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【最終章完結!】「荷物は全部持って行け」と言われた悪役令嬢、城の中身を空にしました。  作者: 月雅
第3章

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第2話 暴走ゴーレムの「分別」方法


「ヴィオラ、下がって! 僕がやる!」


ルーカス様の鋭い声と共に、目の前に分厚い氷の壁が出現しました。


ドォォォン!


泥と瓦礫の巨人が振り下ろした腕が、氷壁に激突します。

凄まじい衝撃音が響き、氷の破片がキラキラと舞い散りました。

しかし、壁はヒビ一つ入っていません。


「……硬いな。古代の合金が含まれているようだ」


ルーカス様が杖を構え直しました。

周囲の気温が一気に下がります。

彼が本気を出せば、この地下空間ごと氷漬けにすることも造作もないでしょう。


「待ってください、ルーカス様」


私は慌てて彼の袖を掴みました。


「凍らせてはいけません」


「どうして? 襲ってきているんだよ」


「よく見てください。あれは私たちを襲っているのではなく、ただ『除去』しようとしているだけです」


私は冷静に巨人を観察しました。

泥人形のように見えますが、関節部分から覗くのは錆びついた歯車とピストン。

その動きは単調で、一定のリズムを刻んでいます。


私の目には、それが魔物には見えませんでした。

ゴミを吸い込みすぎて、排気口が詰まってしまった掃除機。

あるいは、メンテナンスを忘れられ、エラーを吐き続けている旧式の産業ロボット。


「あれはこの施設の防衛システムの一部……いえ、ただの自律清掃機です。きっと、散らかった瓦礫を片付けようとして、自分自身にゴミをくっつけてしまったのでしょう」


「清掃機……? あれが?」


ルーカス様が怪訝な顔をしました。

その隙に、巨人が再び腕を振り上げます。

「ゴゴ……異物……排除……」


「可哀想に。長年放置されて、処理落ちしているのですね」


私は一歩前に出ました。

破壊する必要はありません。

修理、あるいは停止させてあげればいいのです。


「姉御! 危ねぇぞ!」


レオンが悲鳴を上げますが、私は止まりません。

私の「管理領域」である半径五メートル以内に入れば、こちらのものです。


私は右手を巨人に向けました。

ポシェットの中の「黒い木箱」が、共鳴して微かに震えます。


収納インベントリ、スキャン」


脳内に、巨人の構造図が青いラインで浮かび上がりました。

やはり、中心核に動力源があります。

周囲の泥や瓦礫は、ただの付着物です。


「原因を特定しました。動力炉の暴走です」


なら、コンセントを抜いてあげれば止まります。


対象抽出ピックアップ――『動力源(魔石)』」


私は指先を軽く弾きました。


シュン。


風を切る音と共に、巨人の胸元から、バスケットボール大の光る石が消え失せました。

それは瞬時に私の収納空間へと転送されます。


「……あ?」


巨人の動きがピタリと止まりました。

赤い光を放っていた目が、フツリと消灯します。


ズズズ……ガラガラガラッ!


動力を失った巨人は、ただのゴミの山へと戻りました。

形を保てなくなり、その場で崩れ落ちます。

もう動きません。


「す、すげぇ……」


レオンが腰を抜かしたまま呟きました。

ルーカス様も、杖を下ろして苦笑しています。


「君にかかれば、古代の守護者もただの粗大ゴミか」


「ええ。分別すれば、資源にもなりますから」


私は収納リストを確認しました。

先ほど回収した動力源。

それは、地上では見たこともないほど高純度な、透き通るような青色の魔石でした。


『名称:高純度魔力結晶エンシェント・コア

『状態:極めて良好』


これほどのエネルギーがあれば、帝都の全街灯を一年は灯せるでしょう。

商会の資産として計上しておきます。

もちろん、この迷宮の管理者権限を得た暁には、再利用するつもりですが。


「さて、道を塞いでいた『動くゴミ』も処理しましたし」


私は崩れ落ちた残骸を、手際よく収納していきました。

貴重な古代金属が含まれています。

リサイクル可能です。


綺麗になった通路を見て、私は満足げに頷きました。


「先へ進みましょう。この調子だと、奥はもっと散らかっていそうですが」


「……ヴィオラ、君は本当に頼もしいね」


ルーカス様が私の髪についた埃を優しく払ってくれました。

私たちは再び、薄暗い回廊の奥へと足を進めます。


コツ、コツ、と足音が響きます。

先ほどまでの騒音が嘘のような静寂。


ですが、その静けさは長くは続きませんでした。


「助けてくれぇぇぇ!」


通路の奥から、切羽詰まった男の叫び声が聞こえてきました。

私たちの他にも、誰かいるようです。


「……悲鳴?」


「先客みたいだね。行ってみよう」


ルーカス様が警戒して杖を構えました。

私たちは顔を見合わせ、声のする方へと走り出しました。


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