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狂女エリザベート~血が騒ぐ!

下僕たる侍女らは寄ると触ると王女エリザベートの噂であった。


「王女さまって恐ろしい」

宮廷のあっちこち


「ああっ王女さまのことかっ」


ヒソヒソ


「王女さまはたまに目が座っていらっしゃる」


賄い女が小声で口を挟む。

「厨房にやってくるのよ」

生きたまま鶏が宮中裏庭入れば…


「鶏をひとつひとつ潰すのをジィ~と陰から見ていらっしゃる」


鶏刀で首を斬られ血飛沫の飛び散るさまを涼しげな顔で見ている。


下僕と侍女は王女エリザベートの残忍さを暇さえあれば噂をしていく。


宮廷の噂は徐々に完成されていき"血腥さが好きな王女エリザベート"ではないかとなる。


「刀を貸してくれっと言われて」


厨房職人から切れ味鋭い牛刀の類いをエリザベートは譲り受ける。


ニタリッと不敵に笑っていつまでも眺めている。


不気味な…女


血を欲しがる


血腥い臭い…王女


宮廷には威厳ある国王やきらびやかな女王もいた。


が娘になるエリザベートの残忍な嗜好癖は気がつかないようだった。


陰鬱な地下の宮廷が好みの王女エリザベート


たまには太陽の光りの元で日光浴がしたくなる。


「今日はお天気が良いわ。宮廷の侍女たちを連れて森にハイキングに行きたいわ」


気紛れな王女エリザベート

あれこれ提唱すれば全員右に倣え。


カルパチアの森など道は険しく歩き疲れるだけである。


下僕の侍女らはウンザリしてしまう。


王女さまのお供は嫌っ


自然界の森は獰猛な動物もいる。


だが誰ひとり反旗を翻すこともなく


「お嬢様参りましょう。みんな揃って森に参れば楽しいハイキングになります」

従面反背(従うふり)


いやはや


嫌気を感じ


いい加減疲れるまで森の中をひたすら歩く。


王女エリザベートだけは意気揚々として元気である。

小鳥が(さえ)ずれば


小石を投げて嫌がらせ


リスが木の実をかじれば


強引に投げつける。


動物虐待のために森にいるようではないか。


知恵のある侍女は提唱したい。


森は極めて危険である。太陽が明るいうちに宮廷に引き返したい。


小動物との出逢いならよいが


獰猛な動物と遭遇したら


一大事


いや命が危ない


「オホホッ森の散策は特別に楽しいでございますわ」

好天の日は不思議と頭痛はない。


森の奥へ行くに従い鬱蒼とする森林原野。


不気味さが広がってくれば王女エリザベートは気分よろしく笑い声をあげた。


「森に入れば清々しいわオホホッ」


エリザベートには森の空気や自然界が清涼剤となる。

「王女さま。森を甘くみてはいけません」


侍女の一言。


カチンッ!


気分のよいエリザベートに水を差してしまう。


「引き返せ?」


我が儘な王女


エリザベートである。


血の気の多い


気の強い王女


エリゼベート以外あり得ない


口喧(くちやかま)しい侍女をキイッと睨みつけた。


その目付きは血の通わぬ冷徹なものだった。


"ハシタメ!"


下僕の身分


"私に意見。生意気なっ!"

「皆さん目の前に見える湖で休憩にしましょう」


侍女たちにひと休みを与えてのんびりしたいとした。

だが…


「ちょっとあなた!あなたは私について来てちょうだい」


険しい顔である。


冷徹さは目付きだけでなくからだ全体から霊気であった。


ヒェ~


侍女は足がブルッと震えてしまう。


(けん)のある


非礼な言いようだった


悪魔のような


威圧感のエリザベート


「私はもう少し森の奥に参ります」


侍女は下僕として御付きの召し使いとしてついてきて

おそるおそる


蛇に睨まれた蛙のごとく


しぶしぶ


疲れた足を引きずりながら

我が儘な王女エリザベートと共に


森の深さは深刻になる。足を踏みしめても道にはならない。


前進は不可能となった。


「さあっ~素敵な森に感謝しなくては」


感謝?


「あなたっ目の前にある太い木があるでしょ」


あの木に小鳥が巣を作っているわ


「小鳥の(ひな)を捕りなさい」


小鳥はたぶんキツツキ


エリザベートと侍女はキツツキのカタカタっという音を聞いていた。


「巣から雛を捕るって…」

キツツキにしろ小鳥となれば大木に登っていかねばならない。


侍女の体力では無理である。


「私は今ここで可愛い雛がみたいのです」


王女の私に見せなかったら

わかっているわね!


バシッ!


侍女の顔にビンタを一発喰らわした。


しぶしぶ


足場を踏みしめ大木に登るフリをする。


低い枝に足がかかり一歩や二歩はあがれた。


「王女さま。これ以上はあがれませぬ。無理でございます」


一足やふた足


木にからだを辛うじて掛けたところでなんの役に立つものか!


侍女の背後に一塵の風が拭いた。


「うん!?」


後頭部のあたりに危険を感じ振り返った。


えっ?


侍女が見たものは…


『狂女エリゼベートは興奮したり発作に見舞われると下僕の侍女を虐待し悲鳴を聞くのが何よりの気付け薬だった』


ギャア~


ドサッ


侍女の断末魔の叫び


侍女の落下はゆっくりだった


静寂な森の大自然中に行われた血の儀式であった。


エリザベートの手は鋭い刃物が握りしめられ侍女の鮮血が滴り落ちていた。


ハアッ~


ハアッ


エリザベートに鮮血が飛び散りベチャっと顔面にかかる。


「おまえには天罰がくだったからなのアッハハ」


顔やからだを血の海で真っ赤に染めて高笑いを続けた。


アッハハ


アッハハ


森の小鳥や小動物たちは血の臭いに苦しめられてしまう。


アッハハ


アッハハ


高笑いをすると恍惚として幸せそうな王女エリザベートに戻っていくのであった。

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