まじないっ! Hunters Angle 9/18 13:49
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「先輩、どうですか? これ似合いますか?」
赤いリボン、紺のブレザーの下に白地のブラウス、チェックのプリーツスカート。鬼灯は着替えたこならを見て言った。
「お前の制服姿ってみたことないから新鮮だな。似合っているぞ」
「えへへへ。嬉しいです」
借りてきた制服に着替えたこならは、鬼灯に似合うと言われて嬉しそうに笑った。
鬼灯とこならは、最近不登校になった女子生徒の自宅へと向う途中、こならがその不登校になった女子生徒が通っている学校の制服に着替えるために、公園の公衆トイレに寄って着替えた。
こならは、何んでこんなところで着替えさせるのかと不満を鬼灯にぶつけ、鬼灯はコンビニとか服屋とかだと怪しまれるだろと言い返した。さらにこならはそれなら車とかホテルとかあるでしょと突っ込んだ。鬼灯は一瞬、不埒な所を考えてしまい、顔には出さずに自己嫌悪していたり、色々あって今に至る。
こならは嬉しそうに自分が着ている制服を見ている。捕獲員の中にも高校に通いながら仕事をしている人も少なくないが、こならは色々な事情があって高校に通ってはおらず、捕獲員の仕事をしているので、高校の制服を着るのは初めてだったらしい。
「スカートの丈はもっと上げた方がいいですか? どのぐらいの丈が丁度いいのか、借りたときに訊けば良かったですね」
鬼灯はこならが穿いているスカート方に目線を下げる。十分短いでは? と鬼灯は思う。
「学級委員長風で乗り込むんだから、逆にもっと下げた方がいいじゃないか?」
偏見だけどと付け足した。
「これ以上は下げられませんよ?」
「なら無理に上げ下げしないで普通に着こなせば大丈夫だから。寧ろ、お前の口の巧さと演技によって成功するかに掛かっているんだから」
そういい鬼灯は携帯を取り出して操作し、ここ周辺の地図を出す。
「不登校の子の家の住所、教えてくれ」
「えーと、確か、4丁目6番地の12ですね。先輩、一回言ったのに忘れたんですか?」
「いや、確認のために訊いただけ」
こならに確認のために訊いた住所を打ち込み、この公園から不登校の女の子の家までのルートを決める。土地勘もないから大きい道路に沿って行くか。こればかりは目立っても仕方がないなと鬼灯は思った。
「服はバイクの収納の所でもに入れておけ」
「はいはーい」
こならはバイクの収納スペースにさっきまで着ていた服を入れた紙袋をしまった。その間に鬼灯は、百合子にそろそろ戻ってこいとメールを打つ。鬼灯とこなら、二人だけで魔女一人を捕まえるのには苦労はしないのだが、後始末に時間が掛かるので、厄介な後始末を今回あまり役に立ってない百合子に押しつけようと企んでいた。
「ある程度近くまではバイクで行って、あとは徒歩で向かうからな」
「了解です。バイクはどこに止めるんですか?」
「止めないで、押していくんだよ」
「それなら最後まで乗った方がいいのでは?」
「どこの高校生の学級委員長が、無免許で大型バイクに跨り、不登校の子の家に訪問するんだよ? 思いっきり怪しまれるぞ?」
「確かにそうかもしれません。ですが、そこは敢えてそこはやりましょう! 熱血学園モノっぽくて、一般的に受けが良いと思いますっ!」
「ドラマ的にだろ、それ? バカなこと言ってないで、さっさと行くぞ」
「はーい」
鬼灯はヘルメットを被ってバイクに跨り、エンジンをかける。こならもヘルメットを被ってバイクに乗ろうとするが、鬼灯に止められた。
「なあ、そのまま乗ると、走っているときに、たぶん、見えるぞ?」
「へ? ああ、そうですね。じゃあ、これは日頃お世話になっている先輩へのサービスと言うことで。ガン見しても構いませんよ?」
そう言われた鬼灯は盛大にため息をついた。
「そのお気持ちは男として嬉しいが、運転しているときにどうやって後ろ振り返れと?」
見る前に絶対事故るぞと言った。
「男の人って、例え死んだとしても、そういうの見たいんじゃないですか?」
