#12 緊張
久しぶりの投稿です!
目の前に広がっているのは、美味しそうな料理。焼きたてのパンに、ハンバーグ、その他にも結構な量の料理が沢山だ。
そんな料理を狼男はヨダレを垂らして見つめている。かく言う僕も例外では無い。この世界に来てから、おばあさんのお菓子しか食べていないのだ。それも、そこの狼男がほとんど食い尽くして僕はほとんど食べてないし…。正直、お腹と背中がくっついてしまうと錯覚するほどお腹が減っている。
「な、なあ。これ、食っていいのか?」
「勿論、どうぞ」
そのヤンキー赤ずきんさんのお母さんの言葉で、遠慮の心がどこかに行ってしまったかのように、いただきまーす!と元気よく言うとバクバクと食べ始めた。僕とヤンキー赤ずきんさんもいただきます、と言ってから少し遠慮がちに食べ始める。
「お、美味しい…」
「そう?それは良かった」
ハンバーグからは肉汁が溢れ出てくるし、ソースとの相性も抜群だ。パンだってカリッとしているかと思えば凄くふわふわで、その上焼きたてときた。美味しくないわけが無い。
けれど、僕らとは対照的に食が進んでいないヤンキー赤ずきんさん。どのタイミングで言うのが良いか考えているのだろう。眉間に皺を寄せているせいで、目つきの悪さが際立っている。
「あ、あのさ…」
「ん?なにさ」
話を切り出したはいいものの、そこから話が途切れてしまった。怪訝な目で見られながら、ヤンキー赤ずきんさんら冷や汗をたらす。
「……もう、なによ。何も無いなら…」
「俺!旅に出るから!」
「……は」
空気が一瞬の内に凍ったのが分かった。ヤンキー赤ずきんさんは下を向いて、目をつぶったまま。お母さんの方は固まって、目を見開いている。さて、ここからだ。どんな反応をされるかで、これからの動きが変わっていく。
「な、なに急に。ドッキリとかやめてよ。ほんとにもう…」
「違う、ドッキリとか冗談じゃない」
お母さんは声色は明るいが、明らかに動揺している。そんなお母さんとは違い、ヤンキー赤ずきんさんは話をしてしまえば緊張も落ち着いたようだ。
「……どういうこと?急にそんなこと言って、一人で行くの?」
「いや、こいつらと」
ビシッとこちらを指さして、顔はお母さんに向かたままヤンキー赤ずきんさんは言葉を続ける。
「すぐに納得してもらおうなんて思ってない。けど、なるべく早く納得して貰えるようにオレも頑張る」
そう言ったヤンキー赤ずきんさんの目には迷いがなく、なんだか頼もしく見えた。
そしてこれから、ヤンキー赤ずきんさんとお母さんとの喧嘩が始まった。




