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どうぞよろしくお願いいたします。

 目が覚めたのは、二日後の事だった。


 それでもあの場にいた者たちの中で、ミディアはもっとも軽傷だったそうだ。

 ずっと気を失っていたため覚えていないが、細かな雷撃による表面的な火傷くらいで済んだらしい。


 雷撃を真っ先に受けたフレイは、左腕が焼けただれ酷い有様になっていたという。アキサメが光の治癒魔法を使える術師を何人も囲っていたおかげで助かったが、そうでなければ腕を切り落とすことになっただろう。


 センエイは腹部を雷撃が突き抜けた結果、内臓の一部がウェルダンになったという。だが歯を食いしばって皆を海から引きずりあげるまで意識を保っていたそうだ。

 幸いセンエイも回復が間に合い、命に別状はないという。

 むしろ怪我の痛みよりも、しばし酒を禁止されたことのが堪えるだのと笑っていた。


 だが、センエイは無事だったものの、鉄鼠衆の者たちの中には雷の直撃を受け即死してしまった者もいる。


 ──惨敗。

 完全なる敗退だ。

 あの少女はマティス卿ではくらべものにならないほどに強い力を持っている。

 魔法式が読めたとしても、あの威力と速度では防ぐのもかわすのも難しい。

 目覚めたミディアを待っていたのは、何とも沈み切った顔の面々だった。


 ミディアとフレイはまだ安静にと言われている。

 フレイに至っては回復のためかなり体が消耗しているからと食事も粥などの消化しやすいものに限られている。

 治癒魔法で左腕より火傷を回復したものの、まだ皮膚の内側が引きつれるような奇妙な違和感があるようだ。左手は力が入らず、指先は意図せず震えている。


 それでも何とか動く事が出来るようになった二日目には、リリアナを含めた三人で顔を突き合わせていた。


 「悪い話ばかりじゃないですわ。街に潜ませていた者たちからの報告で、奴隷を乗せた馬車は間違いなくドリスティオール家に向かったことを確認しております」


 リリアナの言葉に一同は頷くが、さりとて今後の方針はまとまらない。

 ようやく全員が起き上がれるようになった今朝、客間に集まってはみたものの、顔を突き合わせて出るのはため息ばかりだった。


 「しかし奴隷を運び込んでから二日経ってしまいました。今から調査に赴くにしても果たして悪事を示すような証拠が見つかるかどうか」


 薬湯の入った器を持つフレイの手に力がこもる。


 「そ、そ、そうですね。たとえば、街の治安維持のために雇ったとでも書類を用意されていたら、密輸の証拠にはなりませんね」

 「一方的に攻撃を受けたと主張したとしても強制調査までもって行くのは難しい」

 「そう、ですね」


 フレイの懸念にミディアも同意するしかない。


 「何か踏み込むための名目があればいいのですが」

 「どうした、随分と辛気臭い空気だな。少しは換気をしたらどうだ?」


 重い空気の室内に無遠慮に入り込んできたのは、今日も今日とて美しい金髪をなびかせたアレクシア・ゴッドウィンだ。

 ミディア達が怪我をしたと聞いて、慌てて駆け付けてくれたのだと言う。

 彼女の部下である騎士団は近隣の村で待機しており、いつでも出撃出来る状態だ。しかしその名目が見つからない。


 「それにしても随分と手ひどくやられたようだな。光神の加護と名高い聖騎士団の盾に穴が開いていたではないか」


 アレクシアの視線の先を見てみれば、部屋のすみにはフレイの盾が置かれていた。

 白銀に聖騎士団の紋章が刻まれた見事な盾は、今はその中央に雷撃をうけた穴が穿たれ、見るも無残な有様になっている。

