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【最終章スタート!】「荷物は全部持って行け」と言われた悪役令嬢、城の中身を空にしました。  作者: 月雅
第3章

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第10話 世界の在庫管理者


世界を救うなどという大層な使命感は、私にはありません。

ただ、目の前で散らかっているものが許せないだけです。


「……ひどいありさまですね」


私はスクリーンに映し出された、赤く染まった世界地図を見上げました。

警告灯が点滅するたびに、私の整理整頓魂が苛立ちでざわつきます。


『報告します、マスター』


アルファがスクリーンの横で解説を始めました。

彼女のメイド服姿は、このハイテクな制御室でも不思議と馴染んでいます。


『現在のエラー原因の九割は、各大陸にある「物流拠点サブ・ダンジョン」の機能停止によるものです。パイプラインが詰まり、マナや資源が現地で滞留しています』


「つまり、血管が詰まって壊死しかけている状態ということですか」


『肯定します。特に深刻なのは北の大陸。ここのメインサーバーがダウンしているため、惑星全体の循環が止まっています』


地図の北側、雪に覆われた地域で、とりわけ大きな警告サインが明滅していました。


私は腕組みをして考えました。

このまま放置すれば、一年後に世界は資源枯渇で滅びます。

私の愛するルーカス様との生活も、商会の未来も、美味しい料理も、すべてなくなってしまう。


それは困ります。

非常に困ります。


「直しましょう」


私は短く宣言しました。

英雄的な決意ではありません。

汚れた皿を洗うのと同じ、日常的な業務の一環としての言葉です。


「本気かよ、姉御」


レオンが呆れたように天井を仰ぎました。

ザックも頭を抱えています。


「世界中を回ってダンジョンを攻略するってことだろ? 俺様たちはトレジャーハンターだが、さすがに規模がデカすぎるぜ」


「何を言っているのですか。これはビジネスチャンスですよ」


私はニッコリと微笑み、商人としての顔を見せました。


「世界中の物流網を復活させれば、エルロッド商会は文字通り『世界を繋ぐ商会』になります。どの国へも、一瞬で物資を運べるようになるのですよ?」


「あ……」


レオンの目の色が変わりました。

さすが、私の弟子です。

計算高いところが似てきました。


「それに、世界を救えば、帝国の皇女殿下だけでなく、各国の王族にも恩を売れます。商会の株価はうなぎ登りですね」


「へへっ、違いねぇ。乗ったぜ、姉御!」


現金なものです。

でも、それでいいのです。

大義名分よりも、目の前の利益とやりがい。

それが私たちの原動力ですから。


私は椅子から立ち上がり、隣に立つ夫を見上げました。

ルーカス様は、ずっと静かに私の横顔を見つめていました。


「ルーカス様。忙しくなりますよ。新婚生活を楽しむ暇もないかもしれません」


「構わないよ」


彼は優しく私の髪を撫でました。

その瞳には、一点の曇りもありません。


「君が世界を整理整頓すると言うなら、僕はそのための氷を作るだけだ。それに、君が世界中を飛び回るなら、最強の護衛が必要だろう?」


「ええ。あなた以上の適任はいません」


私たちは微笑み合いました。

かつて「荷物は邪魔だ」と言われて城を追い出された私が、今や世界の荷物を管理する立場になろうとしています。

人生とは、本当に何が起こるかわかりません。


『マスター。システム名の登録をお願いします』


アルファが操作パネルを提示してきました。

古代のシステム名をそのまま使うのも味気ありません。


私は少し考えて、口を開きました。


「『インベントリ・ネットワーク』。それが新しい名前です」


『了解。管理者ヴィオラ・エルロッド。権限名、インベントリ・マスター(在庫管理者)として登録完了』


部屋中のライトが一斉に青く輝きました。

システムが再起動し、眠っていた機能が目覚めていきます。

足元の床から、微かな振動が伝わってきました。

この地下迷宮全体が、私の意志で動き出したのです。


「さて、まずは最初の大仕事ですね」


私はスクリーン上の、北の大陸を指差しました。

そこは極寒の地。

ルーカス様の魔法と相性が良さそうな場所です。


「目指すは北の大陸。最大のエラーを解消しに行きます」


「了解。防寒着の準備が必要だね」


「心配いりません。収納の中に、最高級の毛皮のコートが山ほどありますから」


私はポシェットの「黒い木箱」を軽く叩きました。

この箱はもう、ただの骨董品ではありません。

世界を救うための、最強の掃除道具です。


「行きますよ、皆さん。次は世界の大掃除です」


私の号令と共に、仲間たちが力強く頷きました。

地下迷宮の冒険は終わりました。

しかし、私たちの物語は、ここから本当の意味で世界へと広がっていくのです。


まずは手始めに、あの真っ赤な警告灯を、綺麗な青色に変えてやりましょう。

片付け甲斐のある仕事になりそうです。


(第3部 完)


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― 新着の感想 ―
面白かった!です。 ただ、一章と二章は別々のお話に分けた方が良いように感じました。世界観がごっちゃになると共感しづらものがあるので、頑張るキャラクター達が勿体ないです。
すごい。 いつの間にかSFファンタジーになっていた!
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