#38 過去と今
「読者がいなければ、ワタクシ達にとって大切な童話は生まれないし、登場人物に息が吹き込まれることもない。
そんな大切な存在を匿っている貴方たち。考えた結果、罰則は無くなりました。当然です。
けれど、そんな例外をこれまで罰を与えられてきた人達が許すはずもない。だから、条件を出します☆」
真剣な空気が一瞬で緩み、思わずフッと息を吐く。
メイベルは頭である電球をクルクルと回し、ピコン!と聞いた事のない音を鳴らして、声を発する。
「七つの童話の世界へ旅をし、貴方のおばあさんが犯した罪を償ってください!」
脳が処理をするのに、何秒かかったのだろう。メイベルが、固まったままの俺の名前を呼んでいるのが遠くで聴こえる。
「ばあちゃんが犯した……罪?」
「あ、やっと反応した…。そうです!貴方のおばあさん、デージ・レイヤーですよね?」
「そ、そうだけど……」
メイベルの話を聞いて、正直、全く信じられない──ということもないのだ。俺が旅に出ようと本気で決意したのは、はじめの為でもばあちゃんからお願いされたからでもない。
あの日記に書かれていた事について、ばあちゃんについて知りたかったからだ。
小さい頃、俺はばあちゃんの家で、とある日記を見つけた。
その日記を開くと、中から折りたたまれた一つの紙が落ちてきた。
【童話管理館、副館長デージ・レイヤー様
貴方は以下の、“童話破片窃盗罪”、“童話介入”の二つの違反行為をしたとして、副館長退職の他、下記の場所への移住をお願い申し上げます。
また、移住前には一度館長へご挨拶に伺いますようお願いいたします。】
丁寧な言葉遣いの数々、正直この短い文さえ読むのが大変だった。
また、確認すると、紙の下ら辺に書かれた住所はばあちゃんが今住んでいるここで間違い無いということも発覚した。
けど、問題はそこではない。ばあちゃんが罪人だったのだ。でも、この手紙からは読み取るに、もう罰を与えられた後なのかもしれないと思った。じゃあきゃ、今ばあちゃんはここで平和に過ごせてはいないだろう。
少なくとも、それ以上幼い俺が検索することはなく、ばあちゃんへの不安と、信じきれない不甲斐なさが俺を支配していた。
「おばあさんの罪はとてもじゃないが一人で償えるものではなかった。だから、タイミングが良かったです!一応孫である貴方が自分からここに足を踏み入れてくれて」
頭が電球で出来ているからか、所々違和感を感じる言葉があったりする。一応孫ってなんなんだよ…って感じだし、人の皮を被った違う生き物のようにも感じてくる。
それにプラスして、コイツは全てを遠回しで伝えてくるので結論まで行くのに時間がかかるのだ。
優雅におしゃべりタイムを過ごしているほど暇では無い俺は、天邪鬼を相手にしているようで正直イラつく。
「単刀直入に言えよ。ばあちゃんが犯した罪ってなんなんだ」




