#39 記憶を思い出して
「あれ?おばあさんが犯された罪をご存知ない?てっきり、ご家族には話しているのかと…。これは失礼致しました。ワタクシがペラペラと話して良いことではなかったですね」
そういうことはちゃんと分かってんだ、と少しメイベルへの印象が変わった。ずっと空気の読めない変なやつという印象でしか無かったから、人らしい感性を持っていることにびっくりしたのだ。
「母さんは知らないだろうよ。でも、俺は何となく知ってる。けど、詳しいことは知らないから聞きたいだけだ」
「では何故、赤ずきんさんは知っているんですか?」
「……昔、見た」
これ以上は、昔の何も聞けなかった不甲斐ない自分を思い出しそうで言いたくなかった。
もうこの話は深掘りして欲しくない。そんな俺の心の声を聞いたかのように、メイベルは話を広げようとはせず、「じゃ、話しますかね」と言って、指を鳴らした。
「まず、あなたのおばあさん、デージ・レイヤーは大きくわけて、2つの罪を犯しました。
一つ、“童話破片窃盗罪”。
一つ、“童話介入”。
もちろん、どちらも重罪であり、本来ならば即刻死刑になります。けれど、おばあさんには死刑に出来ない、ある理由があった」
どんどん俺の記憶が鮮明になって、話を聞く度に思い出してきた。ばあちゃんは昔、童話管理館の偉い人だったはずだ。でも、罪を犯して、誰かの所に向かわなきゃ行けなくなった…的な事も書かれていた気がする。何年か前だし、あやふやだが、一応この歳まで気にしていたのだ。所々は覚えている。
「さて、ここで問題でーす!何故、貴方のおばあさんは死刑に出来なかったと思いますか?」
正直、そんなことを孫の俺に聞くなと思った。
けれど、所詮は電球人間。人間の繊細でめんどくさい感情や考えを理解することなんて出来ないだろう。
「まあ、んー……偉い人で、下手に手を出せなかった!とか?」
「ふむふむ、違います☆でも、想像以上にいい所を突いてますよ」
そう言ったメイベルは陽気な鼻歌を歌いながら、胸元のポケットから出したメモ帳に何かを描き始めた。
「よし、では説明を!」
書き込んだ紙を俺に見せながら、メイベルは大袈裟な身振り手振りで説明を始めた。
「まず、この童話の世界。この世界の一番頂点に君臨しているのは、“創造者”。その次が“読者”。最後にその他諸々。その中に登場人物たちも含まれます」
「その創造者ってのは?」
「さあ?ワタクシも見たことがなく、一体どんな姿形をしているのか、何人いるのか、情報が全くないんです。分かっていることはただ一つ、この世界の一番の権力者であり、神であるということのみ。
そんな雲の上の存在に気にいられていたんですよ。貴方のおばあさんは」




