恐女エリザベート
殺人鬼
吸血鬼
エリザベート(エリザベス)・バードリという犯罪を犯した女
人類史上稀にみる猟奇犯ではないかと言われている。
エリザベスことエリザベート・バートリは1560年現在の東欧諸国ハンガリーの名門バートリ家生まれである。
ハンガリーにおけるバートリ家。プロシア=オーストリアにおけるハプスブルグ家の高貴なる繋がの家系にあたり代々トランシルバニア領地(現・ルーマニア)を国王として治めている。
エリザベートの叔父ステファン。ハップスブルクの傘下にあるポーランド国王も務めたほどの名門中の名門となっている。
ところでこの名門と言われるバードリ家。
血縁関係により血が汚れてしまい歴史を繙けば長年に渡る近親婚が災いし不穏な遺伝子が脈々と子供に受け継がれてしまうのである。
ポーランド国王のステファンはやぐるったように癲癇が原因で死亡しいる(遺伝性)
他の叔父は見事に発狂し悪魔信者に成り下がっていた。
叔母クララとなると4~5度も結婚してしまう。
男をとっかえひっかえ
世間体にひとりの男に満足しない淫乱さや多淫衝動を露出していた。
2番目の伴侶はベッドで奇異な性癖をみせて窒息死させている。
世に言う"呪われた家系"は名門の仮面を被った"偏狭なる遺伝子"を備え持っていたのである。
当人のエリゼベートも生涯にわたり原因不明な偏頭痛に悩まされている。
精神の高揚状態をいかに押さえつけるか。発狂前のシグナルと言うべきものである。
狂女エリザベートの幼い頃の逸話が数々残っている。
幼女の齢の頃というと幼稚園ぐらいであろうか。
愛くるしくも可愛らしい国王の娘エリザベート。
宮廷の広間や遊びの庭で元気に侍女を相手にお遊びをしている。
幼女は和洋を問わずいずこも無邪気に宮廷を走り森の妖精のごとく振る舞うのである。
だが…
宮廷の幼女は突然なんの前触れもなくパタッとしゃがみこむのである。
「痛い~痛いっ」
宮廷であろうが
庭先であろうが
森の入り口
湖畔の水辺
のべつ隈なく
幼女は痛みを訴え蹲りたうちまわる。
「あっ頭が痛いの。お父様お母様」
助けてお願い!
時間が経過すれば脳の隅々まで痛みは伝わって息ができなくなる。
頭はズキンズキン
前頭葉の中を悪魔が隅々まで走り回る。
かがみこめば胸が締めつけられてチクチク
慢性化する偏頭痛の発作が現れたのである。
可愛らしくも愛くるしい幼女。可愛くも幼い両手でからだを抱え痛みを懸命に堪えている。
宮廷の侍女は動揺を隠せない。
大切に育て上げねばならぬ王女がみるからに辛そうである。
「お嬢様っお嬢様。いかがなさいました」
王女さまが大変でございます!
幼女の急変である。
変な流行り病いに罹災をしたのかもしれない。
「頭が痛いのでございますか?大変でございます」
風邪気味であろうか
宮廷に流行る病いのひとつであろうか。
幼少の異変を心配する侍女たちは右往左往の騒ぎをしてしまう。
「まあっお嬢様の頭が…」
ガンガンと痛みにのたうち回る。
「宮中のお医者さまに連絡をなさいませ。流行り病いであれば一大事でございます」
幼女エリザベートは国王の大切な姫ぎみである。
もしものことがあらば
「もしものことが王女さまにあらば。我々侍女はなんといたしましょうか」
しゃがみこむ痛々しげな幼女を介護しよう
王女の悶えるような激しい痛みを病いを少しでも和らげてあげたい。
宮中に仕える忠誠心の侍女(下働き女)らであろうか。
ところが
頭を触ったり
水辺で冷やそうとしたり
布地でくるんだり
王女の事態は好転することなくいつまでも頭を抱え込み泣いている。
だんだん侍女も幼女も顔つきが険しくなっていく。
「王女さま。遠く離れた宮中医(祈祷師)まで連れて参りましょう」
祈祷ならば
体内にある悪魔を払いしてくれよう
「さあっ王女様。私の背中にお乗りくださいませ」
頭痛に堪えられず泣き叫ぶ幼女エリザベート
侍女はヒョイっと軽く背負う。
背中に乗る王女
幼女がオンブをされるのはいたって普通のこと。
宮廷であれ市勢の街角であれ
他の侍女は王女の頭を撫で上げて和らげてやりたい
ところが
ギィ~ヒィ~
ガク~ン
幼女を背負った侍女は叫びをあげた。
なんと!
