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まじょがりっ!  作者: ハクアキ
第三章 Three Peace And ...
117/121

さいこうっ! Konara Angle 11/02 15:25

誤字脱字などありましたら指摘おねがいします。


「はあ、何言ってんだよ?」

 そう××はいいました。

「いや、その、××はそういう気があるのかどうか思いましてねぇ」

 私はモジモジしながら、どうして自分が急にそんなことを口走ってしまったのか、わかりませんでした。

「そういう気は……まあ、あるな」

「……意外に素直にいいましたね」

「いや、誰しもそう思うのは当然じゃないのか?」

「確かに当然ですが」

 ××は言って続けました。

「たぶんだが、俺が思っているのとこならが思っていることは違うと思うぞ」

「えっ、それはどうしてですか?」

「俺が思っているのは、こならが思うそういう感情を相手に伝えたいというものではなくて、その感情を大切に守っていきたいって思っているんだよ」

「守りたい、ですか」

「壊さないように、守りたいんだよ」

 ××は悲しそうな顔でいいました。

「確かに、壊したくはないですね。壊れたら悲しい過ぎますし」

「やっぱり、そう思うだろ?」

「そうですね」

 私は思っていたような返答が得ることができず落胆して、××が言ったことを深く理解しようとはしませんでした。



 11/02 15:25



 右腕は爆発したかのように弾け、肉と血をばらまきながら辺り一面に赤い水玉を作りました。

「え……?」

 弾けた腕は白と赤が混じって色をしている骨だけで、肘から下は骨と手の肉だけになり、かろうじて間接に残ったわずかな肉でつながって、力なく揺れていました。

 何が起こったのかが理解できませんでした。

 だって、心臓の音が聞こえるから、あの人たちは魔女でもなんでもない人間で、しかも体つきから男性だと思われます。魔女みたいな殺人能力をもっている先天的な能力者がいることは理解していましたが、ここまでの、殺傷能力の高さは想像していませんでした。

「……痛い」

 弾けてなくなった右腕から来る、激痛が徐々にこれから私は何をされるのかを予測させ、恐怖とともに頭の奥からやってくきました。

 私を能力で撃った人は、先ほど私の腕をつかんできたところ、逆に腕を粉砕させ、背骨まで粉砕し、神経が粉砕した背骨で傷つけられて立てなくなり、腕の痛みにもがき苦しんでいる仲間に向かっていいました。

「そいつは怪我して使い物にならなくなったから、殺してもいいな」

 そう言われた残りの二人と言った一人は、まだ痛みに悶え苦しんでいる人に向かって、手で銃の形を作り、一斉にパンっと抑揚のない声で言いました。

 ブシュッと被っていたヘルメットがはねて、体から独立して、ごろごろと転がり、最後には、離れた自分の体の近くで止まりました。

 パンッパンッパンッパンッパンッパンッパンッパンッパンッ。

 体中がはじけて、血がブシュブシュと飛び散ります。

 男性たちの能力による攻撃はどんどんとエスカレートしていき、血と肉を飛び散らせながら、首を失った人は最終的には骨だけしか残らない程度の体になりました。

 その異質な仲間割れに対して、簡単に仲間を殺せる、切り捨てられる、不気味な雰囲気にさらに恐怖を感じました。

 もう、目の前にはぜる肉がなくなると、昆虫をバラバラにしてもうできなくなって飽きた子供のように、その銃口の先が、呆然と立っている私に向けられました。

「っ!?」

 私は飛び込むように転がって右側にある小さな路地の方へ逃げました。その時にかろうじてつながっていた右腕の間接が千切れて離れてしまいましたが、拾っていく暇などなく、そのまま置いていくことにしました。

 立ち上がって、走ろうとしたときに私の隣に丁度寝ていた野良猫が驚いて、私が来た方へと走って逃げていきました。

 パンッ。

 そんな破裂音がメットを被った人が言うと、ギャニャッと猫の鳴き声とともに肉がはぜた音がしました。

「猫にも容赦しないのね……」

 私は頻繁に道を変え右左と交互に曲がりながら、あの三人から遠ざかって行きます。後ろを振り返ってもまだ誰もついてきていないようです。このまま捲けばいいのですが、ヘンゼルとグレーテルよろしく、ぽたぽたと腕から血が地面に滴り、道に点々と辿った道に続いています。このままでは、確実に後を付けられてしまいます。

