#24 クッキー
張り詰めた空気感の僕らを静めるように、元気を取り戻したグレーテルと魔女さんが帰ってきた。お菓子をお皿に沢山乗っけて、満足そうだ。
「ほら、二人ともお菓子持ってきたわよ!食べましょ!」
満面の笑みを浮かべたグレーテルに急かされて、クッキーで作られた椅子に座り、恐る恐るお菓子に手を伸ばす。
ボクが選んだのはアイシングクッキーと呼ばれる、クッキーに可愛らしい絵が描かれたものだ。
どういう意味を込めてかは分からないが、このクッキーには、カラスの絵が描かれていた。
サクッと一口噛むと、程よい甘さが口に拡がって、思わず口元が緩む。それはヘンゼルとグレーテルも同じようで、目を輝かせながらパクパクお菓子を口へと運んでいた。
そんな平和な空気が流れる家で、魔女さんがある質問をしてきた。
「君たち、一体どうやってここに辿り着いたの?人がここに来たのは初めてだよ」
魔女さんが心底不思議そうに僕らに聞いてくるが、ヘンゼル達も僕もなんと答えるのが正解か悩んでいるようだった。
「俺とグレーテルは親から森に捨てられて、途中からヒムロと会って、南に進んでたらここに着いたって感じだ」
流石は兄と言うべきか、戸惑っているグレーテルを見て、自分が率先して説明をした。あんなに喧嘩している二人だったが、やっぱり心から嫌いあっている訳ではなさそうだ。
「僕は、本当は一緒に旅をしてた友達…が居たんだけど、はぐれて森をさ迷ってたところをヘンゼルとグレーテルに見つけてもらったって感じかな」
そんな話を聞いたヘンゼルとグレーテルは、えぇっ!そうだったの!?と目を丸くしてびっくりしていた。
そういえば、この二人には言ってなかったか……と冷静に考えていると、二人ははぐれた子達が可哀想!探しに行こう!と僕を急かしてきた。でも、焦っている二人には悪いが、僕自身そこまで焦っていないのが本音だ。ヤンキー赤ずきんさんは、案外しっかりしているし、狼男は命の危険に晒されたとしても、野生の本能とやらで回避するだろう。ただ、僕が一番心配していると言えば、クラージュ君だろうか。
「たしかに、一人心配な子はいるけど、大丈夫だよ。それに、ヤンキー赤ずきんさん達がどこにいるかも分からないし……」
思わずヤンキー赤ずきんさんの言葉を口に出してしまった時、三人中二人は頭にハテナを浮かべ、残りの一人は何か思い当たる節があるような顔をした。
「赤ずきん……赤い…男の子……」
「?、魔女さん?何か……」
「今日、見たかも。その、赤ずきんさん」




