#36 犯人発覚
「で?この狼に一体何があったって言うのさ」
暴れることを辞めない狼。その姿は獣と同様で、僕らの知っているアイツじゃないのは確か。
満月を見たら凶暴化!とかならまだわかるが、今は夕方。月なんて見えてないし、今日はドンピシャで満月という確率も低いだろう。
それに、今日の雲は厚い。星は出ていても見えないだろうし、月だって見えるか分からない。
「はじめさん、この狼何故か心の声が見えないんです。黒い霧で覆い隠されてるみたいに」
クラージュ君は、眉を顰めて、頑張って見ようとしているが、見えないようだ。
一体、何故狼男の心の声は見えないのか。というかその前に、クラージュ君の眼は一体、どこまで見えるのだろうか。ハッキリしないことだらけで、頭がこんがらがってきた。
「直接聞いてみるとか…?」
「聞けると思いますか?今のコイツに」
クラージュ君が狼男に指を指し、言った。分かってはいたが、ことごとく打ち砕かれていく希望に、頭を抱える。
どうしよう。どんどん不安で胸がいっぱいになってきた時、僕はあることに気がついた。
眼だ。
狼男の眼がおかしい。
逆に、今までなんで気づかなかったんだって思われるかもしれないが、黄色の瞳と“赤色”の瞳があった。どちらの眼も赤色になっていることもあれば、オッドアイのようになっている時もある。
今はオッドアイ状態だ。
この眼の色の変化が狼男の凶暴化の原因となっている。そう考えていいだろう。
「ねぇ、狼男の眼。おかしいよね。もしかして、何かの術にかかってるんじゃ……」
「うちの妹のね」
「…へ?」
「うちの妹…」
「聞こえなかったわけじゃないと思いますよ」
お決まりの流れをしたい訳では無かったが、この会話だけでびっくりするほど簡単に有力情報を貰えた。
狼男を凶暴化させた犯人は、魔女さんの妹。この屋敷に住んでいる、屋敷の主ということになる。
「にしても、これはチャンスなんじゃないですか?」
「チャンス?」
「はい、魔女さんの妹さんが犯人とわかったなら、話を通すことも容易いわけでしょう?問題は、何故狼男に術…魔法をかけたのか。魔女さん、何か妹さんの地雷とか知りません?」
「地雷…。正直、私は妹と仲がいい訳じゃなくて、あまり話すこともしていなかったの。だから、力になれないと思う」
全員の兄弟が仲良い訳では無いし、個人的な考えだが、仲の悪い兄弟の方が多いと思う。それに、魔女さんが力になれない、なんてことはない。これまで助けてくれたし、今後もお世話になる予定だ。
「とりあえずー、この狼男を連れて、妹さんに会いに行こう。会わなきゃ何も始まらないよ」
僕はパンッと手を叩いて、指揮を執る。
その時だ。上空から、何やら叫び声が聞こえてきたのは。
「どわああっ!?あの……クソ電球野郎ッ!」




