#25 再会への一歩
「え、ええぇっ!?」
「そ、そうなの?」
「良かったじゃん。仲間と再会出来る日も近いんじゃねぇの?」
魔女さんの衝撃のカミングアウトにその場の全員がびっくりしたが、僕の中に無意識の内の感情が湧いたことに気づいた。
少し、ほんの少しだけ安心したのだ。心配しなくていいとは言っても、心細いのには変わりない。突然知らないところに飛ばされたと思えば、さっきまで一緒にいた人達が一人残らず居なくなっているのだ。不安だし、怖いに決まっている。
だから、赤ずきんさん達の安否と存在を確認できて安心した。
「魔女さん、その赤いずきんの人って何処にいた?」
「今日、どうしても紙を買わなきゃいけなくて、街に降りたの。あんまりこの街の人達は派手な色の服は着ないから、視界に入った派手な赤いずきんが頭に残ってて……」
なるほど、街か…。と冷静な言葉を洩らす僕を見た魔女さんが、気になるなら行ってみる?と夢にも思わない事を口にした。
「まあ、もう居なくなっちゃってるかもだけど……」
「ううん、行くよ!ヤンキー赤ずきんさん、居なくなってるかもだけど、居るかもしれないんでしょ。なら、行ってみるに限るよ!」
ヤンキー赤ずきんさん達と再会出来るかもしれない……。そう思うと、心が踊ってたまらなかった。
先程よりも喜びが抑えきれない僕の様子を、ヘンゼルとグレーテル、増しては魔女さんにまで微笑みながら見られて、急に羞恥心が湧き上がってきた。
冷静に考えれば、高校生にもなって友達と再会出来るだけではしゃぐなんて馬鹿馬鹿しい。もっと冷静にならなきゃ。
恥ずかしさで火照った顔をパンッと叩いて、気持ちを切り替える為に気合いを入れる。すると、何故気づかなかったんだろうという、あることに気がついた。
「あれ、街に行けるなら、ヘンゼルとグレーテルの家にも帰れるんじゃないの?」
「場所さえ教えてくれたら私、家まで送るよ。……あ、魔女に家まで着いてこられたら困るよね…」
相変わらずネガティブ魔女さんだが、二人にとっては悪くない話のはずだ。森に迷ったと言っていたし、魔女さんに着いてきてもらえば迷うこともない、不審者に出会っても助けてもらえるだろう。
けれど、二人の表情は暗いまま、下を向いて口をつぐんでいた。
「二人とも、どうしたの…」
「イヤッ!絶対あんなお家に帰ってやるもんか!」
「……俺も、帰りたくない…」
僕の言葉を遮って大きな声を出したグレーテル。
そんなグレーテルをいつもなら咎めるはずのヘンゼルもまた、顔を歪めて家に帰りたくないと話した。
「あ……」
そんな苦しそうな二人を見て、僕は頭をフル回転させる。ヘンゼルとグレーテルの本編で、二人を家に帰りたくないと思わせる描写……。
何か無かっただろうか。
「継母…?」