背負った幼女は侍女の髪の毛を力一杯引っ張ったのである。
幼女の力などたかが知れている!
いやいや
ここぞとばかりにグイッと勢いをつけて引かれる。
「なっ何を…お嬢様…ないますかっ」
いきなりグイッ髪の毛を引かれてしまい軽いムチウチ症になる。
ヒィ~
ギィー
侍女たちの放つ驚嘆の叫びは宮廷に庭先に響きわたった。
「くっ苦しいございます」
王女さま
オイタが過ぎます!
これは王女エリザベートの侍女に対する"イタズラ"の序章であった。
宮中の至るところで遊ぶ幼女。
花を見る。
可愛らしい赤や黄色の花をじっと見ていると突然手形のスコップを握りしめ
「エイッ!」
花の茎から切ってしまう。
「お嬢様!なんてひどいことをなさいますか」
乳母の役目の侍女に花を大切にしなさいっとたしなめられる。
侍女は怒りながらヒステリックなキィ~キィ声
繰り返しガミガミと口煩く幼女に小言する。
このガミガミと憂鬱な気分になる小言を幼女は耳に聞くとなぜかスゥ~と気が鎮まり幸せを感じるのであった。
宮廷の庭先にある水辺の鳥を見る。
森の小鳥の姿を見かける。
幼女の力で小石を握りしめ池にある水鳥を枝の小鳥目掛けて投げつけた!
力なき投石は当たることなどないが木々の小鳥や水辺の水鳥は驚いて飛び立つ。
キィ~キィ
バタバタ
羽音を残して池から小枝から飛び立つのである。
この逃げ惑う水鳥や小鳥の慌て騒ぐ様はともするとパニック状態である。ギャーギャー
水鳥が慌てふためき鳴き叫び飛び交う様をみる。
幼女はスゥ~と精神が気持ちが落ち着いてくるのである。
「王女さまは可愛らしい顔をして残酷でございます」
エリザベートの幼少から残酷さは薄々気がつかれていたようだった。
年齢が高くなるとエリザベートの"オイタ"は年々ヒートアップしてしまう。
森の小動物を宮中の下僕が捕まえてくる。
ウサギ・リス・小鳥
女の子エリザベートはウサギやリスがお気に入りであろうかと下僕は生け捕りにして宮廷に持ち帰る。
「王女さまいかがでございますか。ウサギさんやリスはかわいいですなあ」
宮廷の庭先で飼いましょう。
エリザベートは女の子であるから動物はかわいさから毎日餌をせっせと運ぶのであろう。
「宮廷には娯楽が少ないんだ。ウサギやリスで楽しくやってもらいたい」
下僕はウサギ小屋とリスの木陰を作って飼育を助ける。
ところが
「どうしたんだ!」
日を追うに従って小屋からウサギはどんどん減ってしまう。
小屋のまわりには無惨に殺された血だらけなウサギの残骸があった。
「誰がこんな酷いことをするんだ」
血のウサギなど王女エリザベートが見たら気絶してしまうかもしれない。
「王女のいない間に死骸は片付けてしまおう。犯人探しはそれからだ」
作られた木陰に飼育するリスも同様であった。
「リスは敏捷な小動物だぜ。人間にみすみす殺されるなんてまず有り得ない」
ウサギは捕まえて捕まえられる。
リスは難しいぜ
「ひどいことをしやがるぜ。いったい全体どこの野郎がしでかしやがった」
下僕と侍女は夜こっそりウサギ小屋とリス木陰を見張ることにする。
月明かりに誘われて人影あり!
ただちに王女エリザベートが捕まってしまう。
「なぜ?なぜ王女さまがウサギやリスを殺害なさるんです」
小屋に眠るウサギは両手で握りしめ力一杯絞殺していく。
リスは餌を与えるフリをして鋭利な串でヒト突きをしてしまう。
「ひでぇこったっ」
あまりの残忍さに侍女などは目を背けてしまう。
「オホホッ~見られてしまいましたわ」
王女は不気味に笑い声をあげた。
「ウサギは"森の番人"にタテをつきましたのよ」
森の番人の命令に従わないから絞殺に問われた。
下僕と侍女はポカンとする。
「リスは不浄でございますわ」
我が国に流行り病いを伝染する可能性がある。
「我が国カルパチアのために私が処分いたしますの」
オホホッ~
アッハハッ
夜の宮廷の庭先に不気味なエリザベートの高笑いが鳴り響いた。
絞殺や刺殺
いずれも残忍な殺害ではないか。
しかも
ウサギ小屋のまわりは血だらけで辺り一面の赤い海であったのだ。