 あの盾は、魔人と化したマティス卿を打ち倒した功績を称えて与えられたものだという。

 聖騎士団の中でも高位の騎士でなければ持てないような代物だ。

 それが壊れてしまったと言うのであれば、フレイの落ち込みようも頷ける。


 「ああ、あの盾壊れちゃったんですね。かなり強力な光の防御魔法がエンチャントされてたのに、……ん?」


 そこまで呟いたミディアは動きを止める。


 「そそそそそ、それ、それ、それだぁあああああああッ!!!!!!」


 絶叫して立ち上がったミディアは、椅子から転げ落ちるように慌てて盾に駆け寄った。

 そうして盾を持ち上げようとしたものの、……重すぎてちっとも動かない。


 「ど、どうしたのですか、ミディア嬢」


 代わりにフレイが盾を持ち上げてくれたので、思う存分に観察する。


 「うわあああ、すごい! これはすごい。

 がっつり穴が開いてますね。周囲は黒こげだけどほとんど溶けてないとなると、恐ろしいほど高出力だったことが分かりますね!

 光のエンチャントをぶち破って、さらにこれ、表層のコーティングはオリハルコン???

 いえ、高純度のカルカディア鉱石ですね!

 ふわぁすごい! これ一つで家が建つような代物じゃないですか!」

 「ふぐぅッ」


 苦悶の表情になるフレイを気にせず、ミディアはさらに観察する。


 「んん、これは酷い。ここまで壊れたら修復はまず不可能ですね。これが一発の魔法でやられたとなると教会の権威に関わるやつじゃないですか?」

 「み、ミディア嬢、こ、これは、教会のせいではなく、僕の未熟さが」

 「いえいえ、そんな事ないですよ。フレイ殿は立派な騎士であられます。

 でもこれは教会の威信に関わるような、大変に清々しいほどのぶっ壊れ方です!!!!」


 ミディアは満面の笑顔だったが、フレイは今にも死にそうな顔だった。

 助け船を出したのはリリアナだ。


 「それで、ミディア嬢。盾が壊れたことをどのように利用するのかしら」

 「はッ!!!! そうでした。あまりの見事なぶっ壊れっぷりに感動してついつい本題を忘れるところでした」


 思わず興奮状態になっていたミディアは一度大きく息を吐く。


 「……ええと、ですね、たった一発の魔法でエンチャントを貫通して盾を壊すなんて、五ツ紋の魔術師でも至難の業です。

 つまり――使い手は、限られているんです」


 ミディアは興奮で早口になりかけるのを、何とか抑えてゆっくりと話す。


 「なので、……まず、教会から魔塔に対して調査依頼を出します。

 内容は『お前のとこに所属している魔術師がうちの聖騎士に喧嘩売ってきたんだが、どういう了見だ?』って感じです。

 普段の魔塔はなかなか腰が重いんですが、教会から疑いをかけられたとなれば、なる早で動くはずです。

 調査が迅速に進むように、あの時使用された魔法式を出来るだけ再現した資料を作成しておきます!

 ──で、十中八九、魔塔には登録されていない魔術師による仕業であるという解答になると思うんです」


 人差し指をぴんと立ててミディアは言い、さらに言葉を続けた。


 「となると、非正規の魔術師が”王国内で災害級の魔法”を使っているという事になります。

 これは他国ないし、何者かによる”侵略行為”と同意義に見做される筈です。

 そのような報告を受ければ教会から王国側にも報告が行くことになるので、……」


 ミディアはにっこり笑ってアレクシアに視線を向ける。


 「──王国からの正式な調査依頼により、騎士団が踏み込むことが可能です!」

 「その破壊された盾は、最高の証拠品になると言うわけか」


 アレクシアはまじまじと盾を見つめながら小さくうなる。


 「はい! その通りです!