こならはニヤニヤと見つめながら挑発するように言う。
「少なくとも俺は、残りの人生をかけてまでは見ないな。潔く、コンビニでその手の本を買う。さっさと何か穿け。さっきまで穿いてたのがあるだろ?」
「それはさっきしまっちゃいました。まあ別にスパッツ穿いているんで問題ないですけどね」
「……最初からそういえよな」
気を使って損したと言わんばかりにうなだれた鬼灯であった。
「あ、それと」
「なんだ、今度はどんな色仕掛けしてくるんだ?」
「……先輩、なんかひねくれてますよ? 怒っているなら謝ります。ごめんなさい」
棒読みで謝るこならだった。
「謝る気がさらさらないな。もうなんでもいいから、あの合法魔女みたいにならないでくれよ? 一人いるだけで俺は、もう精一杯なんだから」
「先輩の中では百合子さんは魔女なんですか……」
こならは哀れみの視線で鬼灯を見ていた。
ふと、鬼灯は疑問に思った。
「まて、この周辺の学校って、魔女がいるから今日は休校になってるんだよな?」
こならの顔がひきつった。あ、ばれた。とくっきりと顔に出ていた。
「え、ええ。ソウデスヨ?」
声が上擦り、たらたらと冷や汗が顔から出てきている。
「それなのに制服を着て乗り込むのは、おかしくないか? その前にどうやって借りれたんだ?」
最後のセリフには、お前の体系で他の人に借りれるものがあるのか? という意味合いもあったのだが、これを言うと立場が逆になりかねないのであえて言わず、鬼灯はこならを追求する。
「……エエ、ソウデスネ?」
こならはすたすたとその場から逃亡しようとした。
「まてや」
即捕まった。捕獲員の名は伊達ではない。
冗談は置いといて。
「逆に目立つぞ? その格好は」
「……すみませんでした。その、あのお店で進められて、こういうの一度着てみたいなーって思って、勢いで買っちゃって、早く着てみたいなーって思って……」
「それで、今に至ると?」
「はい……」
こならはしゅんとして申し訳なさそうにする。
そんな姿を見て、怒るにも怒れなくなった鬼灯はため息をついて言った。
「まあ、お前の制服姿を見れたから、いいんだけどな。さっさと元の服に着替えてこいな」
そういわれたこならは少しだけうれしそうに返事をした。
「はい」
†
元の服に着替え終わったこならは鬼灯に向かっていった。
「今回の魔女対策の仕掛けは、先輩のバイクを使います。どこか紐をくくりつけられる頑丈な取っ手みたいなのはありますか?」
「後ろの荷物乗っけるところに括りつけられると思うが、俺が手に持つんじゃ駄目なのか? その方が楽でいいと思うが」
「先輩の手、特に指が危ないからそれはダメです。あと片手運転も危ないので止めてください」
「知ってるか? バイクの方向指示のランプが付かなくなったら場合、片腕を使って方向指示しなければいけないことを。それとバイクに何か紐を括りつける時点で相当危ないからな?」
ため息い一つついてから続ける。
「あとお前がやりたいことが大体分かった。確かにその方が簡単に処理できるからいいかもしれないな」
「さすが先輩、血生臭いことだけは察しがいいですね」
「それは誉め言葉として受け取っておこう」
こならは鬼灯が乗っているバイクに乗り、鬼灯の腹部に手を回し、体を鬼灯の背中にくっつけて言った。
「そんな先輩のポジティブなところがわたしは好きですよ?」
「じゃあ、その台詞を俺は前向きに考えるぞ?」
鬼灯が後ろにいるこならに向かって一泡吹かせようと言い、反応を見るため振り返った。
「望むところですよ」
こならはニヤリと不適な笑みを浮かべる。
「……本当に百合子に似てきたな」
鬼灯とこなら同時に笑った。
バイクを発進させ、不登校になった女の子の家の方向へと走る。
「先輩が百合子さんのことを気にしているから、わざと似せているんですよ」
こならが小さな声でぶつぶつ発し、聞き取りにくいうえにさらにエンジン音と風を切る音でかき消されてしまう。
「なんか言ったか?」
「何も。きっと空耳ですよ」
こならは笑って、優しい嘘ついた。
きっと伝わってくれる日が来る。
そう、願いながら。