閑話1 戦場でみたもの
人間はこんなにも残酷になれるのだろうか・・・・
人が他人を殺すと罪になる。
多くを殺せば、‘殺人狂”、‘大量殺戮者”の名がつく。
理由はいろいろあるだろう。
怨恨、嫉妬、金目当て・・・中には自殺の道ずれなんて、やりきれないものもある。
しかし、人が他人を殺しても罪にならない場所
それが戦場だ。
敵を討った数だけ‘栄誉”が付き、大量に殺すと‘英雄”の名が付く。
いつだって犠牲なるのは前線に出るものだけだ。
本当に戦争を始めたいのは、商人や上のごく一部の奴等で、大儀名文を振りかざし、人がばたばた死んでいくのをもののかずにも入れていない。
やりたいなら、お前たちだけでやればいい。
大して動きもしないたるんだ肉同士、さぞかし早く平和が訪れるだろう・・・・。
もっとも、そんなことになる前に、そんな奴等は一目散に消えるだろうが。
搾取し、溜めに貯めたものを持って。
誰が言ったんだ。
人はみな平等だなんて。
見てみろ。こんなに人は不公平だ。
命の価値は同じか?
血の色が違うとでも言うのか?
どうして、こんなに人が死ぬ?
どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして・・・・・・・
どうして、俺は守られねばならない?
同じ戦場で、同じ釜の飯を食い、たとえ身分の差はあっても、一緒に笑っていた。
「故郷で奥さんと子供が待ってるんですよ」
「これが終わったら結婚するんです」
「何にも無いけど、かかあがうまい飯炊いて待ってるんす。これがおわったら旅行でもって」
なんて、報告をくれた。
こんな救いの無い場所で、それでも未来に眼を向けていた。
今は・・・物言えぬ姿となって目の前にいる。
なんだ!?この救いようの無い世界は?
神は何処にいる!?
いたら教えてくれ。
命は平等か?
俺とこの者らで何が違った?
亡骸さえ満足に供養されない。
全員つれて帰れもしない。
俺は何のためにいる?
この命を背負ってどうしたらいい?
答えのない叫びは俺の心を凍らせる。
長く終わりの見えない戦争に、凍らせないとやっていけなかった。
裏切りや、うわべだけの言葉しかない宮城で。
いつ寝首を掻かれるともわからない人生で。
そしていつだか自分の心が見えなくなった。
だれか、俺をつないでくれ。
正気の淵にいるうちに。
狂気に飲み込まれる前に。
みなが膝を折るこの孤独な場所で、大切なものを見失うことなく、
守っていけるように。
心を見失い、傷つける側に廻らぬように。