 この盾の壊れっぷりを見たら、教会の……とくにエンチャントを担当した部署の方はぶち切れ案件だと思うんですよ。

 絶対に犯人を突き止めようとする筈です。

 そもそも理由なく聖騎士団に対して攻撃魔法を行使しただけでも大問題ですし」

 「……なるほど」


 ようやく事態を把握したフレイが頷いた。

 壊れた盾が、失敗の象徴ではなく仲間を救う手段に変わる――。

 フレイの胸に、ようやく熱が戻ってきた。


 「では僕からコルテア卿に壊れた盾を提出し事情を説明しましょう。卿からの後押しがあればより迅速にことが進むはずです」

 「奴隷密売くらいでは、名門ドリスティオール家の調査は難しい。

 けれど五ツ紋級の魔術師を雇い、聖騎士団を攻撃したとなれば……。

 教会との友好関係を維持したい国家としては、強制調査もやむなしと踏み切る他ないでしょうね」


 リリアナも納得した様子で頷いた。


 「それじゃあ、僕は急ぎ王都に向かう支度を整える。出来るだけ早くに良い知らせを持ち帰れるよう最大限に努力しよう」

 「はい! 頑張って下さいフレイ殿!

 私は、ええと、使用された魔法式に関しての資料を今すぐ作ります!」


 なんとか活路が見つかった。

 ミディアは大慌てで少女が使った雷魔法の術式を紙に書き出す作業にうつる。

 盾に残っている魔法痕の所見も追記して、それをフレイに手渡した。

 フレイはゼファン家がもつ最も速い馬に乗って王都へ向かい、残る面々もドリスティオール家の調査に向けて粛々と準備を開始する。


 希望と不安が入り混じる中、それでも風向きは確かに変わり始めていた。

 事態がどう転ぶかは未知数――けれど、彼らはまた一歩、前に進んだのだ。




 ***





 フレイの帰還を待つ間、謎の少女との接触により手に入った情報について吟味することにした。

 これにはリリアナとアレクシアだけでなくアキサメもたいそう興味を示して話し合いに同席した。

 最近はすっかりお気に入りになった東方のお茶とお菓子を頂きながら、一つずつ話題を整理する。


 「ま、まず、彼女が何者かということですが、竜族の角と尾があるにも関わらず、半竜人ではないと言っていました。

 実際、彼女の角のサイズから判断するに、……100年、いえそれ以上生きているのではないかと推測されます。

 半竜人の寿命はラシャド王国の人間と大差ないと聞いています。ですので、彼女の言うとおりただの半竜人でないことは確かです」

 「半竜人がいるのだから、竜人もいる、というものではないのか?」


 アレクシアの問いかけにミディアは首を横に振る。


 「いえ、竜族の血が混じった人間を半竜人というので、竜人と呼ばれる存在はいない、筈です。半竜人か竜のどちらかです」

 「ならば、その少女は竜だったということか?」

 「で、でも、竜族は光神ロタティアンとの戦いに敗れ全滅したと言われています。現在残っているのは竜族の血を受け継ぐワイバーンのような種族か、半竜人たちだけだ、と」

 「いやいや~、わりと生き残ってるよ」


 あっけらかんと言ったのはアキサメだ。


 「ええええええええ、生き残りいるんですか!?」


 驚いて聞き返すと、アキサメはからからと笑ってみせる。


 「東方諸国での話だけどね。

 あっちはラシャド王国側とは違って教会がほとんど進出していない。ゼロって訳じゃないけど少数派だね。

 東方諸国には教会とはことなった土着の信仰があるから、ロタティアンの教義こそ異端視されてるんだよ」


 アキサメはゆっくりとお茶を啜ると言葉を続ける。


 「竜族を目の敵にしてるのは光神ロタティアンの教義によるものだからね。

 とはいえ数はかなり少ないよ。僕が実際に見たわけじゃないけど……少なくとも、名を聞いた者が十人ほどはいたね」

 「なるほど!?」

 「東方諸国に生き残りの竜がいる事を考えれば、こちらの大陸でも少数ながら生き残りがいても不思議じゃない。

 あるいは子孫が存在しても不思議ではないんじゃないかな。

