#22 魔女
「えぇ……可愛い子供達がなんでこんな所にいるんだろう…。え、これって家に入れても捕まんない?大丈夫かな?」
目の前でオドオドしながら、一人言を話す身長の高い女性。
そんな女性の前で固まっている、僕ら一同。
この状況に至るまで、少し時間を遡る。
「ヘンゼル、ほんとにこっちでいいのよね。これで変なところに行ったら、アンタのせいだからね!」
「うるっせぇな!黙って着いてこい!」
「はあ?意味わかんない、何その言い方!妹相手にガチになるなんて、やっぱガキ……ね」
「あ……」
相変わらず言い合いが止まない二人に慣れてきた頃、僕らは見慣れた木々の中に一つ、異様なほど目立つ建物を見つけた。
屋根はビスケットが散りばめられ、至る所にクッキーやチョコ、棒のキャンディなんかもある。煙突もお菓子で出来ているみたいだ。
これが、お菓子の家?
想像以上に子供の頃頭に浮かんでいたお菓子の家で、もしかして夢なのでは?なんて思ってしまう。
「すご……」
「すごい、凄いわ!全部お菓子で出来てる家!クッキーにキャンディもある!大好きなチョコもよ!」
さっきまで言い合いをしていた二人は、目を輝かせてお菓子の家を食い入るように見ている。
特にグレーテルはお菓子が好きなのか、ぴょんぴょんと飛び跳ねて、ヘンゼルの腕を引っ張っている。
そんな興奮が抑えきれない空気の中、間抜けなお腹の音が鳴り響く。
「……グレーテル」
「何よ!こんなお菓子の家見てたら誰でもお腹空くでしょ!」
顔を真っ赤にしながら怒るグレーテルを横目に、ヘンゼルと僕はため息をついた。なんというか、大人ぶっていても子供なんだな、と思わざるを得ない。
それにしても、このお菓子の家からは人の気配がしない。本編で出てきた魔女は一体どこへ……?そう二人にバレない程度にキョロキョロと周りを見渡す。
そんな時、僕らの背後から影がかかる。そして、戸惑いを隠せない息遣いに、喉から無意識の内に飛び出たであろう掠れた母音。穏やかな風で靡いた髪からふわっと香るお菓子の香り。
嫌な予感がした。鳥肌がたって、身体の自由を奪ってくるような、そんな嫌な予感が。
ヘンゼルとグレーテルもそんな嫌な予感を感じとって後ろを向くことが出来ない。
「あ……」
この中で一番の最年長である僕が勇気を出すしかない。そう思い、意を決して振り返ると、そこには……
僕の想像していた魔女とは正反対の〝魔女〟がいた。




