#04 おばあさん
「狼、はよ動かんかいッ!アタシを食おうとした罪は重いわよ?」
「うわぁぁん!ごめんなさい…、お願いだから食べないで!」
「なんだ?この状況」
「信じられない…」
何故こんな状況になっているのかは分からない。無事、おばあさんの家に着いた僕らは意を決してドアを開けた。するとそこに広がっていたのは、絵本の赤ずきんで見たおばあさんとはかけ離れたタイプのおばあさんと、そのおばあさんに怒鳴られながら掃除をしている狼……、いや、狼男だった。赤ずきんだけではなく、狼まで原作とは容姿が変わっていて、灰色の髪に、切れ長の黄色い目、泣き叫ぶ口から覗く八重歯、そして自然と目の行く大きな耳。狼だったはずの人物は、狼男と化してしまったようだ。こんなこと…、あるのか?
「だから言っただろ、気合い入れろって」
「言ったけど…、なんかこんなに元気なおばあさんだとは思わなくて」
「悪く言えば凶暴なババアだな」
赤ずきん!辞めろよ、そういうことを軽く言うのは!いつあのボディビルダーも顔負けの般若みたいな顔してるおばあさんがこっちをロックオンするか分かんないんだから。すると、僕の恐れていたことが起こり、狼を怒鳴っていたおばあさんがこっちを見て、何も言わずに近づいてくる。
「誰がババアだ!まだまだピチピチの70歳じゃ!」
「ババアじゃねえか!」
なんだとっ、と取っ組み合いが始まるかと思いきや、おばあさんと僕の目が合った。・・・と数秒の間とともに、シュバッと目の前に来て頬をムニムニと触り始めた。
「うーむ、ふむふむ…。あんた、この世界の奴じゃないね?」
「はい」
「なんでここに来たか分かるかい?」
「…全く」
「フッ、だろうね。分かったやつは、そんなキラキラとした目してないから」
別にキラキラした目をしているつもりは無かったけれど、まあとりあえず警戒は解かれたみたいだし良かった。
含みのある言い方だったけど、分かった奴はキラキラした目をしてないってどういうことなんだろ。
「まあ、今日はお客さんがいっぱいだね。赤ずきん、手伝いな。お菓子は作っとるよ」
「よっしゃ!おい、お前ばあちゃんのお菓子は美味いんだぞ…って、お前名前なんだっけ?」
年相応の笑顔を見せるヤンキー赤ずきんさん。すると、僕の自己紹介をしていなかったことに気づいた。ヤンキー赤ずきんさんの本名は出会った当初に聞いたけど、僕は何も言ってなかったな。色々起こりすぎて、冷静に頭が働いてなかったし、しょうがなかったんだけどね。
「そういえば、言ってなかった。氷室はじめ、よろしく」
新キャラのおばあさんと狼(狼男)の登場!