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変異童話  作者: 偃月作
序章、赤ずきん
15/25

#14 信じて欲しい

ケイト視点

 

母さんをどうにか説得したかった。首を横に頷いてくれる確率は0に等しかったけど、それでも言ってみなきゃ状況は変わらないと思ったから。

 

結果は駄目。でも、強く言い返せないのは母さんの考えに納得している部分もあるからだろう。

今日会ったばかりの奴の為に、自分がなんでこんなに頑張っているのか分からない。けど、初めて友達という存在が出来たから。大切にしたいと思うのはダメなのだろうか。助けたいと思うのは、間違っているのか。分からない。

 

母さんが久々に本気で声を荒らげて怒っている姿を見て、自分のしようとしていることは間違っているのかもしれないと少し思った。でも、どうすれば。はじめを見捨てるなんてオレには……。そう思っていると、さっきまで黙々とご飯を食べていた狼男がゴクン、と飲み込み、席を立った。そして、母さんに指を指すと…。

「とりあえず、一回行って帰ってくるから待ってろ!」

「へ……」

シンプルで、人を勢いだけで頷かせてしまいそうになるスピード感。なんというか、めんどくさがり屋な狼男ならではの説得の仕方だ。

「大体な、大人になるまで親離れしないのなんて、人間くらいなんだよ。オレも例外じゃねぇけど、動物達は幼いころから親離れがほとんど。動物達に理性があって、子供のためを思って親離れを早くしてんのかは知らねぇけど、オレの親は生まれた瞬間、その場から逃げた最低なヤツだ。だから、なんか赤ずきんの野郎が羨ましく見えちまう」

狼男からそんなセリフが出るとは思っていなくて、内心びっくりした。

めんどくさがり屋の狼男も、心になにか暗いものを抱えていた。なら、アイツはどうなのだろう?はじめは、そういう物を抱えていないのだろうか。

 

余計なことを考えてしまったと気づき、思考を切替える。

母さんは口をパクパクとさせて、返す言葉を探しているみたいだ。でも、見つかっていないみたい。表情を暗くさせ、不安そうだ。

「帰ってくるなんて…。保証ないじゃない」

「自分の子供を信じないで、何が親だよ」

その言葉に母さんは顔を上げ、狼男を見つめる。見つめられている張本人は言ってやったと言う顔ではじめにドヤ顔をしている。

まあ、はじめは心底興味ないという感じだ。

 

「はあ、わかった。海でも山でもどこにでも行っちゃいなさい!」

返す言葉も無くなったのか、母さんはぶっきらぼうにそう言った。

そんな母さんの様子を見て、オレは我慢出来ずに柄にもなく叫ぶ。

「よっしゃああ!はじめ、狼!やってやったぞ!オレは母さんに勝ったんだ!」

「あーあ、調子乗ってら」

「だね」

テンションの温度差が激しいが、そんなことよりもオレは、母さんがオレを信じてくれたことが、何よりも嬉しかったんだ。

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