第十一話:亡国への道
「ぼぼぼ、ボクの愛は無限なんだッ! 友愛なんだぞッ! 必ずしもボクの思いは公約じゃないんだッ! 愛は憲法すらも越えるんだ!」
「黙れ、このルーピー! 今から貴様を日本に送って処刑してやるから覚悟しておけ」
紫電は『聖拳甲隊』の四人を躊躇なく斬り刻んだ後、鳩川を捕まえて縛り上げた。
「紫電、それは俺の仕事」
「何だ、貴様」
「ジョーカーだ」
ジョーカーはため息ひとつついた後
「とりあえず、俺が空港までこのキチガイを送るわ」
と投げかける。
「ふん。こんな変態相手に仕事とは貴様もついてないな」
「お互い様だ」
少し笑った後、紫電とジョーカーは別れた。
「俺はアイツに追いつけるのかな」
それは相手には聞こえていない。
ジョーカーはまずドレスデンのギルドへ行き、手続きを済ませる。ギルドから新しく日本への護送依頼を受けて、空港へと向かった。
アルベルトは強風と共に日本へ向かっていた。
大阪府に潜伏し、準備していた研究所へもぐりこむ。
「やれやれ。剣部隊があそこまでもろいとはね」
コーヒーを淹れる。
灰色のコンクリートで四方を固めた無機質な部屋で一人佇んでいた。
「第零機関はまだ発展途上、ということか。理論上は彼のようになれるはずだからねえ。ところで、強風。あの男はもうカプセルに入れたかね?」
「はい」
強風は音を立てずにアルベルトの前に現れる。
「確か、ロンメル総長……でしたね。よろしいのですか? ……昔の仲間だった、と聞きましたが」
喋りにくそうに強風は会話を続ける。
「いいのだよ。あんな国粋主義者に出てきてもらっては困るのだ。あれはあれで扱いにくい。そうだな、第零機関の実験台にくらいにはなるだろう。例の物質を彼の体内にいれて実験するとしようか。どれほど自我を保っていられるのか楽しみだよ」
めがねをいじりながらアルベルトは笑って答えた。
鳩川を日本政府に引き渡すと、ジョーカーは五千万ドルの報酬を東京都法務省で受け取った。
「えええ!? こんな友愛キチガイにこんな賞金かけられてたの?」
官僚に尋ねる。
「はい。彼は日本滅亡の主犯及び邪教である友愛教の教組ですから。日本以外にもアメリカやイギリスが指名手配していましたし」
「世も末だねえ。これを選んだ日本人が多かったってんだから」
大量の賞金を手にジョーカーはほくほく顔で日本を後にした。
鳩川が逮捕、日本政府による裁判が始まってから二ヶ月が経った。世界は一時的に平和を取り戻した。『クィーン』のもたらした混乱は全世界で収束し、人類は大きな傷跡を歴史に刻みながらも再び歩き始める。日本では日狂組によるミンス党が圧倒的な支持のもとに政権を握り、鳩川を秘密裏に釈放させる計画を進めていた。日狂組とは朝鮮連王国出身のキムジョルソンが組織した労働組合の一種である。目的は日本教育の友愛化とされ、第二次世界大戦での日本の植民地支配に対する謝罪を未来永劫行い、日本が朝鮮連王国の属国になるべしと唱える集団だった。誰も日狂組の行動に気付かず、内側から徐々に崩壊していくのに見向きもしない。
表向きの平和は続いた。
しかし、それも長くは続かなかった。
アルベルトが突如として東京都を襲い、日本政府を掌握したのである。
アルベルトの後ろには一世紀近く前に死んだはずの人間、遥か昔の英雄などがぞろぞろといた。
「第零機関は完成した。これで完全なる新生人類による新しい歴史が始まる。今の劣った現生人類は世界にはいらない。『彼』のような、進化した人間が今再び地球を統べるときが来たのだ。手始めとして、愚民の多い日本から占領し殺戮してやろうではないか」
アルベルトは日本人全員の抹殺を宣言した。
「鳩川たちを首相に担ぎ出した愚かな民族など滅んでしまえばいい。考えることをやめた人間などクズほどの価値もない!」
日本を中心とした戦争が再び始まろうとしていることに気付くものはほとんどいない。
こんばんは、Jokerです。
参院選がもうすぐですね。
日本が亡国となるか否か。
無知は罪という言葉がありますが、今においてはその通りだと思います。
ではまた次回お会いできることを祈りつつ……