おしまいっ! Sakaki Angle 11/03 08:00
「嘘だ」
「嘘じゃないわ。たとえ嘘をついたとしても、私は本能のままに彼女の心臓を奪って魔女にするだけよ。それに魔女になってしまえば彼女にかけられた呪いは発動しなくなるわ。これは当たり前ね、心臓を止める呪いなんだから、心臓がない魔女にとって、心臓を止める呪いなんて全然意味のない効果になるのよ?」
これぐらい、分っていたが触れることは一切しなかった。それは捕獲員でもあるからということではない。そんなことをしていちりを幸せにするなんてことは間違っていると思っていたからだ。そんな呪いを解くために魔女になって非難を浴びせられるよりは、僕が近くにずっと居続ければそれで済む話で、魔女になってしまったら、魔女収容所につれて行かれるのだ。それだけでも、こならには十分な苦痛になる。
「もしかして、呪いが解ければ、離ればなれになる可能性があるから、そうしたくないって思っていたかしら?」
「そんなわけない。僕は解けるんだったら、そうしてあげたいって――」
「じゃあ、その先は? もし、突然、彼女の呪いが解けた時、あなたから離れることになったとしても、あなたは笑顔でよかったって言えるかしら?」
「そんなことはない。いちりの呪いが解けたとしても僕の所に居てくれる」
そう誓ったのだから、揺るぐわけがないんだ。
「そうとも限らないわよ?」
とニヤニヤ薄気味悪い笑みで僕を揺さぶってきた。
「絶対にだ」強く言った。すると手のひらを返したかのようにサバドは僕を誉めはじめた。
「いいわ。本当にいい。揺さぶられても信念を変えない。どちらに倒れてもいいような返答ではなく、まっすぐな回答。私はすごく好きよ。こんな世界で、そうお互いを信じられるあなたたちが。だから」
「助けたくなるのよね」
「……もし、魔女になったら戻れる方法はあるのか?」今のところ研究では戻る方法はまだ見つかっていないと言われているが、サバドに聴いた方が手っとり早い気がした。
「ないわ。一生、心臓のないまま過ごさなくていけないわね。それよりも、確認作業が回りくどいと、彼女が本当に死んじゃうわよ? 死んじゃったら、さすがの私でも助けることは不可能になるわ」
「……」
「さあどうする? 私に彼女を差し出して、魔女にして一命を取り留めさせる? それとも、彼女をあきらめて、私を追い払う?」
いちりはどちらを選んだら、喜んで受け入れられるだろうか? 人喰いの魔女になって生き返るか、このまま、魔女にならず汚れずに死んで、思い出の中の永遠の存在へと変わるか。
どちらが彼女にとっての幸せなんだろう?
ここで、僕の胸で寝るのが好きなんだと、幸せそうに語っていたいちりが僕の胸で永遠の眠りにつこうとしている。
『……榊』
僕はそのいちりの顔をみた。笑った顔も浮かんだ。その幸せに満ちあふれた表情で僕の名前を呼ぶ声も聞こえる。
決めた。決心がついた。
それは僕自身の偽りの幸せであり、彼女の本当の幸せではないかもしれない。
それでも。
「僕は――」
僕は僕の意志で決めて、サバドにそう頼んだ。
サバドはまた気味悪く微笑んだ。その頼みを受け入れたようだった。
「この選択が二人を幸せに導いてくれるといいわね」
取り合えず、三章の4分の1が終わりました。……まだ、4分の1か……全然書き終わる気がしないヨ……。
そんな現実から目を背けるとして、いつの間にかこれを投稿し続けて一年経ってしまいました。時が経つのは早いですね。予定ではもうこの話は終っていて次の書いているはずだったんですが……まあそれも目を背けることにしましょう。
この続きは、また時間が空くと思いますので、更新の度に読んで頂ければ幸いです。
感想もお待ちしていますので、宜しくお願いしますね。
では。




