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変異童話  作者: 偃月作
第一章、ヘンゼルとグレーテル
26/32

#26 魔女の喜び

「継母……?」

二人は僕のそんな一言に肩をビクリと震わせた。ビンゴだ…!僕はそう思い、少しヘンゼルとグレーテルの物語を思い返す。

 

そうだ、昼頃ヘンゼルとグレーテルに初めて会った時。その時に物語を思い返していた時は、森に捨てに行けと話したのは、実の母だと思っていた。けれど、今わかった。違ったんだ。本当にヘンゼルとグレーテルを森に捨てに行けと話したのは、実の母が亡くなり、その後に来た継母だったんだ。


それに気づき、やっと二人が家に帰りたくない理由がわかった。変わらず、目をつぶって怖がっているグレーテルに、冷や汗を流しているヘンゼル。

そんな二人に僕はどんな言葉をかければ良いのか、僕は難しいことを考えるのは苦手だ。ただ、二人にも難しい事を考えさせないようにすればいい。

「よし、なら、一緒に行こっか!」

「……え?」

「い、いいのか?」

「別に、無理してまで帰らなくていいでしょ。私も、そこまで鬼じゃないし」

僕の言葉にびっくりしたような顔をする二人。そんな二人の背中を押すように、魔女さんも優しく声をかける。

二人は無理やりにでも帰らされると思ったのだろうか。大きな目を見開いて、今にも涙がこぼれそうになっている。

「ひ、ひむろぉ……」

「まじょさぁん!」

ヘンゼルが僕に、グレーテルが魔女さんに抱きついて、涙を零す。赤ちゃんのように泣く二人を見て、こんなに幼いのに心にどんな闇を抱えていたのか、少し気になった。だけど、それを僕や魔女さんは知る由もない。

けれど、僕や魔女さんと出会ったことで、少しでもその心に光が差し込んだなら嬉しい。

 

抱きつかれながら、魔女さんが僕に話しかけてくる。抱きつかれ慣れて無いのは一緒なのか、少し疲れた顔をしながら、僕の方を向いて、気力のない目をこちらに向ける。

「名前は?」

「あ、氷室はじめ…」

「そう。はじめ君、分かってるとは思うけど、魔法は万能じゃないの。魔女だからって、怪我をしたら痛いし、暴言を吐かれたら傷つく。だから、魔女も普通の人間も、それ程の差は無いんだよ。

でも、魔法を使えるから良かったこともあるの」

そう言った魔女さんの表情は、いつもの不安はなく、何故か自信満々に見えた。


すると、魔女さんが聞いたこともない言語を呟き始めたと思えば、部屋が暗くなり、この時間帯に見えるはずのない満点の星空が僕らの目に映った。


そんな非現実的な現状に、泣いていた二人の涙は止まり、目の前の星空を眺める。

「す、凄い!私、こんな綺麗な星見たことない!」

「綺麗…!」

「魔女さん……これ…」

「私の魔法。しょぼいでしょ?どんな状況でも、満点の星空を見せることができるの。

 

それで、魔法を使えて唯一良かったことだけど…」

魔女さんは、こちらを見ながら星空のような満面の笑みを浮かべる。

 

〝こんなふうに、私の魔法で誰かが笑ってくれる事!〟

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