#33 違和感の正体
「……気持ちわりぃ」
「お前!ロン様に着させてもらっているにも関わらず、なんだその物言いは!
ロン様、やはりコイツは危険です。今からでも首を」
怒りを顕にし、ビシッとオレを指さしてくる、側近の男。言葉使いは丁寧でも、コイツには金持ち特有の気品も、礼儀作法も全くなっていない。
ロン様もそうだが、コイツらは全てにおいて中途半端だ。
街でぶつかった時には居た側近たちも、今はこの男一人。ビビるほど物や人の少ない、だだっ広いだけのお屋敷。聞いたこともない魔法使い。
そんな怪しさ満載の奴らがオレを屋敷まで連れてきた理由。ポジティブな事は思いつかないだろう。例えば、魔法の実験台とか。
「…お前ら、マジでなんなんだよ。ここまで違和感を散りばめたのも、お前の策略か?オレをどうする気だ」
「……もー、カッコイイ顔が台無しですよ?」
「話そらすな」
ヘラヘラと笑う魔法使いにイラついて、目を合わせて話せという意味を込めてガシッと頬を掴んだ。そんなオレの行動に一瞬ビックリしたような顔をしたが、すぐにいつもの顔に戻った。
「んー、まあ、それもそうですよね。バレるか、普通」
「ロン様!お前、手を離───」
「ちょーっと!今は私とイケメン君が話してるんです。邪魔しないで」
男がオレに手を伸ばした瞬間、魔法使いの口調が強くなり、指で空中になにかを書くと、瞬きの間に男は消えていた。白い煙が薄く広がり、風に乗ってどこかに行く。そんな状況を、慣れているかのように見向きもせず、魔法使いはオレをずっと見ていた。反射的に手を離してしまうと、名残惜しそうな目をする。
ちょっと待て。わけがわからない。これがコイツの魔法なことくらい分かってる。でも、じゃあなんで男を消した?別に自分に対して攻撃的でもなければ、逆に慕ってくれていたように見えた。
なのに、助けようとしたのに。オレとの会話を邪魔されたから、消した?
分からない。全然。オレとコイツでは、決定的に違うところがある。魔法が使えるからなのか、育った環境の差なのか、厳密なものは分からない。でも、違うんだ。胸の奥に、離すことの出来ないドロドロとした何かが、嫌な予感として全身に轟く。
「クソッ…」
アイツが近づいてくる。
「私ね、お姉ちゃんがいるんです。すっごく嫌いでした。でも、唯一私から離れなかった」
目の前に手のひらが近づいて。
「あと、“催眠”にもかからなかった。あの人、無意識のうちに私から結界張ってたんですよ?信じられなくなーい?」
喉から乾いた声が出る。
「でも、貴方はかかりそう。優しい、心の底からの嘘をついたことがないから」
暗転




