#07 2度目の悲鳴
前話から読んだ方が分かりやすいかも知れません!
「な?そこのガキより使えそうだと思わねえか?」
んんー、と狼男の話を聞いて頭を抱えているヤンキー赤ずきんさん。見ればわかる、揺れている。ヤンキー赤ずきんさんの心が!
完全に狼男の手のひらの上で踊らされている僕らに出来ることは何があるのか……、それは一つだけ。
「アイツよりも、優れてるって思わせる事……」
でも、運動神経は皆無だし、頭がいいと自慢できるほどの頭脳は無い。簡単に言えば、詰んだ。と言うやつだ。
ヤンキー赤ずきんさんがどんな結論を出すかは分からないけど、それが僕のこれからを大きく変えるということは言わずとも分かった。
「オレは……」
ごくり…、とその場の全員が息を飲むのを感じる。ドクドクと心臓の音がうるさいくらい鳴っているみたいだ。今の僕では、狼よりも劣っている。それは猿でもわかる事だ。
「オレ、は……。旅に出たい!」
先程の空気を微塵も感じさせない、間抜けな声が思わず出てしまった。いつにも増して気合いの入っているヤンキー赤ずきんさんは僕と狼男を交互に見て、口を開く。
「はじめは一人で行こうと思ってた。けど、オレの周りには2人もオレの旅に着いていきたい奴がいるみたいだ。
だから、こうしよう」
「……」
「3人で行く。その代わり、約束がある。オレの旅の目的は、他の童話のその後を見届けること。理由は後々話すとして……、その目的のために3人で頑張る。どうだ?」
話がある程度まとまった後でも僕は固まっていた。いかにもそんな協力事が苦手そうなヤンキー赤ずきんさんが、協力しようなんて言うとは思わなかったから。それは狼男も同じようで、目を見開いて固まっている。
そんな中、おばあさんだけはよく言った!というような自慢げな表情でこの一部始終を見ていた。
「ちょっと待て、赤ずきんコノヤロー!そんなのは聞いてねえぞ!?オレはガキ抜きでの話を…」
「これが嫌なら、オレは誰も連れていかずに一人で旅をする。別にいいんだぜ?二人の人生なんてオレにとっちゃ関係ないんだから」
そこまで言われて、狼男はその後の言葉を飲み込んだ。
それほどおばあさんの元で雑用として働くのは嫌なのだろうか?別におばあさんとの二人暮しも悪くないと思うけど。
「僕は狼が一匹増えるのくらい良いよ」
「お前なぁ!その仏頂面がいちいちムカつくんだよ…!」
ぐいーと頬を掴まれて伸ばされるがなんて事ない。
仕返しとして今度は尻尾を引っ張ると、さっきよりもデカイ悲鳴を出して痛い痛いと言っている。
そんなデカイ声のせいで僕はヤンキー赤ずきんさんにゲンコツされたが、結構痛かったのは言うまでもない。
こんなちっぽけな体のどこにゴリラのような力が隠されているのか……。