#26 魔女の喜び
「継母……?」
二人は僕のそんな一言に肩をビクリと震わせた。ビンゴだ…!僕はそう思い、少しヘンゼルとグレーテルの物語を思い返す。
そうだ、昼頃ヘンゼルとグレーテルに初めて会った時。その時に物語を思い返していた時は、森に捨てに行けと話したのは、実の母だと思っていた。けれど、今わかった。違ったんだ。本当にヘンゼルとグレーテルを森に捨てに行けと話したのは、実の母が亡くなり、その後に来た継母だったんだ。
それに気づき、やっと二人が家に帰りたくない理由がわかった。変わらず、目をつぶって怖がっているグレーテルに、冷や汗を流しているヘンゼル。
そんな二人に僕はどんな言葉をかければ良いのか、僕は難しいことを考えるのは苦手だ。ただ、二人にも難しい事を考えさせないようにすればいい。
「よし、なら、一緒に行こっか!」
「……え?」
「い、いいのか?」
「別に、無理してまで帰らなくていいでしょ。私も、そこまで鬼じゃないし」
僕の言葉にびっくりしたような顔をする二人。そんな二人の背中を押すように、魔女さんも優しく声をかける。
二人は無理やりにでも帰らされると思ったのだろうか。大きな目を見開いて、今にも涙がこぼれそうになっている。
「ひ、ひむろぉ……」
「まじょさぁん!」
ヘンゼルが僕に、グレーテルが魔女さんに抱きついて、涙を零す。赤ちゃんのように泣く二人を見て、こんなに幼いのに心にどんな闇を抱えていたのか、少し気になった。だけど、それを僕や魔女さんは知る由もない。
けれど、僕や魔女さんと出会ったことで、少しでもその心に光が差し込んだなら嬉しい。
抱きつかれながら、魔女さんが僕に話しかけてくる。抱きつかれ慣れて無いのは一緒なのか、少し疲れた顔をしながら、僕の方を向いて、気力のない目をこちらに向ける。
「名前は?」
「あ、氷室はじめ…」
「そう。はじめ君、分かってるとは思うけど、魔法は万能じゃないの。魔女だからって、怪我をしたら痛いし、暴言を吐かれたら傷つく。だから、魔女も普通の人間も、それ程の差は無いんだよ。
でも、魔法を使えるから良かったこともあるの」
そう言った魔女さんの表情は、いつもの不安はなく、何故か自信満々に見えた。
すると、魔女さんが聞いたこともない言語を呟き始めたと思えば、部屋が暗くなり、この時間帯に見えるはずのない満点の星空が僕らの目に映った。
そんな非現実的な現状に、泣いていた二人の涙は止まり、目の前の星空を眺める。
「す、凄い!私、こんな綺麗な星見たことない!」
「綺麗…!」
「魔女さん……これ…」
「私の魔法。しょぼいでしょ?どんな状況でも、満点の星空を見せることができるの。
それで、魔法を使えて唯一良かったことだけど…」
魔女さんは、こちらを見ながら星空のような満面の笑みを浮かべる。
〝こんなふうに、私の魔法で誰かが笑ってくれる事!〟




