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変異童話  作者: 偃月作
第一章、ヘンゼルとグレーテル
22/39

#22 魔女

「えぇ……可愛い子供達がなんでこんな所にいるんだろう…。え、これって家に入れても捕まんない?大丈夫かな?」

目の前でオドオドしながら、一人言を話す身長の高い女性。

そんな女性の前で固まっている、僕ら一同。

 

この状況に至るまで、少し時間を遡る。

 

「ヘンゼル、ほんとにこっちでいいのよね。これで変なところに行ったら、アンタのせいだからね!」

「うるっせぇな!黙って着いてこい!」

「はあ?意味わかんない、何その言い方!妹相手にガチになるなんて、やっぱガキ……ね」

「あ……」

相変わらず言い合いが止まない二人に慣れてきた頃、僕らは見慣れた木々の中に一つ、異様なほど目立つ建物を見つけた。


屋根はビスケットが散りばめられ、至る所にクッキーやチョコ、棒のキャンディなんかもある。煙突もお菓子で出来ているみたいだ。

 

これが、お菓子の家?

 

想像以上に子供の頃頭に浮かんでいたお菓子の家で、もしかして夢なのでは?なんて思ってしまう。

「すご……」

「すごい、凄いわ!全部お菓子で出来てる家!クッキーにキャンディもある!大好きなチョコもよ!」

さっきまで言い合いをしていた二人は、目を輝かせてお菓子の家を食い入るように見ている。

特にグレーテルはお菓子が好きなのか、ぴょんぴょんと飛び跳ねて、ヘンゼルの腕を引っ張っている。

 

そんな興奮が抑えきれない空気の中、間抜けなお腹の音が鳴り響く。

「……グレーテル」

「何よ!こんなお菓子の家見てたら誰でもお腹空くでしょ!」

顔を真っ赤にしながら怒るグレーテルを横目に、ヘンゼルと僕はため息をついた。なんというか、大人ぶっていても子供なんだな、と思わざるを得ない。


それにしても、このお菓子の家からは人の気配がしない。本編で出てきた魔女は一体どこへ……?そう二人にバレない程度にキョロキョロと周りを見渡す。


そんな時、僕らの背後から影がかかる。そして、戸惑いを隠せない息遣いに、喉から無意識の内に飛び出たであろう掠れた母音。穏やかな風で靡いた髪からふわっと香るお菓子の香り。

嫌な予感がした。鳥肌がたって、身体の自由を奪ってくるような、そんな嫌な予感が。

ヘンゼルとグレーテルもそんな嫌な予感を感じとって後ろを向くことが出来ない。

「あ……」

この中で一番の最年長である僕が勇気を出すしかない。そう思い、意を決して振り返ると、そこには……

 

僕の想像していた魔女とは正反対の〝魔女〟がいた。

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