 竜族の力は強大だし、人型にもなれるというならば、身をひそめていたとしても不思議じゃない」

 「そ、そうですね。角と尻尾だけならば、外套で隠すこともできますし」


 ロタティアンの教義が異端とされる国がある。

 そこには竜族が生き残っている。


 ミディアにとっての当たり前は、この王国の中だけの価値観なのだ。

 世界は広く、多種多様だ。

 遠い国ではまるで違う風習や文化が存在する。

 それはなんと心が踊る話だろう。胸の奥で、遠き国への憧れが灯火のようにゆらめいた。

 いつの日にか東方へ行ってみたい。

 だが今は、逸る気持ちを抑え込み、目の前の問題に向き直る。


 「……で、ではあの少女は、”竜族の生き残りが人の形を取っている”と仮定します。

 少女は、私たちが言う異教徒達がゾデルフィアの信者ではないと、そう発言をしていました。

 その目的は魔瘴を召喚し『愛しき母』を助け出すことにあるようです」


 ──愛しき母。

 その言葉は、柔らかな語感に反して、声に出すと砂を噛んだように舌触りが悪かった。


 「この『愛しき母』というのは、鷹巣砦で魔瘴が召喚された際に目撃した悍ましい存在。

 腐敗しかけた巨大な竜ではないかと考えられます」


 今も脳裏に焼き付いて離れない。赤黒く蠢く、臓器のような瘴気の雲。

 その被膜を破るようにして現れた巨大な鉤爪は、”破滅そのもの”の形をしていた。


 「つまり、腐敗した竜はゾデルフィアではない、ということになるわね」


 リリアナの言葉にミディアは頷いた。


 「はい。ここで不思議なのは少女がゾデルフィアに対して、嫌悪に近い感情を持っていると感じられた事です。

 ……ところがマティス卿がゾデルフィアの信者であることは否定しなかった」


 この発言は極めて重要なことだった。

 少女が敵対者である以上、すべてを鵜呑みにする訳にはいかないだろう。

 だが少女が嘘を語る理由は見つからない。


 私たちは少女からみれば塵芥のような存在だろう。

 手の一振りで容易く葬りされる矮小なもの。

 嘘とは、歪な交渉の手段なのだ。

 つまり、交渉の必要性すらないならば、嘘という手段を用いる必要もなくなるだろう。


 「ゾデルフィアに関する情報が少なすぎるな」


 アレクシアが大きくため息をついた。金糸の髪を揺らしながら首を振る。

 そこでふと思い当たることがあり、ミディアはアキサメに向き直った。


 「あ、あの、もしかして、東方諸国にはエダンの焚書以前の歴史書も残っているなんてことは?」


 問いかけると、アキサメはひょいっと眉尻を持ち上げた。

 それから、その読みにくい風貌がにんまりした笑みになる。


 「ふむふむ、なるほど。面白い着眼点だね。──そして実に、危険な発想だ」

 「……で、ですよね、でも現在、王国内で手に入る資料はすべてエダンの焚書後のものばかりです」


 教会の語る歴史において、かつて世界は竜族が支配し、人間たちは虐げられていたという。

 そこに慈悲深き光神ロタティアンが現れ、辺境に住んでいたエダンという名の木こりに加護を与えた。

 エダンは勇敢に戦い、やがてその勢力は神聖王国ローデンバルドを建国するに至る。

 ローデンバルドには光神の敬虔な信徒が集い、竜族を相手に激しい戦いを繰り広げた。

 そして、ついには勝利を得た。


 奇妙なのはここからだ。

 エダンはその後、それまでの歴史が書かれた書物のことごとくを焼いたのだ。


 これを魔塔では怨嗟に近い思いをこめて”エダンの焚書”と呼んでいる。

 数多に存在したであろう精霊の物語が失われたのだ。

 それに伴い、いかほどの魔術が消え去っただろうか。


 ──よって、竜族との戦やそれまでの歴史は、”教会によって語られた”ものしか残っていない。

 そのローデンバルド王国も巨大な魔瘴の出現に滅び去り、真実はまさに闇の中へと消え去ってしまったのだ。


