#06 用心棒、クビ!?
「ふふ、アンタら思った以上に気が合うんじゃないかい?」
「合うわけあるか!大体、こいつはオレの用心棒で、こっちの狼はババアのだろ!?」
「アタシのって訳じゃないよ。アタシを食べようとしたから雑用として使ってるだけ。ケイトが連れてってくれてもいいんだよ?」
「やなこった。なんでオレが面倒見なきゃなんねえんだ!」
僕達の前では、ヤンキー赤ずきんさんとおばあさんの言い合いが行われている。ヤンキー赤ずきんさんは、僕の他に狼男も追加されたらたまったもんじゃないのだろう。全力で否定している。
当の本人は暇なのか、全く気にしていないのか、自分の毛並みを整えている。
「なあお前、オレと変わってくんね?雑用とかやってらんねーわ。まだガキの子守りしといたほうが楽だ」
「僕だっておばあさんにこき使われるのはイヤ」
失礼なことを言っている自覚はあるが、嫌なものは嫌だ。まあ、ヤンキー赤ずきんさんの用心棒も嫌だが、雑用よりはマシだと思ってる。
変わって欲しかったらしい狼男はブスくれたようにそっぽを向いて、尻尾をヘナヘナにさせていた。顔が見えなくても分かりやすい…。
「僕じゃなくてヤンキー赤ずきんさんに交渉したらいいのに…」
そんな僕の何気ない一言にヘナヘナの尻尾が元気を取り戻し、耳は立ち上がっている。僕は単純なヤツだと改めて思った。
「おいお前!オレも連れてけ!」
「は……」
早速交渉しに行った狼男を信じられないと言う顔でヤンキー赤ずきんさんが見ていた。そして、僕が元凶だと感じ取ったのか殺意の込められた視線を感じる。
僕は提案をしただけで、行動したのは狼なのに、酷い奴だ。
「お前なぁ、余計なことをこのバカに吹き込むなよ…」
「だって、あの狼、凄い落ち込んでたから」
だってじゃねぇし…、と呆れ顔で言うヤンキー赤ずきんさんを希望の眼差しで狼が見ていて、こんなに狼って単純なヤツなのかと不思議に思った。
僕の中の狼ってずる賢いタイプで、こんな単純なバカじゃ無いはずなんだけどな…。
「馬鹿馬鹿言うなよ!言っとくがな、オレは使えるぜ?少なくとも、そこのガキよりはな」
「…ほう?」
え、まじ?ちょっと興味持ち始めてる…。したくも無いのに用心棒やらされて、1日でクビ?そんな悲しい結末、絶対にいやだ。
「ちょっと待って……」
「どう使えるって言うんだよ」
「体力は沢山あるし、この耳と顔で聞き込み調査は大得意。足の速さも、負けたことないぜ?」
「聞き込みに使えるのはいいな……」
う、嘘だ。そんなの、僕も出来るし、体力だって…!
いや、体力は無いな。
次もお楽しみに!