#05 怒鳴り声
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ケイト視点
オレの用心棒、はじめは変なやつだと思った。多分、オレより年上なのに迷子になってるし、表情全く変わんねえし、オレと同じでここが童話の世界だと知っていた。用心棒なんて建前で、本当はこの不可解な人物を見張るために傍に置いておこうとしたまでだ。絶対に警戒を怠ったら駄目だ。
ばあちゃんは話す前は勿論警戒していたが、今では普通に可愛がってる。
「ホント、なんなんだよ……」
「…あの子の事かい?」
ばあちゃんがお茶の用意をしながら、声のトーンを少し下げてオレに聞いてきた。
「アンタが思ってる様な子じゃないよ、純粋に迷子なんだろう。自分のするべき事も、ここにいる理由も分かっていない。だから、誰かが導いてやらなきゃね」
「は…」
誰かが導く?誰かって誰だよ。ばあちゃんは分かっていたとしても、言わない節がある。本当に悪い癖だ。
「何となくだが、ケイトと相性いい気がするけどね!あの子」
「はあぁぁッ!?」
それは、オレに導けって言ってるようなもんだぞ!ふざけんなよ…、なんて言うオレの心からの叫びはばあちゃんに届くことは無かった。なんでかって?オレよりもでかい声を出した馬鹿がいるからだよ…。
ー数分前ー
はじめ視点
「……」
「……ズビッ」
気まずい。本当に気まずい。隣にいる狼男はさっきまで泣いてたから鼻水啜ってるし、自分可哀想だろ?みたいな目で見てくる。自分がおばあさん食べようとしたのが悪いのに、それ以上の仕打ちをされたからか、責任転嫁も甚だしい。というか、こっち見んな。
「おい、ガキ。可哀想な俺にかける言葉はねえのかよ」
「自分で可哀想っていう人にかける言葉は持ち合わせてない」
「口だけ達者なガキだな、うぜぇ」
先程までおばあさんにペコペコしていた狼は一体どこに行ってしまったのか…。ヤンキー赤ずきんさんと同じくらいの口の悪さだ。こんなやつ、もっとおばあさんに怒られればいいのに。
「チビー、バカー、アホー……」
無言になったかと思ったら、小声で凄い悪口を連呼していた。
誰に向けての言葉なのかはどうでもいいが、凄いムカついた。だから、定期的にピョコピョコと動く耳をグイッと掴んで引っ張った。
すると、
「は!?ぎゃあああっ、痛っった!?」
「え、そんなに?ごめん」
「あ、謝ったら、何でも許されると…思うなよっ」
涙を目にためながら言うもんだから、流石に罪悪感が湧く。耳は痛いんだね、ごめんよ…。
「うぅ……」
「お前ら、うるせえよ!!」
狼の泣き声が聞こえ始めたと思ったら、次に僕の耳に聞こえたのはヤンキー赤ずきんさんの怒鳴り声だった。
僕、怒鳴られ過ぎじゃない?
本当は狼男も赤ずきんと同じくらい口が悪いです。
おばあさんには媚び売ってただけかも……。