「とりあえず、この腕、止血しておかないと……」

 何か縛るものはないかと身の回りを探していると何かを縛るために使われ捨てられているビニール紐がちょうどよくあったので、これを使って止血をしました。片手と口だけで縛るのは大変でしたが、うまく縛れたようで血が滴る量は格段と少なくなりました。

「これで良し」

 一応葛くんたちに知らせた方がいいと思い、携帯を取り出して葛くんの番号にかけます。

 数回のコールのち、葛くんが出ました。

『やあ、こなら。何かあったのかい?』

 単刀直入に言いました。

「帰ろうとしていたら、変なヘルメットの被った人たちに襲われたんだけど、一人で帰るのは難しいから助けて欲しいなって思って」

 そういうと葛くんは人事のように言いました。

『それは大変だね』

「大変だよ。右腕吹き飛ばされちゃったし」

 葛くんの声の雰囲気が急にかわりました

『……そのヘルメット被った人の使った能力って……自分で破裂音を言って、能力が発動するみたいなヤツ?』

「うん。そんな能力をもった人間が四人いたんだけど、一人は私が攻撃して無力化したら、用済みになったらしくて、他の人たちがが躊躇いなく殺したよ」

『……はあ、姉さんも紫苑を面倒なことに使ってくれたなあ。そういうことは猫だけ十分なのに。ボクが気づかなかったということは猫も近くにいるのかな?』

「ん?」

 紫苑? 一体誰のことでしょうか?

『こっちの話だから気にしないで。こならがいるとこから、この部屋は近いの?』

「近いよ。多分十分ぐらいでつくと思う」

『その能力者はあと三人いるのね?』

「うん」

『了解。じゃあ、僕がいくよ』

 そういわれ携帯を切ろうとしましたが、

「うん……って、大丈夫なの? 葛くんって戦えるの? もしかしてふきさんと一緒にくるの?」

「……信用されてないね。まあ、その辺は大丈夫だから心配しないで。たかが三人でしょ?」

 たかが三人って……どれだけ葛くんは強いのでしょうか? 少なくとも杏さんよりは強いんですから、三人くらいは簡単に倒せるのでしょうか。

『こならの方には、多分部屋で暇を持て余している百合子を向かわせるからさ、とりあえず、死なないように逃げてて』

「了解。じゃあね」

 そういって携帯を切ってしまいました。

 さて、どこへ身を隠しましょうか? この腕がなくなった状態で大通りを歩く勇気はありませんし、魔女草ストライガの鈴さんにさらに迷惑かけてしまいます。

 まあ、近づいてくる人間、幸いにも追ってくる能力者は心臓のある人間ですので、私の能力で接近してくるのが聞こえますので、ここでじっと待っていたほうが下手に歩き回るよりは安全でしょう。魔女である百合子さんは前は誰か他人から奪った心臓を代わりに自分の体の中に入れて、魔女であることを他の感知系の捕獲員から隠していたのですが、今は私に接近していることを分かりやすくするように、代わりの心臓を体に入ないでくれているので、私を探しに百合子さんが近づいてきたら、こちらからも探そうと思います。

 それにしても、今日は疲れました。

「最近、いろいろあって疲れるよ……」

 私が殺した人。

 私を追っていた人。

 私の代わりに入ってきた人。

 私を助けてくれた人。

 沢山の人たちにあったような気がします。

 これからもこんな生活が続くのでしょうか。

 それは退屈はしないとは思いますが、気疲れが半端ない日々になりそうです。


 ザザザザザザァー。


 十数分後くらい隠れていると、魔女が私に接近しているのを感じました。どうやら百合子さんが近づいているようです。

 私は近づいてくる百合子さんを探しにその場から動き、私を百合子さんを音を頼りに探しました。

 徐々に大きくなっていく心臓のない魔女から発せられるノイズ。

 あの角を曲がったところに百合子さんがいると、私は走り出しました。

 角を曲がるとそこには、


「あら、飛んで火にいる夏の虫とはあなたのことかしら?」


 百合子さんではない、私と同じくらいの背格好の魔女がいました。


「今は夏じゃないですけどね」

 笑いながら、その魔女は私に向かってきます。

「っ!?」

 私は残っている左手を相手に向け、なんとか触れて骨を粉砕する能力を発動させようとします。

 が、相手はその腕を絡めるように掴み、次の瞬間、私の体はなぜか軽々と宙を浮き、

「どっせい」

 アスファルトにたたきつけられました。

「ぐぁっ!」

 一本背負い。たたきつけられた衝撃で止血した腕から血がブシャッと飛び出て、さらに背中から落ちた衝撃で、体の内部まで衝撃が伝わり、堪えきれないほどの痛みが体中を駆けめぐりました。