 「……げ、現在残っている資料の中にはゾデルフィアの名前はまったくと言っていいほど見つかりません。

 もしゾデルフィアの情報を探るならば、焚書以前の歴史書に書かれていると思うのです」

 「ふむふむ。いいだろう。それじゃあ僕の伝手をたどって手に入れられるかどうか試してみよう」

 「わ、わかりました! ありがとうございます!!!!」


 ミディアは大いに興奮した。

 もう決して手に入らないだろうと思っていたものに手が届きそうなのだ。

 それを手にすることはあまりにも危険であると分かってはいる。

 だがすでに、賽は投げられた後なのだ。

 ならば知識こそが、──ミディアにとって最大の武器になるだろう。




 ***




 「こちらがドリスティオール家の強制調査を認める書状になります」

 「やったー!」


 一週間後。

 フレイが持ち帰った書状には王宮からの発令だと分かる金印が押されていた。

 これに逆らうのは国家に反逆するのと同意語だ。


 「今回は迅速な調査が必要であることを踏まえ、アレクシア殿率いる騎士団が随行することが認められました。

 聖騎士団側の代表として僕も現場に入ります」

 「ようやく私の出番か」


 今か今かと待ちわびていたアレクシアはたいそう嬉しそうな表情だ。

 ちなみに待機中のアレクシアは暇を持て余していたために、リリアナの依頼で孤児院で剣術を教えていた。

 時間があれば鉄鼠衆とも試合をし、互いの剣術を教えあっていたともいう。

 いつもながら大変元気なことである。


 「ならば早速騎士団を呼んでこよう。夕方には戻れるが、いかがする?」

 「騎士団の姿を見ればドリスティオール家はさらに警戒を強めることでしょう。よって、騎士団が到着次第すみやかに調査に向かった方がよろしいかと」

 

 フレイの言葉にアレクシアが「あいわかった」と頷く。

 意気込むアレクシアとは対照的に、フレイは表情を曇らせる。


 「ですが、……騎士団が踏み込んだところで再びあの少女が攻撃を仕掛けてきたら。

 果たして勝機はあるのでしょうか」


 フレイに問いかけられたミディアは小さく首を横にふる。


 「……多分、無理です。

 今のままじゃ勝てる見込みはありません」


 ミディアは将ではなく魔術師だ。士気を鼓舞するために偽りを口にすることはない。


 「あちらから攻めて来ると分かっているならば、私もあらかじめ防御魔法をはったりと対策が出来ます。

 でもこちらから懐に飛び込む以上はそうは行きません」


 尚も表情を曇らせるフレイに、ミディアは「ですが」と言葉を続けた。


 「ですが、騎士団を率いて大人数で踏み込むのは抑止力となり得ます。

 あの少女がドリスティオール家を隠れ蓑にしている以上、その権力を行使するには表立って暴れる訳にはいかない。

 いかない、はず、です、……多分」

 「それでももし、もし万が一戦うことになったとしたら?」


 フレイが心配そうに眉を寄せると、アレクシアが満面の笑みで自身の胸を叩いてみせる。


 「はっはっは、望むところではないか。遅かれ早かれ戦うことになる相手だ。

 ──死力を尽くしてお相手しよう。先陣の栄誉は我が剣にていただこうぞ」


 その言葉にミディアは心から同情した。

 美少女にガン決まりした目でこんなことを言われたら、……フレイは”男として”引くに引けない状況だろう。

 もはや理屈ではなく、男としての意地の問題だ。

 フレイは一瞬固まったあと、大きく息を吐き目を閉じる。


 「……そうですね。その通りです。僕の剣は、僕の盾は、真実から逃げないために磨いたものです」


 再び目を開いた時には、フレイの目は正義を宿して燃えていた。


 かくして、ミディア達はドリスティオール家へと足を踏み入れる。

 勝てる保証など、どこにもない。

 それでも、真実のために剣を振るう覚悟は、今ここに揃ったのだ。

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