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【最終章完結!】「荷物は全部持って行け」と言われた悪役令嬢、城の中身を空にしました。  作者: 月雅
第3章

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第6話 認証エラーと強制排除


けたたましい警報音が、鼓膜を劈くように鳴り響きました。


『警告。警告。不法侵入者を検知。セキュリティレベル・レッド』

『対象エリアの「焼却処分」を開始します』


無機質なアナウンスが終わると同時に、通路の壁面に無数のハッチが開きました。

そこから現れたのは、黒光りする筒状の銃口。

古代の火炎放射器です。


「ちっ、やべぇぞ!」


ザックが叫びました。

筒先から紅蓮の炎が噴き出し、私たちを包み込もうと迫ります。


氷結界アイス・バリア!」


ルーカス様が杖を突き出すと、私たちの周囲に分厚い氷のドームが出現しました。

ゴォォォォッ!

炎が氷壁を舐め尽くし、猛烈な熱波が襲いかかります。

氷がチリチリと音を立てて蒸発し、白煙が視界を埋め尽くしました。


「くっ……火力が高い! このままじゃ蒸し焼きだ!」


最強の魔導師であるルーカス様ですら、額に汗を浮かべています。

この遺跡のエネルギー供給量は桁違いです。

力技で耐え続けるには限界があります。


「壊しましょうか、ヴィオラ? 壁ごと吹き飛ばせば止まるはずだ」


「いけません、ルーカス様!」


私はパネルの前で叫びました。

熱気で肌がジリジリと痛みますが、ここを離れるわけにはいきません。


「これは防衛システムです。力で破壊すれば、施設全体が緊急ロックダウンされ、二度と制御室に入れなくなります」


「じゃあどうするんだよ! 焼け死ぬぞ!」


レオンが半泣きになっています。

私は冷静さを保ち、「黒い木箱」を認証パネルに押し当てました。


「システムのエラーを修正します。……アルファ、援護を!」


『了解。バックドア経由で論理階層へ接続します』


アルファが首筋からケーブルを伸ばし、パネルの端子に接続しました。

私の目の前に、光のウィンドウが無数に展開されます。

流れるような古代文字の羅列。

かつて審問会で見たログと同じですが、今回はより複雑なプログラムコードです。


『エラー原因特定。管理者権限の不一致です』


アルファが報告します。


『現在のマスターキー(黒い木箱)は正当なものですが、システム上の登録名義が更新されていません。旧管理者による「放棄」ステータスが解除されていないため、新規アクセスが拒絶されています』


「旧管理者?」


私はウィンドウを指で弾き、履歴を遡りました。

そこに表示された名前に、私は息を呑みました。


『最終アクセス:300年前』

『登録管理者:オウェル王家』

『状態:職務放棄タイムアウト


オウェル王家。

私を追放した、あの国です。

彼らはかつて、この遺跡の管理者だったのです。

しかし、長い年月の間にその使命を忘れ、あるいは意図的に放棄し、このシステムを放置した。


私の手の中にある箱は、おそらく彼らが捨てたか、失くした「鍵」だったのでしょう。

それを私が拾い、ここまで持ってきた。


皮肉な話です。

彼らが捨てた国政も、この遺跡も、結局は私が尻拭いをする羽目になるなんて。


「……ふざけた話ですね」


私は怒りを込めて呟きました。

頭上の氷壁が、熱で薄くなってきています。

あと数分も持ちません。


「ですが、整理整頓は私の仕事です。不要なデータは削除させていただきます」


私は操作パネルに指を走らせました。

この手続きは、オウェル城を出る時にやったことと同じです。

古い契約を破棄し、新しい契約を結ぶ。


「アルファ、旧管理者の登録データを『ゴミ箱』へ移動」


『了解。……移動完了』


「続いて、新規管理者登録。名前はヴィオラ・エルロッド」


私は箱に魔力を注ぎ込みました。

箱が脈打つように光り、認証パネルと共鳴します。

承認しろ、と念じます。

私は逃げ出した彼らとは違う。

この散らかり放題の迷宮を、最後まで管理する覚悟がある。


『……承認プロセス、開始』


パネルの赤い光が明滅し、システムが躊躇するように唸りました。

炎の勢いが増します。

氷壁の一部が溶け落ち、熱風が頬を掠めました。


「ヴィオラ! もう限界だ!」


ルーカス様の叫び。

私は最後のエンターキーを叩き込むように、箱を押し込みました。


「認証しなさい! 私は、逃げない!」


ピロン。


軽やかな電子音が、轟音の中で響き渡りました。

パネルの光が、赤から鮮やかな青へと変わります。


『管理者権限、更新完了』

『ようこそ、マスター・ヴィオラ。防衛プロトコルを解除します』


瞬間。

壁から噴き出していた炎が、嘘のように消えました。

銃口がシュルシュルと格納されていきます。

残ったのは、焦げ臭い匂いと、白い湯気だけ。


「……た、助かったのか?」


ザックがへたり込みました。

ルーカス様も氷壁を解き、肩で息をしています。

私はパネルから箱を離し、深く息を吐きました。


「ええ。システム上の手続きは完了しました。これで、正式に私がここの責任者です」


オウェル王家の亡霊は、これで完全に消去されました。

物理的にも、データ的にも。


ゴゴゴゴ……。


目の前の巨大な隔壁が、重々しい音を立てて左右に開きます。

中央制御室へと続く道が開かれました。


「行きましょう。この奥に、全ての答えがあるはずです」


私は汗を拭い、先頭に立って歩き出しました。

開いた扉の向こう側。

そこには、床がありませんでした。


「……え?」


目の前に広がっていたのは、上下左右の感覚が存在しない、青白い光に満ちた無重力空間だったのです。


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