「馬鹿正直に手なんて出すから悪いんですわ。出来損ないの魔女さん?」

「……うっさい」

 私は左手をのばして足をつかもうとしましたが、その魔女は後ろに跳び去って避け、右手は空を切ります。

「ふふん。こんなに弱いのによく捕獲員として、活躍できてましたね? 嗚呼、あなた感知系の能力者でしたか。なら弱いのも頷けますね」

「あんた……わたしの腕がこんな状態で、しかも不意打ちを仕掛けといて、そんなことをよく言えるね?」

 そういいながら立ち上がるとその魔女は笑っていました。

「ははは、何をいっているのかしら? 怪我をしている? 不意打ち? だからフェアじゃない? おもしろいことをいいますわね」

「どうせ、戦いはフェアじゃないとかいいたいんでしょ?」

 光さんがよく言ってました。騙して何が悪い。生き残ってこそだろ? と。

 けれど、その魔女は否定しました。

「いえいえ、そんなことはいいませんよ。わたくしはちゃんとフェアに、最初からちゃんと仕掛けて来たじゃありませんか?」

 最初からということは、あのフルフェイスの男たちが私に攻撃をしかけたのは、この魔女の仕掛けだということです。

「……それでも五対一は卑怯だと思う」

「だから、仲間を呼ぶ時間と能力の情報をあげたじゃないですか? これで十分フェアですよ。では長話はこれくらいにしてあなたを殺してしまいましょうか」

「聞きたいことがあるんだけど……」

「それはわたくしを倒してからにしてくださいな。何でも話しますから」

「今聞きたいの。あなたの魔女としての名前を」

「あら、そうやってわたくしの能力が知りたいのですか? じゃあ特別に両方教えてあげましょう」

 その魔女は言いました。

「私は市東桜しとうさくらといいます。機関からは、最弱の魔女と呼ばれていますわ」

 最弱? 一番弱い魔女であると機関がこの魔女に名前を与えているということは、本当に名前通りの最弱であるということで間違いないのですが、何か裏がありそうです。

「わたくしの能力は能力者、人間に対して一切効かないから、最弱なんて不本意な名前を付けられていますけれど」

 そう桜さんがいうと、私にゆっくりと近づいてきました。

「魔女に対しては最強なんですよ?」

 私が首の骨をねらって再び手を振りました。その手を桜さんは払いのけて、私の頭の上にぽんと手を乗せました。

 すると、がくっ、と私の体は急に力が入らなくなり崩折れてその場に倒れてしまいました。

 すぐに立ち上がろうとしても、全く体に力が入らずに、一体何が起こっているのかわかりませんでした。

「魔女は心臓がないでしょ? ないのにこうやってわたくしたちは活動することができるです。それはどうしてなのかは、今の科学では明らかにされていないといわれてますわね。ここでは便宜上、魔女の力でわたくしたちを動かしているものとしましょう。その魔女の力が心臓がない私たちを動かしている、生かしているから、こうやって心臓がなくても何不自由なく活動ができているのです。その力が無くなってしまったら、普通、心臓のない私たち魔女は、死ぬしかありません。しかし、わたくしたちは首を刈られてもくっつければ元に戻るほどの魔女の力とは関係ない、再生能力と生存能力を持っているようです。そのため、ただ首を跳ねても、繋ぎ合わせれば回復するため、まだ死んだわけにはならないということです。つまり、この三つの内、どれか一つが欠けていても魔女は生き続けられるのですよ。でもその大事な要素の内一つが欠けてしまった場合、魔女は生きていますが行動不能に陥るんですよ。ここまでいえばわたくしの能力の大体わかるでしょう?」

