表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絵本  作者: ゆきまる
4/4

グリとグラ-4章-

森の奥へ進もうとしたときだった。


胸の奥に、かすかにざわりとした感覚が走った。

心臓を軽くつままれたみたいな、不思議な違和感。


「ひな先生? どうしたの?」


あすかが心配そうに覗き込む。


「……ううん、なんでもない。」


そう答えながらも、私は気づいていた。


——この感覚、知っている。


子どもの頃。

母に読み聞かせてもらった絵本の“続き”を夢で見ることがよくあった。

その中で、私は何度も死にかけた。

崖から落ちたり、怪物に襲われたり、炎に焼かれたり。


でもいつも“元の場面に戻って”またやり直していた。


私はずっと、あれはただの夢だと思っていた。


けれど今は違う。

この世界に来て、はっきりわかった。


——あれは「死に戻り」だった。


森の風が鳴り、木々が揺れる。

私は目を閉じ、胸の奥底に意識を沈める。


すると、視界の端に文字が浮かんだ。



【死に戻り:使用可能回数 3 】



「っ……!」


思わず息を呑む。


あと3回。

この世界で“死んだら”そのたびに戻れる。

だけど——3回しかない。


全部使ったらどうなるのか?


もう戻れないのか?

それとも、消えるのか?


考えるほど、背筋に冷たいものが走った。


「ひな先生、ほんとに大丈夫……?」


あすかの小さな手が、不安げに私の袖をつまむ。


私は笑顔を作った。


「大丈夫だよ。ちゃんと“守る”から。」


この子を不安にさせるわけにはいかない。


死に戻りなんて、説明しても余計に怖がらせるだけだ。


そう思っていたのに。


——その時。


森の奥から、低く唸るような声が聞こえた。


「……なんか、変な声した。」


あすかが私の背に隠れる。


私はゆっくりと声のした方に振り向いた。


そこにいたのは——


**巨大な影。


おそらく、“この森の主”のような存在。**


一本角が生え、樹木のような体躯を持ち、

目のような光が複数こちらを向いている。


「ひな先生……あれ、絶対やばいよ……」


「……うん、あれはやばい。」


その瞬間、影が地を揺らすような咆哮を上げた。


ドォンッ!!


「逃げるよ!!!」


私はあすかの手を掴んで走り出した。


だが、影の主は想像以上に速い。

木々をなぎ倒し、まっすぐこちらへ迫ってくる。


「ひな先生!!」


あすかの叫びと同時に、足がもつれた。


——そして視界が黒い影に飲み込まれた。



──暗闇。


そして、光。



次の瞬間、私は“さっきいた場所”に立っていた。

あすかが心配そうに私の腕を掴んでいる。


「ひな先生? 急に止まってどうしたの……?」


倒れてもいない、襲われてもいない。

ほんの十秒前に戻っている。


夢じゃない。


死に戻ったんだ。



【死に戻り:使用可能回数 2 】



「……っ!」


数字が減っている。


二度と味わいたくないほどの恐怖。

でも、死が“やり直し”で済む保証はあと2回。


深く息を吸い、私はあすかの手を取った。


「あすかちゃん、じっと聞いて。

 これから、すごく危ないものが来る。」


「ひな先生、知ってるの……?」


「うん。だから──私を信じて。」


私はもう一度周囲を見渡す。


そうだ。

死に戻ったからこそ“知っている未来”がある。

回避できる道があるはずだ。


あと2回。

それを無駄にしないために。


森の奥から、再び影が揺れる。


私はあすかを抱き寄せて走り出した。


——同じ死は、二度も許さない。


物語の中心へ。

帰るために。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