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影追う者  作者: 星見流人
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番外編:幸せになるために②

「『クィーン』、君はどう思うね?」

 アルベルトは暗い部屋で『クィーン』と呼ばれる超高性能ロボットに語りかけた。

 ロボットとはいっても、人間の脳みその形をしたグロテスクな物体である。大人の頭よりも一回り大きなフラスコの中で、緑の液体に満たされ培養されている。

「難シイ問デスネ」

 その声は機械によって作り出された合成音。

「真理を得ることは人を幸せにするか? 真理を得ずにもがき苦しむ私は果たして真理を得ることによって幸せになれるか?」

「サア……。タダ……」

「ただ?」

「真理ヲ得ルトイウコトハ、真理ヲ探スコトガ出来ナクナルコトヲ意味シマス」

 アルベルトは逡巡した後

「それはきっと不幸なことだろうな。私は真理という幸せの境地を得るために真理を求めているのだが、それを手にしたとたん不幸になるとは」

 と小声で返事した。

「矛盾デスネ」

「ああ、そうだな。自分でも可笑しいと思うよ。幸せを掴んだはずが、手に入れたものは不幸なんだから」

「幸セデアルコトノ必要充分条件ハ不幸デアルコトナノカモシレマセンネ」

「私は今不幸だろうか?」

「サア?」

「それとも私は自分の幸せに気付かないだけなんだろうか。あるいは幸せになることは不幸を手に入れることを意味するのだろうか」

「サア?」

「この年でも分からないよ。『彼』ならばわかるのかもしれないがね」

「『彼』コソ不幸ナ人デショウ」

「そうかもしれない。その優れた頭脳にあらゆる英知を得た。だからこそ、『彼』は不幸なのかもしれない」

「マルデ……」

「誰もいない暗闇の中で『彼』は一人佇んでいるのだろうから」

「アナタハ、ソレトハ別ノ暗闇デ一人デイルノデハ?」

「ああ。そうかもしれない。誰も私を理解できないし、結局私は一人だろうね。……私は本当に不幸だろうか、それとも幸せだろうか」

「一人デモデスカ?」

「一人でも。それを私が望むなら。ただ時折思うんだよ。『普通』に生まれたかった、と」

「ソウデスカ」

「『普通』であることのありがたみが分かるよ。例えば、病気になったとき、いかに健康が有難いか分かるだろう? あれと一緒だよ。私はやはり幸福であり、不幸であるんだな」

「ソウデスカ」

「『普通』に生まれて、『普通』に成長し、『普通』に大人になればこんな道は歩まなかっただろうからね。ああ、でも……そうでなければこんな刺激的な人生はなかったわけか。どっちが良かったのだろうな? ただ、隣の花は青いというのか、やはり『普通』であるありがたみは私が一番わかるよ」

こんばんは、Jokerです。

またもや番外編です。

再び哲学的な話です。

幸せって、つまるところ一体何なんでしょうね?


ではまた次回お会いできることを祈りつつ……

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