「この、魔女の力によって動いていた体が、その力があなたの能力によって阻害されて、動かせなくなったってことでしょ?」

「ご明察です。でも思考や喋ることはできるんですよね。まあ無力化できるからいいんですけど」

「魔女にしか効かないじゃない」

「だからそう呼ばれるのです、本当は最弱の魔女だなんて言われたくないですよ。言われるとしたら、そうですね、駆除の魔女でもいいですね」

 唯一の捕獲員公認の魔女になれたかもしれませんね、と言いました。

「……それでよく捕まらなかったね」

「ええ、あなたと同じで、出来損ないのあの方に大切にされていましたから。もう言い残すことはないですね? ふふふ、これが終わったら、あのヘルメットかぶった人たちを回収して、ご褒美をあげなくちゃいけないんですから」

「……あの人たち……どうやって操っているの? 能力?」

「ん? 操れる能力がわたくしにあると思いますか?」

「……聞く限りに無いね」

「いえいえ、あなたにもありますよ。ほら」

 そういい、桜さんは私の下半身を指さしました。

「経験も無い心優しいに男の人は、わたくしみたいな子が全力で尽くしてあげることに精神的な快感を覚えるんですよ。強姦じゃない、ちゃんと愛し合った行為。それにわたくし魔女ですから、ゴムなんて無粋なものはいりません。ちゃんと何の隔たりもなく、つながることができます。そこに男は興奮ではなく、精神的な安らぎを覚えるのです。ああ、こんな自分でも生理的に嫌悪しないで、愛をもって受け入れてくれたって。そんな純粋で綺麗な心を持った男はわたくしと相思相愛だと思うのです。男はわたくしが全力で愛を尽くしてくれているのだから、自分もわたくしの為にしてあげることは最大限にしてあげようと思うのです。そして、わたくしの思うがままに行動してくれるのですよ。すべては、愛ゆえの行為なんですよ。たとえ四人と関係を結んだことが不純だとしても、お互いが認めていれば、それで成立する純愛なんですよ」

 それを聞いた私は、桜さんが言ったことを否定しました。

「……愛じゃない。そんなの愛じゃないよ。簡単に殺されて捨てれるは愛じゃない」

「それはあなた単にうぶなだけであって、相手の価値観を認められないだけであって、あなたのエゴでしかないのですわ。それにわたくしは最初からあの人たちに使えなくなったら死んでもらいます。それと使えなった人は切り捨ててもらいます。いいですね? って許可もとりましたし」

「……それでも、狂ってるよ」

「愛とは言えませんが、あなた達の考えも狂ってなくて? ただ、人一人も殺してないのに、能力だけで殺すなんて」

「……そうだよ。だからいうんだよ。自分の価値観で、それは愛じゃなくて、狂ってるって」

「ふふふ、そうですよね。愛は人それぞれですから。さぁ、こんな無駄話は止めにしましょう。これでは、いつまでたっても水掛け論の平行線ですからねぇ。それでは、これからあなたを死ぬまで斬り殺してあげましょう。嗚呼、あなたは魔女ではない出来損ないなので、一回で死ぬんですよね? なら簡単に殺せますよね?」

 そういいながら桜さんは、小さくて肉も切れないような、安価なナイフを取り出しました。

「ふふふ、こんな小さなナイフで死ぬんですよ? たった百円で売っていたナイフで死ぬんですよ? 悲しいですよね? こんな簡単に安価に死ぬなんて」

 そう言われても私は桜さんの目を見つめたままじっとしていました。それを訝しがった桜さんは言いました。

「……これから死ぬんですよ?」

「うん、このままだったらね。でも、多分そうならない」

 何か癪に障ったのかむっとした表情になった桜さんは百円のナイフを振り上げ、

「……もう、いいですわ」

 振り下ろされました




「あら、こならちゃん。楽しいそうなことをしているわね?」




 百円のナイフは私の顔の目の前で止まり、桜さんはその声の主を方へ顔を向けました。

「いったい誰ですか? わたくしの邪魔をするなんて」

「葛くんに言いった通りね。魔女の気配はしないけれど、魔女が一人はいるはずだから、見つけたら、そいつを殺してって」

 私が殺されそうになっているところに割り込んできたのは、葛くんではなく、意外なことお服や顔にべったりと血をつけた百合子さんでした。

「ちょっと百合子さん……。その返り血は何ですか?」

「ああ、これ? ちょっとヘルメットを被った変質者におそわれてね、逆にさくっと殺してきたのよ」

 本当にさくって簡単に殺っていそうで怖いですが……。

「葛くんはどこいったんですか?」

「さぁ? ヘルメット一人だけ捕まえてどっかにつれていったところを見たけれど、いろいろと吐かせているんじゃない? それからこならちゃんが落としていた腕は葛くんが回収してたから安心してね」

