#34 黄金の瞳
はじめ視点
「……ね、ねぇ。魔女さん、私ここちょっと苦手かも」
「えっ」
魔女さんに連れられて来た場所は、魔女さんの妹さんがいるというお城だった。綺麗で大きいけど、なんだかそれ以上の変な感じがここには漂っていた。
それは門の前に立ったグレーテルも気づくほど、強く異質だった。魔女さんはグレーテルも感じているとは思っていなかったようで、目を丸くした。
「そ、そっか。でも、無理させない方がいいもんね、ここはやめておこ……」
「いや、逆に行った方がいいのでは?」
全員が引き返すモードに入っていたところに棘を刺したのは、クラージュくんだった。黄金の大きな瞳が、こちらを捉える。
「あなたもそう思うでしょう?」
「え、あ、僕?」
「あなた以外に誰がいるんですか…」
マジで大丈夫かな、この人…。なんて哀れな目で見てくるもんだから、思わず目を逸らしてしまう。
でも、なんで僕も行った方がいいと思っていたとわかったんだろう。いつも流れに身を任せる精神のため、自分が反対のことを思っていても言わないことが多い。そのため顔にも出していないつもりだ。
なのに、なんでこの子はわかったんだろう。
「“なんでこの子はわかったんだろう”ですか」
「えっ?」
ちょ、は?な、なんで僕の心の声が…。まさか、声に出てた?
「違いますよ。“見た”だけです」
「……見た?」
クラージュ君の瞳がまた、怪しく光る。もしかして、“眼で見ている”というのだろうか。
人の心の声を?正直、僕の常識では考えられないことだが、この世界に常識なんて通用しない。
だって、基盤が童話の世界なんだ。魔法だって、お菓子の家だって、全部ある。
クラージュ君は、嘘をついているようには見えなかった。というか、僕の心の声を当てた時点で分かっていた。この子は、僕の世界で言う“超能力者”なのだ。
「ボクの眼、黄色とはちょっと違いますよね。これのせいで、ボクは人の本心、心の声まで見えちゃうんですよ」
確かに、クラージュ君の眼の色は、黄色というより、黄金色と言った方がしっくりくる色をしていた。なんというか、蜂蜜のような、綺麗な色だ。
でも、その当の本人は自慢げな顔をしている訳でも、嬉しそうな顔をしている訳でもなかった。
目の前に広がる、大きなお城を瞳に映して、クラージュ君は言った。
「ボクの話はいいんですよ。ほら、行くんですか?行かないんですか?ハッキリしてください!年上!」
「え、えぇ…」
先程は、年上とか関係ない!みたいなことを言ってくれていたのに、都合がいい時だけ、年上を上手く活用してくる。
魔女さんにアイコンタクトを取ると、「はじめ君が決めな」と優しく目元を歪めた。
「よ、よぉし!じゃあ、行こう!変な感じも、妹さんに危険なことが起こってるのかもしれないし!」
━━━━その時だ。
僕らに強い向かい風が吹き、砂埃がたつ。その中から出てきたのは、あの“狼男”だった。




