから渡してこいと担任の先生に言われたんですが、先ほど親に見つかって、大事な進路関係のプリントもあるでしょうから早めに渡してきなさいと、どやされまして」

 こならは世間話風に答えていく。相手は話しやすいと思ったのだろうか、最初は疑っていたようだったが、柔らかい口調になっていく。

「それはご苦労様ねえ。楓は熱がなかなか下がらなくてね。今、自分の部屋で寝ているのよ」

 

 こう言えば、不登校の我が子に会わせない為の自然な口実だろう。

 染ってしまうから、を理由にして直接合わせないために。


 それは、その我が子が、人ならば、の話だが。 


「へえ、自分の部屋で寝ている、と」

 こならは不敵に笑みを浮かべた。掛かったと心の中で思う。

「え? なに? えっ? どうしたの?」

 インターフォンの向こう側では、自分が何か変なことを言ったのだろうか、急に雰囲気が変わった娘の同級生に慌てふためいている声が聞こえる。

「つまり、楓さんは家の中にいるんですね?」

 こならはとどめと言わんばかりに確認を取った。

「っ!」

 さすがに相手もこの時点で気づいたようだ。

「あ、念のためニュースでよく流れているんで、知っていると思いますが、最大の特長三つは、超能力が使える、人を食べる、そして、心臓がないです。その他にも色々ありまして、代表的なのは、」


 

「体温がないことなんですよ?」



 今、自分が話している相手が、娘の同級生ではないことを。

 そして、自分が匿っている娘を狩りに来た、正義と烙印された、悪魔だということを。

「せんぱ~い、中にもう一人、人はいますか?」

 インターフォンに拾えるくらい、大きな声でこならは鬼灯に訊いた。

 陰からサーモグラフィらしきゴーグルつけた鬼灯が出てきた。その家全体を見回す。

「立っている人間が二人。一人は間違いなく女性、もう一人は体のがたいからして男性だな。あと」


 

「等身大の人型で、動いている不自然な人形が一つ、家の中にあるな」



「逃げてっ! 楓っ!」

 インターフォンと家の中から女性の叫ぶ声がして、家の裏から誰かが走って逃げる音がする。魔女が家の裏側の勝手口から逃げていったのだろう。

「これで確実ですね」

 こならがいい、後ろから鬼灯がゴーグルを外しながら、こならの隣に近付いてくる。

「これ、まだ喋れると思う?」

「いけるんじゃないでしょうか?」

 こならに代わり鬼灯が魔女の両親に、

「それじゃあ、あーあー、聞こえてますか? 聞こえてなくてもいいですが。私たちは心欠落障害調査機関の捕獲員です。あなた方の娘さんは残念ながら心欠落障害の疑いがあります。匿まっている場合、速やかに娘さんの身柄をこちらに渡さないと法律で罰せられるかもしれないので、ご注意ください。あと、私たちの行動を妨害したら、こっちは確実に公務執行妨害になるので気をつけてください」

 そう建前を言ったところで、こならが口を挟む。

「それにしてもこんな事しなくても、普通に乗り込めばよかったじゃないですか? わたしの能力もあてにしてくださいよ」

「一応確認しなければ駄目だろ?」

 こならの能力は、近距離にいる生物の心臓の鼓動を感知できるという物だ。こなら曰く、壁があろうが、防音壁があろうが、何があろうが鼓動だけが音として聞こえ、心臓がない魔女の場合は一定になり続けるノイズのような音がするらしい。そのノイズが聞こえた時点で、魔女が近くにいることとわかるのだが、正確な位置までは特定出来ないため、隣家から聞こえていたとか、家の間に隠れてたなどケースだと、関係のない家に押し掛け、赤の他人まで巻き込んでしまう可能性がある。その間違いを防ぐために鬼灯は、このような鎌かけをして、魔女を炙り出し、確実に引きずり出す方法をとっている。

「それにしても、このサーモグラフィで家の中、透視できる思ってんだな。家が日光に熱せられて、壁自体の温度が上昇したら見えなくなると思うんだが。その辺の原理はさっぱりだし、使ったこともないから、どうだか知らないけど」

 鬼灯はゴーグルを指にひっかけてぐるぐる回している。ちなみにこのゴーグルは、サーモグラフィなんて仰々しい機能などは一切ない。只のハッタリ用にいつも持ち歩いているものだ。

 国から機関へと毎年それなりの金額の予算が下りるのだが、それらは捕獲員の部署ではなく、魔女を元の人間に戻すかの研究の為の費用、魔女収容所の維持、増築費用、魔女に襲われた被害者の遺族と魔女になった子の親族への補助金の三つに根こそぎ持っていかれるため、結果、捕獲員の装備は安いものになっているのだ。歳のわりには少し高めの給料を渡すから、武器は自分たちでどうにかしろ、ということらしい。

「先輩、早く追わないと逃げられますよ?」

「筋力強化とか幻術たぐいの厄介な能力はではなさそうだから、すぐに追いつくさ。それにこっちには、バイクもある。あと、この人たちから、何人襲ったか聞かないとな」

 そう親指で家を指した鬼灯は、こならと一緒に、魔女が匿われていた家にいる二人から事情を聴くことにした。

 それから、魔女を追っても十分間に合うだろう、と鬼灯は思った。

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