 そう百合子さんがいうと私を押さえつけている桜さんに向かって言い放ちました。

「さぁ、そこの雑魚の魔女さん。私のこならちゃんを返してもらえるかしら?」

「返しますよ。ちゃんとぐちゃぐちゃになって死んだら返しますわ」

「……」

「……」

 ピシッと二人の間に亀裂が入ったような音がしたんですが……。

「……このビッチが。あなたの××で犯されて鈍感になった×××にそのナイフ突っ込んで、血液で濡らしてあげましょうか?」

「……なんでもいいなさい、アバズレ。どうせ×××が腐っているから、臭くて豚とですらできないのでしょう? 可愛そうに」

 ……怖い、怖すぎる。そして、二人ともどうしてこんな状態でこんな会話してすんごい笑顔なんですか? 逃げたいよ、すごく逃げたいよ……。ああ、葛くん。早くきてよ……。

「……あ、あの百合子さん」

「ああこならちゃん。このビッチを殺してから、助けてあげるからそこでまっててね」

 いや、桜さんを殺す前に私は助かると思うんですが?

「大丈夫よ。このアバズレを解体してから、あなたを殺してあげるわ」

 あなたも私から離れた時点で、私が逃げると思わないのですか?

 そんなことよりも言わなければいけないことを私はいいました。

「この魔女の能力は触れた魔女を無力化する能力です。だから、この魔女に不用意に近づかないでください!」

「あらあら。わたくしの能力を言っちゃうなんて。いけないわね?」

 そういい私の背中に百円のナイフを突き刺しました。

「ひぐっ!?」

「ふふふ、ちゃんと脊椎は狙わないであげましたよ? 痛みがなくなっちゃうのは悲しいですからねぇ?」

 百円のナイフを私の背中から抜いて、百合子さんに向けました。

「さあ、そこのアバズレさん? 動いたらこの子の背中がナイフにぐちゃぐちゃに犯されちゃいますよ?」

「……」

 百合子さんが険しい表情で桜さんをにらみつけています。

「ふふふ、素直でいいですね? ああそうだ先にあなたを殺すと言いましたが、先に苛つくあのアバズレさんを殺すことにしましょう。そうしましょう。あの方も駒さえ減ってくれればいいと言ってましたし」

 そういって、おもむろに靴を脱いで素足になり、桜さんは私の頭に置いていた手の代わりに足を乗せて踏んづけて、立ち上がりました。堅いアスファルトに顔が直接あたり、足でぎりぎりと押しつぶされて、すごく痛いです。

「これでよし。さあ、わたくしのこの手に触れてください。そうすれば、この子を開放しますわ」

「……ちっ」

 百合子さんは渋々桜さんに近づいて行きます。

「だ、駄目ですっ! 近づいちゃったら、百合子さんも捕まってしまいます!」

 そう私がいうと桜さんは踏んづけている私の頭に体重をかけて、黙らせようとしてきました。

「あら? 信用されてないのね? 大丈夫、ちゃんとあなただけは逃がしてあげるわ。あのアバズレさんはこのナイフで、その腐った処女膜でも頂くことにしますわ」

 そうニタニタと笑う桜さん。百合子さんは申し訳なさそうに言います。

「……ごめんね、私の能力じゃあこの魔女に勝てないの。それにもうすぐ葛くんが来るはずだから、すぐにこの魔女を殺すことができるかもしれない。それが一番二人が助かる確率が高い」

「でもっ!」

「……本当にごめんね――」

 百合子さんが桜さんの前まで近づき、その手をつかみました。




「嘘なんてつかせちゃって」




 桜さんの左腕がスパッと切り落とされました。

「っ!?」

 桜さんはとっさに跳び去って後ろ向きに倒れました。そのとき、私の頭に重心をかけて跳び去ったのため、頭がぐちゅっとアスファルトにめり込んだような音が直にして、さらにものすごく痛かったです。

