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影追う者  作者: 星見流人
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番外編:Another Story of Joker③ ~零との邂逅~

 初めての任務はアンコール大臣の護衛だった。

 俺は得物のショットガンを手に、ウィーゲル地方まで歩く。

 というのも、今回アンコール大臣はウィーゲル独立軍と同盟を締結しに行くのだ。ここのところ、ウィーゲルでは北京民主共和国に対するテロが続いていると聞く。

「あんまり張り切りすぎるな」

 落ち着いた様子で大臣は言う。

 彼は交渉の席に着く時はグレーのスーツに紅いネクタイを締めている。赤色に思いいれがあるのだとか。

 それはさておき、俺は無事にウィーゲルの地方都市イスカンダリアまで護衛することに成功した。まさか、生まれた国に戻ってくることになるとは。

 時刻は夕方。宿を取り、交渉を明日に控えた時に入り口を護衛していた部隊の兵士が一人叫び声を上げた。

「零だ! 零が現れた!」

 零という名前は初めて聞く。

「ジョーカー。気をつけろ。世界最強の暗殺者と呼ばれる男だ」

 俺はとりあえず屋上に大臣を退避させる。

 そして宿のドアを開けて外に出た。

「おやおや、意外に若いな。護衛隊長殿か」

 三十歳くらいの短身痩身の男が短い刀を構えている。あれが忍者刀というものだろうか。

 端正な顔立ちに背中まで届く漆黒の髪。それに予想していたよりもずっと穏やかな瞳をしている。これがあのジャパニーズだというのか。

 大地には兵士たちが倒れていた。しかし、死んではいない。

「アンタが、零か?」

「そうだ」

 短く鋭い答え。その黒い瞳は凄まじい殺気を放った。さっきまでとは雰囲気が全然違う。

 どくん。

 一瞬、あの日の光景がフラッシュバックする。

 これが『怖い』ということなのか。

 俺は両足が震えるのが分かった。

 怖い。怖い。怖い。

 駄目だ。恐怖心だけは抑えられない。

 何よりも俺は自信が無い。この男に勝つという自信がない。

「臆するな。晩節を汚すぞ」

 凛とした声。

「せめて、悔いは残すな。そのためにも全力で立ち向かえ!」

 落ち着け。俺とヤツとは五メートルほどしか離れていない。近接戦闘は俺が最も不得手とするところだ。それに銃の特性上、近距離戦はまずい。ヤツなら銃の弱点など知っているだろうから近接戦闘に持ち込むだろう。

 予想通り零は高速で接近してきた。

 一撃目の刃を銃身で受け止める。

 みしっと銃のきしむ音がした。

「反応はなかなかだ」

 ヤツは笑いながら一旦飛びのいた。

「これはどうかな」

 一瞬で姿を消したかと思うと、天井を跳躍して襲い掛かってくる。

 これも何とか銃身で受け止める。しかし、体全体に重い衝撃が伝わってきた。

 身体は俺よりも小さいはずなのに。

 斬撃を一撃放つたびに飛び下がる。

 おかしい。ヤツの忍者刀は近距離での差し合いが有利なはず。

「お前を見ていると、俺の弟子を思い出すよ。年齢も同じくらいだ」

 急に柔らかい物腰で言い出した。

「だが、任務は任務。悪いが遊びはこれでおしまいだ」

 その声が聞こえたのとほぼ同時に視界が暗転した。

 気がついたのは大きな爆音がした時だった。左わき腹が痛む。

 そうか、俺は零に倒されたのか。

 それにしてもあの大きな音は何だろう。

 ホテルから出てみると目の前ではオレンジ色の炎が街を支配している。

 空を埋め尽くさんばかりの戦闘機がごうごうと飛んでいる。

 戦闘機は北京民主共和国のものだろう。

 テロ鎮圧に来たということは容易に想像できた。

「そうだ。大臣、大臣はどこだ」

 俺は銃を拾い上げて、屋上へ向けて急ぐ。

 階段を上って屋上へたどり着くと、そこには血まみれの零が立っていた。

こんばんは、Jokerです。

とうとう出ました、零師匠。

最初は出す気がなかったんですが……


ではまた次回お会いできることを祈りつつ……

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