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変異童話  作者: 偃月作
第一章、ヘンゼルとグレーテル
34/39

#34 黄金の瞳

はじめ視点


「……ね、ねぇ。魔女さん、私ここちょっと苦手かも」

「えっ」

魔女さんに連れられて来た場所は、魔女さんの妹さんがいるというお城だった。綺麗で大きいけど、なんだかそれ以上の変な感じがここには漂っていた。

 

それは門の前に立ったグレーテルも気づくほど、強く異質だった。魔女さんはグレーテルも感じているとは思っていなかったようで、目を丸くした。

「そ、そっか。でも、無理させない方がいいもんね、ここはやめておこ……」

「いや、逆に行った方がいいのでは?」

全員が引き返すモードに入っていたところに棘を刺したのは、クラージュくんだった。黄金の大きな瞳が、こちらを捉える。

「あなたもそう思うでしょう?」

「え、あ、僕?」

「あなた以外に誰がいるんですか…」

マジで大丈夫かな、この人…。なんて哀れな目で見てくるもんだから、思わず目を逸らしてしまう。


でも、なんで僕も行った方がいいと思っていたとわかったんだろう。いつも流れに身を任せる精神のため、自分が反対のことを思っていても言わないことが多い。そのため顔にも出していないつもりだ。

なのに、なんでこの子はわかったんだろう。

「“なんでこの子はわかったんだろう”ですか」

「えっ?」

ちょ、は?な、なんで僕の心の声が…。まさか、声に出てた?

「違いますよ。“見た”だけです」

「……見た?」

クラージュ君の瞳がまた、怪しく光る。もしかして、“眼で見ている”というのだろうか。

人の心の声を?正直、僕の常識では考えられないことだが、この世界に常識なんて通用しない。

だって、基盤が童話の世界なんだ。魔法だって、お菓子の家だって、全部ある。


クラージュ君は、嘘をついているようには見えなかった。というか、僕の心の声を当てた時点で分かっていた。この子は、僕の世界で言う“超能力者”なのだ。

 

「ボクの眼、黄色とはちょっと違いますよね。これのせいで、ボクは人の本心、心の声まで見えちゃうんですよ」

確かに、クラージュ君の眼の色は、黄色というより、黄金色と言った方がしっくりくる色をしていた。なんというか、蜂蜜のような、綺麗な色だ。

でも、その当の本人は自慢げな顔をしている訳でも、嬉しそうな顔をしている訳でもなかった。

 

目の前に広がる、大きなお城を瞳に映して、クラージュ君は言った。

「ボクの話はいいんですよ。ほら、行くんですか?行かないんですか?ハッキリしてください!年上!」

「え、えぇ…」

先程は、年上とか関係ない!みたいなことを言ってくれていたのに、都合がいい時だけ、年上を上手く活用してくる。

魔女さんにアイコンタクトを取ると、「はじめ君が決めな」と優しく目元を歪めた。

「よ、よぉし!じゃあ、行こう!変な感じも、妹さんに危険なことが起こってるのかもしれないし!」


━━━━その時だ。

 

僕らに強い向かい風が吹き、砂埃がたつ。その中から出てきたのは、あの“狼男”だった。


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