「こならちゃん大丈夫? 痛くない?」

 百合子さんが桜さんの切り取った腕を遠くに投げ捨ててから、私の手を掴んで、立ち上がるのを手伝ってくれました。

「……あちこち痛くて、もう大変です」

 腕は爆発してて、背中にナイフを刺されて、頭を踏まれて、もう体中が痛くてどこに怪我をしているのか分からないくらい、体中が痛いです。なんて嫌な日なんだ……。

「ど、どうして、わ、わたくしの能力が効かないのっ!?」

 そう能力が効かないはずなのに、腕を能力で切られて狼狽える桜さんが尋ねると、百合子さんは淡々とネタばらしを始めました。

「ああ? あなたの能力って、簡単に言っちゃえば心臓があれば、能力を効果をうけないんでしょ? だから先にフルフェイスの変質者を殺して、そのときにどうせいらなくなったでしょうから、心臓をもらって私に移植したわけ」

「そんなことできるわけが……」

 ええ、普通の魔女ではできるわけがありません。

「そうしえば私の能力と魔女名は言ってなかったわね? 私は機関から強奪の魔女と呼ばれているわ。能力は相手の体の部位を切り取って、自分の物にする能力よ。切り取られた相手はその部位が無くても、腐らずにそのままでいられるから、そう呼ばれるんだと思うだけど」

「そ、それで、心臓を、自分の中に移植して!」

「あなたの能力のことは葛くんからある程度は聞いていたから、こうやって対策していたのよ。それにこならちゃんは感知能力もあるから、最初からわかっていたから、こんな私のブラフにつき合ってくれたわけ」

 最初からおかしいなと思ってたんです。心臓の音がするから葛くんがやってくると思ったら百合子さんが来てたことから、きっと、これは何かの作戦なのだろうと思い、口には出しませんでした。

「は、は、」

 ぶるぶると震えて立てずにいる桜さんに百合子さんは近づき、

「さて、あなた、最弱の魔女って呼ばれているだったけ? 確かに名前通りの最弱だわ」

 右足をつかんで付け根から切り取りました。

「――」

 桜さんは絶叫しました。じたばたと残った手足でもがき、どうにか逃げようとしています。

「あら、私の能力で切り取っても痛みはそんなないはずよ? そして苦しまないのにどうして逃げるのかしら? ああ、そういうこと。あなたが言ったとおり、痛みがないのは悲しいわよね?」

 百合子さんは桜さんの背中に手を差し込んで、肉の塊、えーと、内蔵でしょうか? グロテスク過ぎて直視できないですが、そんな感じの物を取り出して、切り取り投げ捨てました。 

 桜さんは急に叫ぶのを止め、吐き気をもよおしているらしく、動けずにその場で、ゲーゲーと血を吐いていました。

「そうだ。こならちゃん。今、私が右腕治してあげるわよ?」

 そういい、桜さんの右腕を根本から切り取りました。桜さんはバランスがとれず、吐いた血の上に倒れて、まだ吐き続けていました。

「……えっと結構です。葛くんに治してもらいますし」

「そうよね。こんなビッチの腕なんて、誰のナニを触ったかわからないし、汚らしいわよね」

 ぽいっと捨てて、今度は桜さんの体を仰向けにするために蹴り転がし、苦痛に歪む顔から丸い球体を切り取って私に尽きだして、

「目なら――」

「本当に結構です」

 そう……なら理性なくす前に殺しておかないと、といって、百合子さんはその球体をぷちゅっとつぶしました。桜さんはほとんど放心状態で、残った目は何を写しているのか分からないほど淀んでいて、口からは内蔵でしょうか? 何か肉片と血がこびりついていました。

 百合子さんは桜さんの腹部に思いっきり、足を踏みつけました。

 途端に辺りは、桜さんの口から飛び出た赤い液体が飛び散り、頭を蹴って切り取りバラバラのぐちゃぐちゃに辺りを汚して、百合子さんは笑って悦に浸っているようでした……どんだけ憎いんですか?

 絶対に百合子さんとは喧嘩しないと心に誓い、これからどうすればいいか訊きました。

 百合子さんは桜さんを……まだ虐めながら、私にいいました。

「こならちゃん、そんな血塗れで腕もない目立つ格好でしょ? だから椿さんに車で迎えに来てくれて、部屋まで送ってくれるそうよ」

「……はぁ。そうですか。百合子さんは一緒に帰らないんですか?」

「ええ、もうちょっとこのゴミを処分してからいくわ」

 もう見るに堪えない形になった桜さんをさらにどうするんですか……。




 11/02 16:14




「……ねえ、百合子。その物体は、何? ていうか何この既視感?」

「え? 触っちゃ駄目よ。××がうつるから」

「……もう自分で片づけてくれれば、どうでもいいけどさ。ところで、フルフェイス何人殺した? 僕は一人だけしか殺してないけど」

「私はフルフェイスは一人だけしか殺してないわよ」

「あちゃー。一人取り残したか。ボクも感知して追えないから見つけられないし。面倒なことにならなければいいんだけど、絶対なるよねえ?」

「私に訊かれても。それにしても最近私たちを殺そうとしてくるヤツが多くて大変だわ」

「まあ、弱いヤツばかりだから大丈夫でしょ?」

「杏さんも八鳥ちゃん、椿さん。ふきさんも大丈夫だとして、こならちゃんですら倒せる相手をよこすなんて、本当に殺す気あるのかしら?」

「ないだろうね。送られてきた魔女や能力者たちは所詮用済みの消耗さ。当たって怪我を負わせればラッキー。殺せば大穴。できなくても処分する手間がかからない。一石二鳥じゃないか」

「そんな扱いする人がいるなんて、ホント嫌になるわね。その人って葛くんのお姉さんなんでしょ?」

「まー。うん」

「喧嘩してるの?」

「まあ喧嘩と言うよりはあっちが勝手に意地をはっているから、その相手している間に取り返しのつかないところまで進んじゃったみたいな感じかな」

「ふーん。人様の家族内で起こったいざこざに口を挟まないけど、こならちゃんが殺されるくらいの危険なことに巻き込みでもしたら、例え葛くんでも殺すわよ?」

「その時になったら、受けて立つよ」



 ブゥゥゥゥゥ。



「車のクラクションよね? 事故でもあったのかしら」

「椿が事故ってないといいんだけど。あ、そういえば猫もいるんだっけ?」



 ドォォォォォォォォンッ!!



「……ちょっとやばいね、これ」



11/02 16:07



 腕がなくなった姿を見られないように椿さんの車の後部座席に乗り込み、私たちが根城にしているマンションまで向かいます。車を使わなくてもいいよな距離ですが、今の私の格好でふらふらと歩けば、救急車やパトカーを呼ばれて面倒なことになってしまいますので、こうやって乗せてもらっているわけです。

「いつも有り難うございます。椿さん」

 椿さんは片手をあげて返答してくれました。

 それにしても今日は怪我が多くて疲れました。怪我を葛くんに治してもらったらすぐにお風呂に入って寝たいと思います。

 うとうととしながら、外の景色を見ていました。辺りは暗くなり、人通りもまばらで、もうすぐ冬になるんだなぁと感じました。

 前方をみるとマンションの近くにある信号機が見えました。あの信号を左折して、右手にマンションが管理している駐車場があります。

 信号は青。椿さんはウインカーをあげました。

 すると、一人の女性が、車の目の前に急に飛び出してきました。

 椿さんはあわててブレーキを踏み、甲高いブレーキ音が鳴り響かせながら止まり、間一髪で止まったので、その女性を引くことはありませんでした。

 椿さんはしゃべれないので、私が代わりに外に出て、腕を隠しながら、そのひいてしまいそうになった女性のもとへと駆け寄りました。女性はうつむき顔が見えません。

「怪我はないですかっ!?」

 そう尋ねるとその女性はゆっくりと顔をあげました。

 その女性に近寄るとおかしなことに気づきました。

 車は、女性の前で確かに止まっていますが、その女性は右手で車を止めたかのように車に手を置いて、車に置いている手の周りのボディがその手形に凹んでいたことと、表情に、焦りやひかれそうになった恐怖心が一切なかったことです。

 一番おかしいと思ったのは、その顔に既視感があったことでした。

 私は恐怖心からか少し後ずさりしてしました。

 椿さんの方を見ると女性の顔見て、驚ろき、急にクラクションをならしました。

 けたたましいクラクションが鳴り響きます。

「……」

 その女性は手を車から離そうとし始めます。

 私は動くこともできません。何が起こるのかがわかりませんが、感じることはできました。


 そのよくわからない、けた違いの恐怖が、私の記憶を掘り返して、ようやく、その女性にどうして既視感があったのかを思い出させました。


 あのとき、私の家族を食べて、私を食べようとした――


 チッ、と静電気が車の中から聞こえました。


 模倣の魔女。


 ドォォォォォォォォンッ。

一難去って、また一難。

次回でこならさんの出番が終りです。

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